世界の果ての赤き丘

二次小説、日々の地球人観察記などを書いています。
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Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 01



「お父様、お母様、私は…私は…冥夜ぁ……」


ぐっと唇をかみ締めると少女は視線の先にある、玉座に向かい歩き出した。


「これより、継承の儀を始める!」


儀礼用の服装をした男か高らかに声を上げた。

それに合わせて、周りにいた衛士たちが、さっと足をそろえ、姿勢を整えた。

そして男は玉座の前に立った女の子に一礼をし、大きな木の箱から一本の剣を取り出す。




―――――「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」
―――――そう言って私は、いや俺は晴れやかな笑顔を浮かべた。彼女もそれに笑顔で答えてくれた。
―――――あぁ、安心した。これならこの世界の俺は大丈夫だろう。ありがとう遠坂。
―――――そう思ったと同時に俺の意識は薄れていった。




「政威大将軍 煌武院 悠陽殿下。お受け取りください」

男が、一本の柄の宝石以外は特に装飾されていない剣を恭しく差し出す。

悠陽はほんの一瞬の躊躇い、それを受け取ると力強く握り締め天に掲げて宣言した。


「私、煌武院 悠陽は政威大将軍として国民をまた国家を導くことをここに誓う」


そして鞘から剣を抜き放った。



―――――気がつけば何もない空間を、暗い闇の中を俺は漂っていた。
―――――ここは始まりの場所だ。
―――――ここで俺は平行世界のの俺と融合し、記憶を補うのだろう。
―――――平行世界の衛宮士郎。数々の功績を、時には害を、そして死を残し、英霊になる存在。
―――――……だけど、今だけでも答えを得ているのならば俺は満足だ。
―――――そう思っていると強烈な力に引かれた。
―――――あぁ、次の召還が始まったのか。
―――――できれば守護者としてではなく、誰かの為になる所へ行きたい。




