世界の果ての赤き丘

二次小説、日々の地球人観察記などを書いています。

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Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 短編02

「なぁアーチャー君」


「なんだ?」


「この縄は何かな?」


「ふ、貴様の胸に手を当ててよく考えてみれば分かるさ」


言われたとおりに鎧衣は自分の胸に手を当てて考えた。


「あぁ、私の胸よ。この縄は何なんだろうか、答えておくれ……ふむ、わからん。私が何をしたんだ?」


「ほぉ、貴様しらを切るきか?」


鎧衣のふざけた態度に、アーチャーは剣を投影して鎧衣の首筋に添えるという答えを返す。


恐怖心を煽るために少々の切り傷をつける事を忘れない。


「……すまない。正直こんな事態になるとは思ってなかった」


タラリと首筋から流れる血の感覚に、流石の鎧衣もアーチャーの本気を感じ取り、口を割る。


「まったく。貴様のその技能はそもそも他の事に使うためだろ。こんなくだらない事に使うなどどうかしてるぞ」


アーチャーと鎧衣の目の前に広がる光景。




エッチな本と嫉妬




鼻から血を流しながらその巨体を悶えさせている紅蓮を筆頭に、高位の男性衛士達も鼻血を出し失神していた。

騒ぎの中心には一冊の雑誌らしき本が…

そんな中、女性衛士達は月詠 真那を中心に血眼になって、雄叫びを上げ、走り回っていた。


「探せ!探せ!1冊残らず探せ!所持していた者はすべて縛り上げろ!抵抗するなら半殺しも構わん!火器の使用も許可する。場合にっては戦術機も使え!」


「「「「了解」」」」


次々と捕まる衛士。全員、青痣ができるぐらいに殴られている。

中には腫れあがり醜くなった顔を歪ませ男泣きする輩もいた。


「流石にこれは……鎧衣、一体何冊配布した?」


阿鼻叫喚な地獄絵図に、アーチャーの額からヒヤリと汗が伝う。爆発音が聞こえるのは気のせいだと思いたい。


「うむ、1冊五千円で100冊、レアを1冊一万で10冊で合計110冊だな。ちなみに裏取引だったが10分で完売した」


自信満々に答える鎧衣。どこか誇らしげに胸をそらしているのは気のせいだろうか……


そんな二人のやり取りの間にも広間には続々と衛士たちが連れてこられていく。


「よし、これで全部か!」


「はい、情報どおり110冊すべて揃ってます」


月詠の目の前に積み上げられた雑誌らしき本。


表紙には「帝国斯衛軍 大胆写真集!」と書かれてある。もう一冊、他の物と違い豪華な装飾してあるのにはこう書いてあった。


「帝国斯衛軍 読者が選ぶベスト10 袋とじにはお風呂シーン付」


表紙の写真は盗撮とは思えないほど鮮明なシャワーを浴びている月詠真那の後姿である。


そしてそのどちらにも監修 鎧衣左近 と表記してあった。


「さて、鎧衣。覚悟は出来ているか?」


足跡を立てず床を滑るように近づいてくる月詠。

その姿はまさに修羅。

武人の呼吸にかわり、僅かに揺れる体。溢れ出る殺気は本物だった。


「月詠中尉、落ち着きなさい。私はだね、潤いが足りない男性衛士諸君に一筋の光をだな……」


その姿に内心ビビリながら、表では冷静を装って言い訳を唱える鎧衣。


「黙れ…八つ裂きにして殺すぞ」


地の底からの怨嗟が篭った低い声が月詠の口から漏れる


「……」


その声にシーンと静まりかえる大広間。

痛てー、くそーと呻いていた男性衛士達は死んだように動かなくなった。自分に矛先が向かないようにするためだ。

というより何か音を立てれば殺されそうなぐらいな雰囲気だったからとも言える。


「うっほん、あー月詠」


その凍りついた場を壊すように、アーチャーは咳払いをして月詠の説得を試みる。


「……なんでしょうか?」


ギリギリと首を捻じ曲げ、アーチャーへ視線を移す。

その顔は普段の端麗な面持ちからかけ離れて、真っ赤な顔に憤怒の表情だ。


「す、少し落ち着け。こいつは私が責任を持って処分をするから。なんならBETAの群れの中に放置してやってもかまわんし、戦術機の射撃演習場に放置してもかまわん」


「それは酷すぎじゃないかねアーチャー君」


ちょっと震える声で鎧衣が呟く。

それを無視してアーチャーは鎧衣を縛っているロープを握ると、さらに締め付けながら月詠の説得を試みる。


「まぁ、こいつがしたことは許されざる事だが、一応こんな奴でも使えるから、殺すのは後にしてくれないか?」


「アーチャー殿、この事には口を挟まないでいただきたい。これは帝国斯衛軍の問題です」


即答で切り返す月詠。聞く耳を持たないと言うのはまさにこの状態なのだろう。


「しかし、このままでは明日の演習に響くぞ。衛士たる者、万全の体制整えるべきなのだろう?」


「分かりました。では……」


「今殺します」


月詠は袖から隠し持っていた暗器を取り出すと、一直線に鎧衣に向かって閃光のごとく走る。

迫る月詠に鎧衣があわてて叫んだ。


「ちょ、ちょっと待った!交換条件だ」


と、首筋まであと1cmの所で刃が止まる。


「くだらない事を言ったら殺します。くだらない事を言わなくても殺します」


「ふっ、甘いな真耶ちゃんは。私が何の対策もしてないと思うのかい?」


ユラユラ揺れる刃先から首筋をそーと離しながらニヤリと鎧が笑う。


「何っ!?」


「これを見よ!」


そういうといつの間にか硬く縛られていたロープから鎧衣は抜け出し、帽子を抑えつつ空中で華麗に一回転。

無駄に身体能力が高いところを見せ付けつつ、大仰に一枚の写真を懐から取り出し頭上にババーン掲げた。


「そ、それは!」


「き、貴様!」


そこに写っていたのは月明かりの下、硬く抱き合う月詠とアーチャーの姿だった。

これも盗撮とは思えない鮮明さで、プロが撮ったと言えば納得できるほどの見事な写真だ。


「おい、あれって…」


「まさか…」


「アーチャーの野郎…殺す!」


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…アーチャーは死ねぇぇぇぇぇ!」


「月詠様…」


「不潔です」


その場にいた全員がざわざわと騒ぎ出した。抱き合う男女から想像できる物はたった一つ。頭によぎるのは『恋人』の二文字。

突然の出来事に、衛士達は驚いてしまい頭の中からは、盗撮の件は頭の隅に追いやってしまう。

当の本人達である月詠は顔を真っ赤にしてあぅあぅ言いながら俯き、普段は冷静なアーチャーもこの時ばかりは固まってしまった。


「では、私はこれで」


固まった二人を尻目にそう言うと鎧衣左近は気配を消しながら逃走。腐っても情報部エース。仕事は完璧。

すべては計画通りという事だ。

その後、帝国斯衛軍内に月詠とアーチャーは恋人という噂が蔓延していった。



次の日


「アーチャー、弁明はありますか」


悠陽の右手には例の写真。左手には太刀が握られ、極上の笑顔と背後にはわけの分からないオーラ。


「落ち着け悠陽!誤解だそれは!鎧衣の策謀だ!」


「そうです殿下。落ち着いてください!ま、まずはその刀を此方にお渡してください!」


「まぁ、仲良く弁明ですか? ウフッ、フフフフフフフ……」


翌日の悠陽の執務室から聞こえてきた争う声に、侍従長はまた頭を痛めていた。
     


[ 2013年10月16日 15:16 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 短編01

とある午後の昼下がり、悠揚はキョロキョロと辺りを見回しながら廊下を歩いていた。

そこへ、反対側から紅蓮がやって来た。

「どうしました殿下? 誰かをお探しですかな?」

「ああ、紅蓮。アーチャーさんを知りませんか」

「アーチャー殿ですか。先ほど衛士達の食堂で見かけましたが……」

「まぁ、そうですか」

「え、あ、殿下!ちょっとお待ちください!今食堂に行ってはなりません!殿下ー!」

時既に遅し。


近衛衛士共同食堂

「……な、何なのでしょうか。この状況は」

「おふくろ―!おふくろ―!おふくろの味じゃ―!」

衛士たちがいつもの赤いコート脱いでラフな格好で、何故か前掛けを付けているアーチャーを取り囲んで号泣している。
当のアーチャーはうんざりとした顔で立っていた。

悠揚は側にいた衛士に尋ねた。

「これは一体どうしたのですか?」

「で、殿下。これは申し訳ありません。そ、それが……」

「?」

「その、これを食べてみてください」

「はぁ」

悠揚は衛士に差し出された器を覗き込んだ。

「肉じゃがですか…」

少々行儀が悪いが悠揚は指で肉じゃがつまんで口に入れた。

「お、悠揚。いいところに来たな。この者達を解散させてくれ。まったく持って邪魔だ」

悠揚に気づいたアーチャーはこの馬鹿騒ぎを止めてくれるように頼む。

「……」

「悠揚?」

「お、お母様……」

「君もか――――――――!!」

[ 2013年10月16日 15:15 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 Interlude