轟音と光と突風が広間に巻き起こった。


「何事だ!くっ、殿下を、殿下をお守りしろ!」


儀式を見守っていた紅蓮 醍三郎大佐は叫んだ。その命令に従い衛士たちが悠陽のもとに向かおうとする。

とその時一瞬さらに大きく光ると、突然光と突風が止み、あたりに静寂が戻った。


「殿下!大丈夫ですか殿下!」


あわてて紅蓮は悠陽の元へ駆けつけようとして、玉座に目をやる。

そこには赤いコートを着た長身の白髪の男が悠陽を支えながら立っていた。



目を開けるとそこには、長髪のきれいな髪をした少女が目を見開きながら俺を見ていた。

手には一振りの剣を持っている。チラリと一瞥して解析したが、それなりの年月を過ごしたただの古い剣だった。だが柄のところに埋めてある宝石だけは解析できない。

周囲を確認すると周りに何人かいるが、皆召還の際の光によって一時的に視力がなくなっている様だ。右往左往している。

とグラリと目の前の女の子が倒れそうになった。


「おっと」


「あ……」


あわてて俺は抱きとめる。状況からして彼女がマスターのようだ。

と言うことは今回は守護者としての召還では無いのだろう。

だが、聖杯戦争にしては聖杯とのつながりがほとんど無い上に、知識が流れてこない。それに前回の記憶が残っている。

ふむ、と首をかしげていると


「あ、あの……」


「貴様ぁ―!殿下からはなれんか!」


巨漢の男が刀を手に取り、こちらに突っ込んでくる。

すかさず俺は女の子を背後にかばうと応戦する。


「――――投影、開始」


干将・莫耶を投影すると相手の刀を受け止める。


「き、きさまどこから武器を!」


「フン、敵にそんなことを教えるほど私は優しくない」


干将で相手の剣を捌くと軸足を蹴り上げ転倒させ、利き手と思われる右手を瞬時に踏み砕く。

ゴキリと広間に骨が砕ける嫌な音が響きわたる。その音に俺を取り抑えようと身構えた全員の足が止まった。


「ほぉ、腕を折られたのに声ひとつ上げないとは余程の武人とお見受けする」


「ほざけ。貴様を倒せばいくらでも叫んでやる」


ぎろりと男は俺に視線を向けてきた。ただでは死なないと目が言っていた。


「……で、どうするマスターよ。いや、まだ契約が済んでいなかったなから正式なマスターではないか」


起き上がろうとする男の背に足を乗せ身動きが取れないように押さえ込むと、俺はマスターと思われる彼女のほうへ振り返った。


「あ、え、契約ですか?いえ、それよりその足を紅蓮からどけなさい!」


「……ふむ、いいだろう。契約は済んでいないがあなたがマスターのようだからな」


彼女へ意識を向けると確かにラインが繋がっていた。

しかしそこから流れてくる魔力は、普通の魔術師以上はあるが、なぜか聖杯の加護が無いので現界させて置くのでほとんど精一杯のようだ。

先ほど投影した干将・莫耶だけで魔力の3分の1を使ってしまった。これでは満足な戦闘などできない。

そもそも聖杯とのつながりが無いのがおかしい。それに記憶も……。

と黙り込んだ俺を女の子が押しのけ、倒れている男に声をかけた。


「紅蓮、大丈夫ですか?」


「殿下、お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。それよりその男から早く離れてください。危険です。
 おい、貴様ら!いつまで呆けておる!殿下をお守りしろ!」


紅蓮とか言う男は折れた腕を庇いながら、呆然としていた周りの人間に渇を入れた。

その命令にあわてて言った。どうもマスターと周りの者たちは仲間みたいだからだ。


「ちょっと待て。私は別に敵対する気は無い。そちらが剣を向けたから応戦したにすぎん」


「貴様なにをふざけた事を!」


「お待ちなさい」


「殿下…」


すっと女の子が立ち上がると俺のほうへ向き直った。

年は14~15歳だろうか。それにしては存在感がある少女である。


「……あなたは誰ですか?」


「私はアーチャーのサーヴァント。聖杯の下なのかは今は分からんが、貴方の召還に応じ参上した」


「サーヴァント?聖杯ですか?あのアーチャーというのは本名なのでしょうか?」


「何を言っているのだマスター。君が私を召還したのだろう?それとアーチャーというのはクラス名だ。真の名は別にある」


どうもさっきから様子がおかしい。そもそも召還の儀式としては人が多すぎるし、召還陣も無い。

大規模な召還術と言うわけでもないようだ。

それにさっき紅蓮と言う男は目の前の女の子を殿下と呼んでいた。と言うことはそれなりの高位の人物と言うことなのだろうか。


「何を訳のわからないことをごちゃごちゃと言っているのだ!殿下、やはりこの男は危険です」


「黙りなさい紅蓮!皆のもの武器を下ろして下がりなさい!この者と争っても無駄に血が流れるだけです」


じりじりと近づいていた兵は彼女の一喝で俺から離れる。


「ほぉ、力の差を見抜いているか。マスターとしてはいい判断だ」


「あなたもその武器をしまいなさい。無益な威嚇行為は必要ありません」


「了解した。で、貴方の名は?契約に名前はひつようだからな」


そう言いながらコートの中に干将・莫耶を入れるフリをして、消し去る。

このような小さなことでも、今の時点で敵に知られるわけにはいかない。


「……先ほど貴方が言った、契約と言うのは何のことなのか私にはわからないのですが」


「……」

契約を知らないだと。これは完全におかしい。やはり今回の召還は何かイレギュラーなのだろう。

聖杯とのつながりも無ければ守護者としての世界とのつながりも無い。それに前回の記憶をそのまま引き継いでいる。

まるで身包みをはがされてポイッとその辺に捨てられた気分だ。


「先ほど聖杯のことを知らないようだったな。では、どうやって私を召還した?」


「そもそも私は召還などというのは知りません。ましてやそのような行為もしてません」


「なに!」

ということは何故私は召還されたのだ。聖杯戦争でもない守護者でもない、ただの召還されただけ。

唯一引っかかることと言えば先程の剣の宝石だけだ。

あまりにも訳が分からな過ぎた。


「う~む、困った。私も訳が分からなくなってしまった」


「……」


悩み始めた俺を女の子がジーと見つめる。


「あ~とりあえず名前を教えてくれないか?契約しなければ私は消えてしまうのだが」


「消えるだと!貴様もしかして物の怪の類なのか!
 殿下、教えてはいけません。この男は異常です」


利き腕の骨を折られたのに元気な男である。着ているものや装飾品からして、この武人も高位な人物らしい。


「……契約したら私に利はあるのですか?」


「殿下!?」


「私も混乱しているから君に利があるかどうかは答えられない。
 だがこれだけは約束する。いかなる時でも君を守り通そう。世界が滅びようともな」


「……いいでしょう。契約します。貴方のその偽りのない瞳を信じて。
 私の名は政威大将軍 煌武院 悠陽 です」


「ふむ、なにやら大将軍などと凄い事を聞いた気がするが……まぁいい。
 ここに契約は成った。これより我が身は煌武院 悠陽の為の剣となり楯となる。
 君の命に従い、君の為に道を切り開くことを誓おう」