その謎は秘匿された。

表上はG弾の影響によるものや偶然に地球に飛来した隕石や米軍の新兵器という噂を流布し真実を隠した。

士気の低下を防ぐための各国の首脳陣の決定だ。

しかし、裏ではあの日以来各国で様々な解析が続けられている。

分かったのは、記録写真に映し出された剣らしきシルエットの飛来物がBETAを消滅させる武器である事。

飛来物の残留物は一切無い事。飛来物が直撃した戦術機は皆無である事。巨大な建造物であるハイヴを破壊する莫大な威力を持つ武器である事。

そして謎の飛来物の発射位置とされる日本の象徴でもある富士山の唐突な活動停止だった。






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 Interlude





「ハァ……」


夕呼の寒々しい溜息が部屋に木霊する。

明星作戦が終了し、いろいろな物を得る事ができた。

これで兼ねてから準備を進めていたオルタネイティブⅣが加速するだろう。

もちろん邪魔な奴らもいるし、正直猫の手を借りたい状況である事は変わりはない。

それでも作戦前から考えていた案件についてはすべてクリア出来たから満点だ。

次のステージに進む事ができる。

だが、


「なんだっていうのよ。あれは……」


夕呼の頭の中には明星作戦を終了させたあの砲撃がどうしても離れない。

片っぱしから手に入れた映像に映し出されるのは、どれも剣ばかり。

高速で飛翔していたため記録用のカメラで写しきれず、鮮明な写真がほとんど無いため確信は出来ないが写真から立体構成すると現れるのは必ず剣なのだ。

それも戦術機が使うような巨大な物ではなく、人間が扱う物、少なくともサイズは人間サイズである。


「そんなもんでどうやってBETAを殺したっていうのよ。せいぜい数十人がかりで兵士級1匹を何とか倒せるような武器じゃないの」


そして発射位置の観測報告書には巨大な物体の移動跡は無く、人の足跡と思われるものが1人分見つかっただけ。残留痕も無し。

科学的な力、例えば火薬を使って発射したとすれば周辺には必ずその痕跡が残るはずなのだ。


「スーパー超人が一つ一つ手で投げたわけないわよね。ていうかそんな奴がいたらBETAなんて楽勝で殺せるか……」


少なくとも数万人の人と重さ数キロから数十キロの物体を100㌔近く投げれるような力が必要なのだ。

どんなに肉体改造をしても100mが人類の限界だろう。戦術機でさえ腕力だけでは無理だ。


「人間一人であんなことできるわけないじゃない」


それでも夕呼はいろいろと考えてみた。

空中に何らかの方法で磁場を形成し、電磁砲の要領で発射したというのが今のところ有力であるが、あくまで他のものよりは現実的であるという考えだ。

だが、そもそも自然界に莫大な磁場の形成をしたら、付近に生身の人間がいれば感電もしくは発射時の熱で黒コゲで死ぬ。

砂があれば必ず鉄などの金属類が微量に含まれているし、磁場の形成は莫大な電力がいる。更に巨大な装置が必要だろう。

これらをクリアしたとしても、100㌔近い距離を態々剣という形の砲弾で誘導装置なしでBETAのみ狙い撃ちなど神のみ業としか言いようがない。


「それに、なんで一切の痕跡が無いのとBETAを消滅させる力があるのかよねぇ」


そう、飛来物と思われる痕跡は一切ない。剣の破片と思われるものは全く発見されず、剣が直撃したBETAは文字通り消滅した。

質量保存の法則を真っ向から無視して、肉片から血の一滴も残さずだ。目撃した兵士の話では死体にも剣が当たっているのを見たという証言がある。

生死を問わずにBETAの肉体のみを消滅させるなんらかの方法があるという事になる。


「ハァ……本当に神様の仕業かもしれないわねぇ……」


考えれば考えるほど分からない問題に、ついに信じてもいない神に丸投げする夕呼だった。










炎が舞い、空を赤くてらし、赤茶けた大地に無数の剣が突き刺さる。

その上をゆっくりと巨大な歯車が音を立てながら回り、どこからか風を勢い良く吹き込む音と鉄を叩く音がする。

舞いあがる砂煙に思わず袖で口元を覆う。


「ここは……」


見渡す限り人はいない。

そのうち自然に足がカーンカーンと鉄を打ち付ける音の方へ向いた。

最初はゆっくりと着物の裾が汚れないように恐る恐る歩を進める。

そのうち早足になり、ついには裾を持ち上げ走り出した。


30分ぐらい走っただろうか、鉄を打つ音がすぐ近くから聞こえる。

カーンカーンとリズミカルに。

ただ、その音はどこか悲しい響きを秘めているように聞こえてならない。


そして唐突に声をかけられた。


「悠揚、君は正義の味方をどう思うかね」


後ろに振り返るといつの間にかアーチャーと名乗った出会って間もない男が炉の前に座っていた。


「……弱い人を助けて悪を懲らしめる人だと思います」


ちょっとだけ躊躇して当たり障り無い回答を溢す。


「ふむ。では、家族が人質に取られ仕方なく人を殺した男は悪か?」


「それは……わかりません」


「君の大切な人が死にそうな時、別の場所で多くの人が死にそうな状況に陥ってる。一方に行けばどちらかは助かる」


「何を……」


「君はどうする悠揚?どちらを助ける?」


思い浮かぶのは自身の半身である人、もう一方はあの剣を取った日に誓った帝国民を守るという誓い。

天秤に掛けたときどちらが重いかは決まり切っている。


「わ、私は。こ、国民のために……」


「その答えに偽りは無いか?後悔しないのか?大切な人が死んでしまうんだぞ?二度と会えなくなる」


ゆっくりとこちらの目を覗き込んできた彼の表情が見えない。

声だけを淡々と紡いでいる感じでまるで人形だ。

でも、彼の問いは自分がいつか突きつけられる選択の一つにすぎない。

政威大将軍としての道はあの日に決めた。心の整理もつけた。

恐れる必要は無い。

ハッキリと答えればいい。


「それでも、それでも私は国民を取るでしょう。それがこの国の長としての役目ですから。
 後悔はすると思います。でも、後悔を引きずって前には進めません。
 だから、前を見つめて私は進みます。
 それが修羅の道であろうとも」


「……そうか。その選択が間違いだったと君が後悔しない事を祈ろう」


「それで、あの、アーチャーさんここは?」


それに答えずアーチャーは燃え盛る炎に腕を突っ込み何かを引きずり出した。


「悠揚、君は強大な力を手に入れる事になる。それこそBETAを世界から駆逐できるほどの力を。
 だが、代償もまたとてつもなく大きい」


ゆっくりと立ち上がり、こちらに歩を進めてくる彼の手には宝飾された短刀が握られている。


「世界は息絶えようとしてる。だが、まだ死んではいない。
 守護者の概念を取り入れた世界は反撃する機会を手に入れたのだ。
 諸刃の剣であり、人類にとっては敵になるかもしれない力」


目の前に立ったアーチャーが悠揚に短刀を差し出した。


「力が欲しいか煌武院悠陽?」





感想掲示板








あとがき

今回は短め。

次回から謀略編。

基本帝国内ペースでいきます。

バトルというほどのものはないですね。
帝国内の話中心でいくからオリキャラを出さないといけないんですが、名前を考えるのが難しい。
なので、名前募集します。
有名人の名前は却下。
基本脇役キャラと悪代官的キャラの名前募集。話の中心に食い込むオリキャラは出しませんのであしからず。
[ 2013年10月16日 15:14 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 06

【世界】とはただそこにある“存在”であり、世界に現れる矛盾を嫌い、世界を脅かすものを粛正する。

その力は強大であり、【世界】という中で生活するすべての生物と繋がっている。

しかし、【世界】にも敵が現れた。

そう、自分の【世界】の外から来た存在。

BETAという敵が……






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第六話





「ああああああああああぁっ」


突然の叫びに元枢府議場で呆然と固まっていた者たちが一斉に声の主へと振り向く。

そこには自身の体を抱きしめ、尋常では考えられないほど苦しむ悠陽の姿があった。

将校たちは、あの米国が行った所業を悲しんでいると思った。何と言っても若干15歳の年若い女性であり日本の中心人物であり国を愛する殿下には耐えられない光景だからだ。

しかし、その悠陽を見た鎧衣は迅速動く。

なぜなら自分の隣にいた男が唐突に消え、殿下が苦しみ出したのだ。ならばあの絶叫はあの苦しみは【魔術】またはそれに類する物が関わっていると見ていい。


「殿下っ。誰か侍従長を呼べ! それから明星作戦総司令本部にいる紅蓮大将に伝えよ。殿下は過労によりお籠りになる」


すぐさま気絶してしまった悠陽の脈を測り、状態を調べる鎧衣。

だが、その行為は日本人からすればと不敬罪と取られてもおかしくはない。


「息はある。だが、脈が弱いな。 医師も呼べ。殿下はこのままお下がりになる。後の事はお任せする」


「何を勝手に決めている鎧衣!貴様、殿下の御御手を掴みおって何たる事か!」


「そうじゃ、そもそも貴様がここにいる事自体が不快でならん。殿下のお気に入りだからと言って調子に乗る出ないぞ!」


容態を見る鎧衣に横やりが入った。


「(く、それどころではないというのに……)橘中佐殿、葛城大佐失礼いたしました。しかし、今は殿下の大事にござります。ここは何卒お引きお願い致します」


「ならん、大事と言っても先の映像にショックを受けられただけに過ぎん。席で休ませておればよかろう」


「橘大佐、今の言い方はよろしくないですぞ。まぁ、あれだけの事でショックを受けるのは政威大将軍としてどうかと思いますがねぇ」


その言葉に同意するかのように一部の高官達が口ぐちに悠陽の事について話し出す。年若く権力のトップにいる快く思わないものは沢山いる。

だが、その間にもスクリーン上では生き残ったBETAとの戦闘が続いてるのだ。

先ほどのG弾の驚きはどこに消えたのか、今ではここぞとばかりに年若い女の子を責め立てるような事ばかり言いだす高官達に、最早怒りを通り越して呆れしか鎧衣には浮かばない。


「皆の者静まれ。鎧衣課長、殿下の事は頼む。
 誰か、担架を持ってまいれ。ここより殿下を運び出す」


ざわざわとなる議場を一人の男の声で静まる。

五摂家の1つである、斉御司喬久少将である。

知将と知られ、武も達者でありながら温和な性格で多くの一般兵から尊敬の念を受ける一方、その頑固な性格から一部の高官たちからは目の敵にされる事もあった。

絶対に悪を許さず、弱気ものを全力で助ける。不正は許さず困っているものを守る。

それが斉御司喬久であった。



「斉御司少将、ありがとうございます」


「構わん行け。皆のものは明星作戦に集中せよ。
 橘中佐と葛城大佐、貴公達は少々口が過ぎるぞ。慎め。他の者もな。
 今は目の前の事に集中せよ」



「「「はっ!」」」







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―――――殲滅

――――――殲滅

―――――――殲滅

――――――――殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

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殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

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――――――――――――――――――――――――――――――――――殲滅


「……殲滅……」


虚ろな瞳の男の手がゆっくりと上がる。


「……殲滅……」


頭上に掲げた手を中心に、細くなってしまった龍脈から魔力が次々と集まり


「……殲滅……」


膨大な数の剣が曇天の空を覆い


「……殲滅……」


男の視線が固定され


「……殲滅……」


振り下ろされた。







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ビービーとなる飛来警報に味方の誤射かと回避行動を取ろうとした伊隅の目にそれが映った。