彼女の、悠陽の手を取りながら俺は宣言する。

するとなぜか彼女を顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「? どうしたマスター」


「い、いえ、何でもありません。
 ところで貴方の名は?私はまだ聞いてはいないのですが」


「あぁ、すまないが私のことはアーチャーと呼んでくれ、真の名は教えられない」


「アーチャーさんですか……」


とそこへ顔を真っ赤に染めた紅蓮が割って入ってきた。


「も、もう許せん!貴様!物の怪だろうが、なんだろうが知らんがさっきから聞いていれば殿下に向かってなんと言う言葉を!
 名を教えられないだと、貴様ぁ、誰に向かって口を聞いているのか分かっているのか!」


「煌武院 悠陽だが……マスター、彼は何を言っているのだ?」


「えっと…」


はて?と俺は首をかしげ悠陽に尋ねた。


「わ、わ、分かっていて何たる口の利き方!
 その方がこの日本帝国の中心を担う政威大将軍で在らせられるのだぞ!」


唾を飛ばしながら紅蓮がさらに詰め寄り怒鳴る。


「貴様が何を言っているのかよく分からん。だが彼女が重要な人物であることは理解した。
 ただそれだけだ。以下に彼女が偉かろうと煌武院 悠陽という一人の人物に変わりは無い。
 私は煌武院 悠陽と契約したのだ。政威大将軍など知らん。
 もっとも彼女が敬えと命令するのならば応じるが…」