南西から次々と飛来する沢山の黒い何か。少なくてもG弾ではない。香月博士の説明ではG弾には特殊な物質が使われており大量生産は出来ないからだ。

その何かを詳しく確認しようとした時、世界に轟音が響き渡る。

次の瞬間、猛烈な爆風と共に機体が吹き飛ばされ、まるで洗濯機に入ったかのように伊隅の機体はシェイクされた。

何かにぶつかると同時に機体の動きが止まる。

なんとか意識をつなぎ止められたが、あまりの衝撃にショックで体に力が入らない。

外からは空気が震える轟音と機体に細かい何かが当たる音がしていた。

数分から数十分経っただろうか、節々が痛む体を何とか動かし、機体のチェックをすると推進剤タンクが破損し燃料が漏れていた。

右腕と右足に軽微の損傷を負っていたがあの衝撃では奇跡と言っていい。とりあえずは動ける。

網膜投影の電源が落ちているが再起動すれば大丈夫だろう。駄目なら副モニターを使えばいい。

それより今は現状の把握をしなくてはいけない。

震える腕で通信機のボタンを押し、今出せる大声で通信を繋ぐ。


「何処からの砲撃だっ! ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機、状況を!HQ!今の攻撃は何処からだ!」


『『『……』』』


「誰か状況説明を!」


誰も応答しない。

ちらりと全滅の二文字が浮かぶ。

少なくともあの衝撃は自分達の隊の近くで大型爆弾が爆発したはず。

全滅してもおかしくはない。


『……ちら、ヴァルキリー3風間。機体右腕と両足それと推進ユニットを破損。自力行動は不可能』


「!? 待ってろ今向かう」


『必要ありませんよ隊長……戦闘は終了しました。被害状況は不明。未確認ですが鳴海と中村と神野も死亡したと思われます。
 私の機体も駄目みたいですけどね』


「宗像か!無事でよかった。しかし、何を言って……」


『外に出てみれば分かります。BETAは消えました』


「……」


宗像が何を言っているのか伊隅には分からなかった。

G弾によって地上に出ていたBETAの殆どが殲滅されたからと言って、安全なんて事はない。

死体に紛れて戦車級や兵士級が生きている事が多々あり、それによって油断して死んだ兵は沢山いる。

戦場で機体から出るなんて自殺行為というのが常識なのだ。

もしかして、宗像は錯乱しているのか?と胸に浮かぶ。


「おまえ、今どこにいる」


『隊長機から40mといった所です。隣で……鳴海の機体が大破してます』


「外に出ているのか!?」


『ハッチが歪んで外が見れるんだから仕方がないですよ……』


ようやく伊隅は気づいた。

何時も飄々としている宗像の声が震えていたのだ。

まるで何かに脅えるように、弱々しい雛鳥のようにか細く。

そして伊隅は手動ハッチの取っ手に手をかけた。

躊躇いは一瞬。

一気に開く。







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寝台に寝かされた悠陽を宮医が慎重に診察をしている。

従者達は悠陽が倒れたという事で右往左往し、本来なら鎧衣が部屋に入る事は許されないのに誰も気づかない。


「まったく情報が少なすぎる。アーチャー君は家出してしまったのが原因なのか、G弾が何らかの影響を彼に与えたと見るべきなのか……これは難しい問題になってきたなぁ」


曲がりなりにも国の最高責任者である政威大将軍が、政務中それも国の命運を分ける重大な作戦の指揮をしている最中に失神。

これは対外的にも対内的にも状況を悪化させるには十分な事だ。

ただでさえ悠陽は年齢や妹君の事で内部に敵が多すぎる。今回の事は今後に響くだろう。

だが、それはまだいい。今後悠陽がその手腕を発揮して、そのような事を塗りつぶすような力を誇示すればいいのだから。

問題は今後もこういう事があった場合だ。

根本的な土台を崩しかねない。最悪、妹君を担ぎ出し、悠陽を葬り去る可能性が出てきた。

鎧衣はいくつものシミュレートを頭の中で計算し、今後どう動くかを計算し続ける。

しかし、完璧な答えは出ない。

アーチャーという謎のピースが解をいつも崩すから。


「早く戻って来てくれアーチャー君。せめて消えるのなら殿下の体調を元に戻してから成仏してくれ」


ちょっとだけ疲れが見えるその呟きを聞くものはおらず、すぐに虚空へ消えていった。






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第2防衛ライン


その閃光と爆風は戦場から40?近く離れている夕呼がいる司令指揮車でも感じる事ができた。

唐突にレーダーの8分の1を占める巨大な何かの群れが戦場にハイヴ目掛けて飛来し大爆発。

その速度は尋常ではなく、観測された大きさでは1mから2m前後の棒状のような物で熱源反応がほぼ0であり少なくとも飛行装置を付けていないという代物だった。

つまり、原始的に何処からか力づくで発射されたという事なのだ。

現在の科学力からすればそれはあまりにもおかしな事であり、運用方法を考えれば兵器としては欠陥品であると言わざる得ない。

何かがおかしいと夕呼は感じた。


「……発射された位置の確認と部隊の損耗を報告しなさい。米国にも確認を取りなさい。急いで!」


その声に静まり返っていたオペレーター達が慌てて動き出した。

急に慌ただしくなった中、夕呼は眉間にしわを寄せあらゆるパターンを脳裏に描き出す。


「米国の新兵器?いえ、少なくとも私にすべて隠し通せる様な事はないはずだし、あれだけの威力の物を内部で作るのは不可能なはず。米国以外?けど、あんな兵器を作れる余力を持った国は米国ぐらいしかいない。
 でも、それはありえない。いったい何が……」