「殿下!」


「よい紅蓮。それにしても私を知らないとは驚きました。貴方は日本語が流暢だから日本人だと思っていましたが、もしかして違うのですか?」


「こんな成りだが日本人だ」


そういいながら俺は色素が抜けて白くなってしまった髪を触った。

生前の魔術の無理な行使による副作用だ。皮膚も黒くなり、目の色も変わってしまった。


「日本人だと!?貴様、嘘を申すではない。日本人がこの方を知ら無いわけが無い!」


「嘘ではない。さっきも言っただろう。こちらも事情が分からず混乱していると」


「むぅぅ」


「紅蓮、落ち着きなさい。とりあえず継承の儀は終わりです。各自もち……」


と悠陽が指示の途中にグラリとまた倒れてきた。

それをまた俺が抱きとめた。


「大丈夫か」


声をかけるが返事が無い。先ほどの違い今度は完全に気絶していた。

召還による疲れと契約による魔力の消費が原因だろう。いままで立っていたのもきつかっただろうに。


「殿下!?どうなさいました」


「……貴様は殿下、殿下とうるさいな。
 心配ない、ただの疲労だ。彼女の部屋はどこだ」


俺はぐったりとした彼女をお姫さん抱っこで抱えると紅蓮に尋ねる。


「き、貴様!殿下のお体にぃ~!」


「落ち着け馬鹿者。とにかく彼女の部屋に案内してくれ。
 それと貴様も腕の治療をしておけ」


「うぬぅ~~~~~。殿下の寝所はこちらだついて来い。
 それと敵の情けはいらぬ!」


そういうと紅蓮は俺が折った腕を押さえながら、荒々しく部屋の出口へ向かった。その途中にその場にいた部下に指示を出す。


「おい!貴様らはこの場を片付けて置け!……それと宰相殿、この事はご内密に」


「うむ。とりあえずはこの場は殿下に任せておこう。何かあったらいつでも連絡を」


「分かりました」


廊下に出ると紅蓮はドアの横にいた警備員らしき者に、悠陽の部屋に医者を呼ぶように指示を出すとこちらだと言って案内する。


「ふむ、なるほど悠陽はよほど偉いのだな」


先ほどの召還された部屋もそうだが、廊下に出ると改めてこの場所がどういうところか実感する。

廊下の幅は2m異常あり、柱には派手さは無いが細かい装飾が施されている。この感じからする純日本風の建物のようだ。

細かく周りを見渡したりすれば、長年の経験から大体のこの建物の大きさは把握できた。

約東京ドーム一個分だろう。庭入れるとそれ以上は少なくともある。

それほど大きな建物で、中にいるであろう人の数からして相当な重要人物なのだろう。

いや、さきほど紅蓮と言う男が言っていた「日本帝国の中心を担う政威大将軍」だと。

少なくとも私は『日本帝国』など知らないし『政威大将軍』と言うのも知らない。

それに日本帝国の中心を担うと言うことは大統領みたいなものということなのか。

宰相がいると言うことは少なくとも総理大臣以上の権限を持つと言うことだ。


「着いたぞ。ここが殿下の寝所である」


いろいろと考えていると、どうやら目的地に着いたようだ。

紅蓮が扉を開け、その後を俺はついて行った。


「そちらに寝かせよ。あとは付き人がやるから貴様は下がれ」


「そう言われてもな。私は彼女のサーヴァントだ。早々にはなれるわけにはいかん」


「さーばんとだが何だが知らんが今は医者に診察させる。それとも貴様に医術の知識があるのか?」


「……分かった」


俺に医術の知識が無いわけではない。戦場に出ればそれなりに自然と医術など身につく。と言っても怪我などの外科的知識がほとんどだが。

ここで引き下がったのはこの紅蓮という男と揉めれば、後々にいろいろと煩そうだからだ。


「貴様にはいろいろと聞かねばならぬ。こちらに来い」


「私も聞きたいことがあるからいいだろう」


医者がやってきたのを確認すると紅蓮は俺を隣の部屋に案内した。

どうやら自分の執務室のようだ。


「さて、まずは貴様の身分を聞こう」


「アーチャーだ」


「ふざけるな!貴様の名を言えと言っているのだ!」


バンッと紅蓮は自分の執務机を壊さんばかりに叩いた。


「断る。真名は大切なものだ。信じておらん奴に教えるわけにはいかん」


「ぐぬぅう。では貴様はどこから現れた?
 あの場に侵入者などは入れないはずだ」


「……ひとついいだろうか?」


「なんだ?」


「これは尋問か?」


「当たり前だ!どこからともなく現れた貴様を誰が信じるか!殿下が許しても私は許さん!!」


はぁ、はぁと荒い息を吐きながら紅蓮が俺を睨む。


「そうか。貴様は少々頭が固いようだが……まぁいい。これから話すことをよく聞いておけ。話の途中での質問は聞かん。
 とりあえず最後まで話しを聞け。その後に質問には答えよう。それとこちらの説明が終わったら私も貴様らには聞きたいことがある」


「いいだろう。話せ」


俺は聖杯戦争の事、サーヴァントの事、契約の事、今の状況の事、を手短にだが的確に説明した。

話をしている間、紅蓮と言う男の顔は真っ赤を通り越してドス黒くなっていた。


「以上だ」


「貴様、私を馬鹿にしているのか?」


「信じる信じないは貴様の固い頭で考えろ。
 しかし、そうだな。一つ私が人間ではない事の証拠を見せよう」


「証拠だと?」


「よく見ておけ」


俺は紅蓮の目の前で霊体化する。

この状態になれば、まず一般人には視認は不可能だ。


「き、消えただと!?」


「これが霊体化だ。人には視認できない。もちろんあらゆるセンサーにも引っかからない」


「なんと面妖な。声だけが聞こえておる」


驚いた表情のまま紅蓮はキョロキョロと辺りを見回す。

俺は霊体化から実体に戻った。


「これで少しは信じれただろう?」


「むぅ、このような事を見せられれば信じないわけにも如何だろう」


「少しでも理解してもらえるだけでこちらは助かる。ではこちらから質問していいだろうか?」


「いいだろう。貴様を完全に信じたわけではないが殿下に危害を加える事はないということは理解できたからな。
 私が答えられる範囲でなら答えよう」


「では最初に……」


そして俺は様々なことを紅蓮に尋ねた。

紅蓮からの回答は驚くべきものばかりだった。

この世界ではBETAと言う謎の地球外生命体によって、地球全体に危機が迫っているそうだ。

今の世界人口は15億人。消滅した国は約50カ国。そして今なおBETAの進行は進んでいるとの事。

そしてこの世界で魔術と言う概念は聞いたことがないとの事。

私から魔術の説明を聞いた紅蓮は端末を操作しながら言った。


「そのような力があれば誰かが必ず使っているはずである。
 情報省からもその様な報告は一度も無いし、こんな時代だ。いくら神秘を秘匿しなくてはならないと言っても自分が死ねば意味が無いだろう?
 それにそのイギリスにある時計塔とか言うところだがロンドンにあるのだろう?
 すでにロンドンはBETAの進行によって消滅している。時計塔とか言うところがあるのなら誰かが魔術を使っているはずだ。
 目撃例が無いのだから貴様が言う魔術というのはない。
 言っとくが情報省の情報収集能力は世界有数の力を持っている。ほんの少しでもその様な超常現象が目撃されれば報告されているはずだ。
 今、調べたがその様な報告はまったく無い」


その言葉に俺は一つの仮説にたどり着いた。


「なるほど。歴史の根幹の部分で魔術は発達しなかったと言うことか。確かに平行世界の無限の可能性からすればありえないことは無いな」


と言うことは聖杯が無いことも頷ける。なぜなら聖杯を下ろすための器などを造る魔術師がいないのだから。

しかし、それならば何故私は召還されたのだろうか?

聖杯の可能性は消えた。

と言うことは残ったのは守護者としての仕事だけなのだが、自意識が覚醒状態ではありえない。。


「ますます状況が分からなくなったな」


「それと貴様が話していた冬木市という所は存在しない。
 BETAの進行により、かなりの市や町は壊滅して名前などが変わったが、過去にもその様な地域は無いな」


そう言うと紅蓮は端末から視線をこちらに向けた。


「聞きたいことはこれだけか?」


「今のところはそれだけで十分だ。後は自分で情報を集める」


「…好きにしろ。だがあまり目立つことはするな。殿下の顔に泥でもつけてみよ。貴様がどんな存在だろうが必ず抹殺してやる」


「分かっている。マスターには迷惑はかけない。とりあえずは私が召還された目的を模索すことにするさ。
 ……唐突だが少々扉に穴を開けるぞ」


「は?」


「――――投影、開始」


俺は紅蓮から見えないように懐で黒鍵を投影すると間髪いれず、この部屋の唯一の扉へ投げた。

ドスッと刀身の半分以上が刺さる。


「貴様、やはり頭がおかしいのではないか?」


俺の行動が理解できない紅蓮が疑わしそうな目で俺を見た。


「その様な考えしかできないとは貴様は相当頭が硬いな。
 盗み聞いている不届き者がいたから警告したのだ」


「何だと!」


椅子を蹴倒して紅蓮は立ち上がる黒鍵が刺さった扉目掛けて走りより開け放つ。

そこには1人の男が、帽子に開いた穴に指を通して寂しそうな顔をして立っていた。

おそらく穴の原因は黒鍵が刺さったからだろう。


「お前は鎧衣!何故ここにいる」


激高する紅蓮を無視して、鎧衣という名の男はズカズカと部屋に入ってきて俺の前に立った。


「君が殿下をお姫様抱っこして現れた男か。ずいぶんと乱暴だなぁ。
 この帽子は一昨年に娘と妻が私にくれた大事な物なのだが、見たまえ。見事に穴が開いてしまったではないか」