何度も可能性を見出すが数瞬で否定し、新しい可能性を考える。

その繰り返しをしていると秘書のピアティフから報告が入った。


「香月博士。発射予測位置出ました。富士山頂と思われます。現在富士教導隊が観測並びに偵察に出動したそうです。
 米国からの回答は今のところありません」


「そう、損耗は?」


「指揮系統が混乱していて把握出来ません。ただでさえG弾での損耗が激しかったのに、さらに追い討ちをかけるようにあの爆発ですから相当な被害が出ているとも思われます」


「A−01は?」


「数名のバイタルサインが消えました。通信は回復していません」


「ハイブは?」


「無人偵察機の映像です」


そして映し出された光景に夕呼は身震いした。

それはどんな兵器を使っても出来ないと思われる光景だったからだ






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ハッチを開けた伊隅は目の前の光景に恐怖と震えが止まらなかった。

そこにはBETAが一匹もいなかった。死体も何もかも。

目に映るのは戦術機とその残骸と所々に小規模のクレーターが穿かれた大地。

本当にそれしかなかった。

まるで自分達の独り善がりの戦争にしか思えないほど、BETAの痕跡がない。


「ハイヴは……」


ぐるりと周囲を見渡すがどこにもあの巨大な建造物は見当たらない。

G弾で上部は消滅したが、まだ遠くからでも見える下部が残っていたはず。

爆風で吹き飛ばされたとしても精々数百メートル。

それなのに周囲には何もない。

呆然とする伊隅の視線の先を、爆風の微かな砂煙が風によってたなびいていた。


8月10日。

この日、明星作戦は終了した。正確には調査が終了し、完全に戦争が終わった日。

あの大爆発の後にハイヴに突入した部隊が見たのは、数体の弱り切ったBETAと耐えがたいほど残酷な捕虜達の姿。

そして、反応炉から見つかった大量のBETAの死体だった。







[ 2013年10月16日 15:14 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(1)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 05

Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race

通称BETA。

1958年。

火星にて存在が初めて確認され、正式に地球外生命体と認知する。

その後はこの生命体に接触しようと各国が技術競争を開始。

これにより爆発的に科学が発展していく。

1967年。

科学の発達により国際恒久月面基地が建設され、巨大な宇宙進出に伴う補給港及び整備港が開港。

同時にすでに各国で発足した航空宇宙軍が次々に国際恒久月面基地周辺に自国の基地建設を開始。

月面への大量の資材搬出が進む。

さらに月の見えざる面、所謂暗黒地帯への調査が開始される。

そして調査開始5日後。人類は初めて、サクロボスコクレーターにてBETAと思われる生命体と接触。

しかし数分後には調査チームは全滅。

その後、次々に月面にBETAが出現。

これにより第一次月面戦争勃発。双方に多大な被害をだし、事実上は勝利者なしの一時的な戦争終結となる。

しかし、被害規模が甚大であっため、人類は月から一部撤退を決定。

1968年。

BETAを脅威になりうる敵として、米軍が対BETA武器の開発着手。宇宙開発で培った技術を導入し、戦術機の試作にはいる。

その後は機械化歩兵装甲開発などにより月奪還作戦などを幾度も展開。

しかし、完全なBETA殲滅は叶わず。

1972年

アメリカで試作戦術機完成。各国に技術公表を行う。

これにより戦術機の技術競争が加速していく。

1973年

中国新疆ウイグル自治区喀什にBETAの着陸ユニットが落下。

史上初の地球上での戦闘が勃発。

当初は中国軍が優勢だったが、光線級の出現により航空戦力が無力化され、高速で飛翔する遠距離ミサイルでさえ撃墜されるようになり、事実上既存兵器では対処出来なくなる。

これと同時に人類は地球での戦闘に資源を集めるために、陥落寸前の月面基地を放棄。完全に月がBETAの支配地となる。


以後、新たな兵器や核の投入するも人類は敗退続きとなり全人類の人口の68%を消失する。



そして時は経って1995年8月8日

この日が新たな歴史の1ページの序章となる事を誰も知らない。

数年後に戻ってくる1人の男が知らない始まりの光。






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第5話







明星作戦。

大東亜連合軍・米軍を主力とする国連軍が本州奪還作戦。

目標は数ヶ月前にBETAによって進行・壊滅された横浜奪還及びその場に形成中のBETAの巣の破壊。

人類史上初の多国籍大規模軍事作戦である。

8月5日に開始されたこの作戦は数多くの犠牲者を出しながらも、現在では地表に出てきたBETAの60%を撃破。

すでに一部の隊がハイブ攻略のために突入を始めていた。

しかし、時間がかかり過ぎているために部隊の損耗率が増加。次第に陣形は崩れつつあった。





『こちらハマー隊、ポイント4の光線級はすべて殲滅。しかし、部隊の損耗が激しい。一時後退する』


「了解。速やかに第二補給ポイントまで後退せよ。オスカー隊が代わりに向かう」


『了解した』


目まぐるしく変わっていくスクリーンの光点。

いずれも中心に向かい、戻ってくるもしくは中心で光点が消えるを繰り返していた。

最早作戦ではない。砂糖を見つけた蟻のように突撃しているような状態だ。



アーチャーが召喚されて5日目。

すでにこの世界の情勢は紅蓮の話と資料などからアーチャーの頭にはインプットされている。

そして現在行われている明星作戦についても。


「ここ数日BETAというのを見てきたが、人類を滅ぼすという意味がよく分かるな。確かにこれだけの数に戦闘力ではやすやすと勝てまい」


そう呟くアーチャーの目の前のスクリーンには、次々に砲撃によって駆逐されていくBETAの姿が映し出されていた。

そして大量のBETAに飲み込まれていく戦術機という兵器の姿も。


「ま、最優先の我らが人類の敵だよ」


隣の鎧衣が相槌を打つ。


「最優先……という事はその後は国か……どこの世界も最後は己らの欲だな」


「ふふん、アーチャー君。欲がないと人間は生きていけないよ。人間の社会生活は欲で動いているんだからね」


「分かっているさ。ところでお前はここにいていいのか? 忙しいはずでは?」


「戦時中は情報規制が厳しくてね。情報部は半休になるんだよ。渡航制限もあるからね。
 それに本作戦は多国籍軍だ。情報漏えいを心配してどこもピリピリしていて仕事どころじゃない」


肩を竦めながら答える鎧衣。いつも通りのスーツ姿であるため、斯衛の制服を着ているこの部屋にいる人間達の中で浮いている。

そのため肩を竦める動作が滑稽に見える。

もちろんアーチャーも召喚された時の服装、赤い外套に黒の上下なのだが、赤い外套で体を覆っているので赤の斯衛服に見えなくもないためそこまで浮いていない。


「それで、暇つぶしか?」


「そうとも言うけど、私がウロウロしていると目をつけられて何を言われるか分からないからね。
 殿下のそばにいた方が楽なんだ」


「フッ、嫌われ者は大変だな。まぁ、お前が傍にいれば私も姿を現しやすい」


「それはそれは」


ニヤリと笑いながら目深に帽子を被る鎧衣。

将校の1人がこちらを注視していたのだ。


アーチャーと鎧衣がいるのは元枢府内の議場兼司令室。

政威大将軍である悠陽の仕事場の一つみたいな所である。

ここには現在さまざまな明星作戦の情報が集められており、その報告を悠陽が逐一聞いているのだ。

その悠陽の顔には濃い疲労が浮かび上がっている。

明星作戦開始から3日目。ほぼ不眠不休で働いているのだから当たり前だ。


「そろそろ、悠陽も休ませないと体が持たんぞ」


その様子にアーチャーは諦めが混じった声で呟く。


「休まないと思うよ僕は。殿下には責任という圧力と責任を背負おうとする意思があるから。
 正式に政威大将軍にならせられてまだ数日しか経っていないのに、殿下には重すぎる責務だけどね。
 まぁ、どうしてもというなら君が言えばいいじゃないか」


「私があの場に近づけられるわけないだろ。警戒されている」


「それを言うなら私もだよ。あそこにふんぞり返ってる橘大佐なんてさっきから私と君の事を調べるように何度も指示を出している。
 まったく小物だねぇ」


「よく分かるな」


「これでも視力は良くてね。見たくもない男の唇を眺めてしまうんだよ。
 どうせなら殿下の瑞々しい唇を拝見していたいのだが、残念ながらあの様子ではこちらから見えない」


「ほぉ、読唇術か」


侮れないなこの男と改めて思うアーチャー。

読唇術というのは読んで字の如し。唇の動きから相手が何を話しているのかを探る方法の事だ。

だが、これには相当の努力と読解力が必要であり易々とは使えない。

悠陽が手元に置くのも納得が出来る技術である。


「それにしてもこのままでは最終的に押されるな」


「どうかな。どこぞの国が最終兵器を持っているからねぇ」


そう呟く鎧衣。

視線の先のスクリーンからまた一つ光点が消えた。









「ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機へ、予定ポイントの確保に時間がかかり過ぎている。なんとしてもここは確保しろっ」