「それは失礼した。だが少々蝿が飛んでいてな。煩くてつい黒鍵を投げてしまった」


「ほぉ、あの剣は黒鍵というのか。見事な切れ味だ。あの分厚い扉を貫通するとは」


この男、観察力に優れている。危険な人物だな。瞬時に警戒心をあげる。

とそこへ紅蓮が扉に刺さった黒鍵を引き抜いて戻ってきた。

ポンとおれにそれを投げ返すと鎧衣の前に仁王立ちする。

受け取った黒鍵は先ほどと同様に、コートに入れるフリをして、かき消す。


「鎧衣。貴様どこから情報を得た?いくら殿下のお気に入りとはいえ情報の漏洩は見過ごせん」


「まぁまぁ、紅蓮君落ち着きたまえ。私はちょっとその辺の人に尋ねただけだよ」


「……貴様の今までの行動からして絶対に口を割らんことは知っている。
 だが会えて尋ねよう。誰から聞いた?」


「それは秘密さ。教えたら君はその人を殺してしまうかも知れないからねぇ」


「ぐぬぅぅ。鎧衣、いつまでも人を馬鹿にするなよ。いつか貴様を痛い目にあわせてやるぞ」


「おお怖い。そう思わないかいえ~と…」


「アーチャーだ」


「珍しい名前だな。まぁ、私も左近と言う、かっこよくて誰も使わない名前を持っているがな」


そう言うと鎧衣は、ハハハハハハハッと1人で高笑いした。





その後は鎧衣という名の男にもう一度俺の現状を話した。

本来なら話さないほうがいいのだが、この男は情報省に所属しており外国にも行っているらしい。

ならば利用しない手は無い。少々リスクを伴うが仕方あるまい。

戦場で現状把握は大切なことだ。それと情報も。


「つまり君は人間ではなく幽霊と言うことかな?」


「それに近い存在だ」


「なるほど。あ~、ところで紅蓮君。そろそろ君は医者の所に行ってきたらどうだい?この場は私が預かるから。
 あまりその腕を放置しておくと衛士として使い物にならなくなると思うのだが?
 それに私の視界にグロテスクな紅蓮君の腕はいれたくないからねぇ」


確かに元から太い紅蓮の腕は二倍以上に腫れ上がっていた。内出血しているのだろう。どす黒く変色していて鎧衣の言うとおりグロテスクだ。

あれは相当な激痛が走っているはずなのに大丈夫なのだろうか?

俺と鎧衣の視線を受けて紅蓮は自分の腕を見ると立ち上がり言った。


「確かにそれは困るな。医務室に行って来る。くれぐれも2人とも変なことはするなよ。特に鎧衣。貴様はいろいろと問題を起こすからな」


「それは無いんじゃないかな。どちらかと言うと彼みたいな存在に言うべきことだと思うが」


「だまれ。お前のほうが信用できん。それではアーチャー殿くれぐれも頼みます」


初めて紅蓮が俺の名を言った。それなりに信用してくれたのだろう。


「どう思うアーチャー君?」


「知らん。だが私も貴様を早々は信用せん。どこか胡散臭いからな」


「しょうがないじゃないか。情報省に勤務すればたいていはこの様になるものなのだよ。
 あぁ、そう言えばこんな物を持っているのだが君も食べるかい?」


そう言うと鎧衣はスーツの下から板チョコを取り出した。

カカオ72%と表示してある。


「最近凝っているんだよチョコレート。私はどちらかと言うとビターが好きなのだが君はどうだい?」


「貴様としゃべると疲れるな。話題がころころ変わって。
 大体だな、私の存在を疑問に思わんのか?」


「さぁ、世の中に君見たいのがいても不思議は無いと私は思うよ。
 でだ、私はナッツ入りのチョコレートは嫌いなのだよ。あれはナッツが歯に挟まってイライラしてしまう」


つくづく変な男である。

板チョコの銀紙を剥がすと半分に割り、俺に差し出してきた。

「紅蓮君が戻るまでこれでも食べながら語ろうじゃないか、アーチャー君」

「君はいらん。アーチャーと呼べ」

「それにしてもやっぱりチョコはビターだねぇ。この苦味がいい。大人の味だなぁ」

「貴様、人の話はちゃんと聞け」

結局、紅蓮が戻るまで俺は鎧衣と不思議な会話を延々と交わすことになった。



次へ



あとがき

嘘予告を多少訂正・加筆したものです。
人気があったので、連載して行こうかなと思う今日この頃。
連載というのはなかなか難しく、話を続けるのは大変です。
ほかにもタモは連載小説を持っているため、なかなかこちらはUPできないと思います。
そこのところのご理解をしていただけると助かります。
なるべく早めのUPを目指そうとは思ってますよ?


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[ 2013年10月16日 15:05 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

地球外生命体タモちゃん

Author:地球外生命体タモちゃん
惑星タモタモから来た調査員

趣味 読書、昼寝、料理
好食 梅干おにぎり
嫌食 刺身(生もの全般)

マッタリ、モッタリ生きていますので(^ー^)ノ ヨロシク  

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