『了解っ』


伊隅の檄に全員が返答を返す。

が、その声には出撃時とは比べ物にならないくらい疲弊していた。


「くっ、まずいな。補給コンテナはあるが機体状況に衛士の疲弊が出始めたか……」

その呟きにも焦りと疲弊が混じり合っていた。

香月夕呼博士直属の特殊任務部隊【A-01】、通称伊隅・ヴァルキリーズの隊長である伊隅みちるは隊の状況確認する。

元々は連隊規模だったものが特殊任務で伊隅の隊しか残っておらず、そのため作戦行動が厳しい物になっているのだ。

そのため既に1名がBETAによって戦死、1名が機体中破のため途中で後退、現在このポイントにいる11名のメンバー達の機体は小破もしくは損耗している。

あまり無理が出来ない状況になりつつあった。


「せめて支援砲撃があれば……」


存在自体が秘匿されているA-01部隊に支援砲撃は最初の一斉砲撃以外はない。

だからこそ、エリートと言われるほどの戦術機の腕が必要なのだ。

しかし、いくら腕が良くても圧倒的な物量で攻めてくるBETAには敵わない時が必ずある。

戦術機も万能ではない。動けば動くほど機械には負荷が加わり磨耗していくのだ。

最低3日に1度は整備しないと動きが悪くなってしまう。

明星作戦が開始されて3日たって整備などせず、ほぼずっと戦場にいる状態で、さらに最前線部隊であるA-01部隊の戦術機の稼働時間は異常と言っていいほど長い。

武器や燃料は交換できるが機体の交換は出来ない。


「……っ!HQ、こちらヴァルキリー1。支援砲撃もしくは支援部隊を送れないのか? もう、限界が近い」


『伊隅、状況を説明しなさい』


「香月博士!?どうしてそこに……」


伊隅は突然聞こえてきた香月夕呼の声に驚いた。

少なくとも自分と通信してるHQは第2防衛ライン状にある。つまり後方と言っても危険地帯だ。

本来なら第5防衛ライン。つまり、司令本部にいるはずの人間である。


『どうでもいいでしょそんな事。で、状況は』


「失礼致しました。現在最優先確保ポイントを攻略中です。
 しかし、部隊の損耗が激し過ぎます。
 機体の不調も出始めており、何かしらの支援を要請します」


『……予備ポイントは?』


「すでに確保してあります」


『予備ポイントまで下がっていいわ。米軍が“アレ”を使うわ。下がらないと死ぬわよ』


「まさか!? 帝国の許可なくですか!?」


『そうよ。分かったなら予備ポイントまで下がりなさい。これは命令よ』


「り、了解しました」


戦場で動揺するなと自分に言い聞かせ、一度だけ大きく息を吸うと各機に通信を繋ぐ。

一瞬、自分の隊に組み込まれたたった一人の男である鳴海の顔が思い浮ぶ。

彼は戦場であるこの地域の出身者だ。

その彼には残酷な事を言わなければならない。


「ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機へ。香月博士の最優先命令だ。
 戦線を維持しつつ予備ポイントまで後退する」


『何でですか隊長!もう少しでここは落とせる!俺たちの町を取り戻せるのに!』


「(…やはり鳴海か)論議をするつもりはない。
 ……もうすぐここは消滅する」


『まさか……』


「各機、命令は聞こえたな。後退を開始する。
 宗像は先頭で道を開け。その後に各自で撃破しつつ後退していく。風間は隊全体の支援攻撃。
 殿は鳴海と私で行く」


『待ってください。米軍がG弾を、G弾を帝国に落とすというのですか!?
 俺の、俺の町がっ』


「議論はしないといった。これは命令だ鳴海少尉。
 後退開始する。復唱しろっ!」


『ちくしょうっ……鳴海少尉、後退を開始します』






8月8日 14:16

それは唐突だった。

特殊弾頭に包まれたG弾を内包したミサイルが相模湾沿岸米軍艦から2発発射。

迎撃しようとする光線級のレーザーをその身に受けつつも、1発は打ち落とされるが残りの一発がミサイルの速度と特殊弾頭の強固な守りで突破。

遂にミサイル内部のG弾が横浜ハイブ上空200m地点で炸裂した。

それは逃げ遅れた一部の国連及び大東亜連合軍を巻き込み、モニュメントと呼ばれるハイブ地表構造物の一部を破壊した。

その5分後に3発目が発射されハイブ手前500m地点で炸裂し、モニュメントの上部を完全に破壊し地表にいたBETAを一掃。

奇怪な構造だったモニュメントが下部だけを残して消滅した事とBETAを一掃した兵器に戦場の兵士達に興奮した。

これなら勝てると。

逆転の光を見た兵士達は、次々に砂塵が舞う荒野と化した台地を踏みしめハイブへ進んで行く。

だが、帝国軍や一部の国連軍は呆然としていた。

圧倒的破壊力を持った凶悪な兵器を事前報告も十分な撤退勧告もせずに、行われたその一撃に怒りを持たない訳がない。

戦場に出ている兵士達は興奮しているため気づいていないのだ。

自分達の仲間が軍によって無駄に散らせられた事を。日本帝国という国家の領土に向けて行われた所業に。


そして3発目のG弾の炸裂と共に、呆然と固まっていた元枢府議場内に一人のまだ若い女の絶叫が響き渡り、一人の男が跡形もなく消え去った。





あとがき

とりあえず次回で明星編終了。
遅々として進まなくて申し訳ない。
でも、次回が物語の核心の一つとなる重要なシーンになります。

ちょっと最近はオルタの物語の記憶が無くなってきたので書き難くなってきた。
それが心配です。
他の人のSS見ながら記憶を掘り起こしている次第であります。
だから一部の方だけに公開している質問掲示板に久しぶりに質問を出す日が近いかもしれません。
その時はよろしくお願いします。

それでは次回をお楽しみにw
明星編最終話です。



[ 2013年10月16日 15:09 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(1)
プロフィール

地球外生命体タモちゃん

Author:地球外生命体タモちゃん
惑星タモタモから来た調査員

趣味 読書、昼寝、料理
好食 梅干おにぎり
嫌食 刺身(生もの全般)

マッタリ、モッタリ生きていますので(^ー^)ノ ヨロシク  

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