世界の果ての赤き丘

二次小説、日々の地球人観察記などを書いています。
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メガネからコンタクトに変えた結果・・・

ドライアイが進行しているらしい。

眼科で検診受けたらコンタクトは6~8時間を限度にしてくださいって言われました。
ついでに緑内障予備軍指定受けてしまいました。

しばらくずっと忙しかったのでまともに健康診断を受けていないので、近々ちょっと人間ドックに入ろうかと思います。

皆さんも体調管理は重要ですよ。
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[ 2013年10月22日 21:09 ] カテゴリ:日記 | TB(0) | CM(0)

誤字の報告がありました。

後日修正します。誤字だけに。

そういえば、私生活について報告していませんでしたね。
子供たちはとても元気に育っております。
息子は立派な男になりました。双子ちゃんの面倒も良く見てくれます。
たまにやんちゃな時もありますが、家族との約束事は守ってくれるので安心しています。

私のほうも特に変わったことはありません。強いて言えば私が大型二輪免許を、妻が中型免許を取得したぐらいですかね。
妻はハイエース乗り回してます。買い物に配達にと重宝しています。
馬鹿でかいのですが、私より運転が上手くなった妻はスイスイ走ってます。無事故無違反は伊達ではないですね。
GTRかフェアレディZほすぃとか言ったときは、そんな金はない!というか家族で乗れないよ!などという攻防がちょっとありました(普通は夫婦の立ち位置が逆だと思うのですが…)
普段はおっとりしてるのに、本性は結構過激です。まぁ、そこがいいんですけどね←惚気

私はCBR600RRです。
ただし、私のほうは仕事が忙しくてほとんど展示車両です。納屋でエンジンかけてブイブイしたり、息子と洗車したりぐらいしかしてません。
一度ぐらいは遠くに走りに行ってみたいのですが、とにかく仕事が詰まっていたので近場や購入したバイク屋に行くぐらいしかしていません。
まぁ、あとは子供が仮面ライダーとか言って勝手に乗るので、倒れないようにガチガチに固定しているので、出すのが面倒というのもありますが…

仕事ですが、ぼちぼち売れ行きも安定しました。
一時期はちょっとしたトラブルで海外での販売が出来なくなったり、東日本大震災の影響を受けたりして売り上げがガクンと落ちたのですが、今は持ち直してギリギリ黒字かなぐらいのレベルまで戻すことが出来ました。

そんな日々を過ごしていました。
[ 2013年10月18日 13:00 ] カテゴリ:日記 | TB(0) | CM(0)

ああああああああ!プロットがないぃぃぃぃぃぃ!

というわけでプロットを入れていたUSBのデータが全部飛んでいて途方にくれるタモです。

書きかけのやつとか全部飛んでた。
こういうのって復元できるのか分かりませんが、ファイルが開けない状態なのでちょっと無理なようです。

とりあえず何とか頑張って書いてみる。

まだまだ時間はかかりますが、今しばらくお待ちください。
[ 2013年10月17日 22:11 ] カテゴリ:日記 | TB(0) | CM(0)

小説をブログへ移植中

以前からリンクで飛ばされると見にくいという意見がちらほらあったので、ブログのほうへ小説を移植中。

というか改めて読んでみると稚拙だなと感じてしまうところありますね。
ちょっと加筆修正も考えてみようかと思います。

[ 2013年10月16日 18:04 ] カテゴリ:日記 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 短編03

初恋と戦う決意


ある日のPX。

珍しく基地内にアーチャーがいたので、武が昼食に誘うと、その噂を聞きつけた部隊のメンバーと3人の女性の大所帯がガヤガヤと喋っていた。

他愛もない話で盛り上がっている時にふと、不意に武がポツリと洩らす。


「ところでさぁ、アーチャーさんって今まで付き合ったりした人はいないのか?」


「は?」


「「「!!!!!!!」」」


空気が凍った。

瞬時に部屋の空気が重くなり、昼食をとっていた整備員や隊員達が身の危険を感じ1人また1人とPXから出て行く。

いつの間にか入り口に兵が立ち、隊員達を誘導した後、立ち入り禁止のポールを設置した。

おばちゃんは洗物しないとね~と珍しく厨房の奥へと引っ込んだ。

そんな雰囲気に気づかない武が更に続ける。


「いや、アーチャーさんは付き合った人はいないの?って聞いただけなんですけど……え~と、夕子先生?まりもちゃん?」


「な、なにかしら白銀!私は正常よ。べ、べつに……知りたいとか思ってな……くもない」


「あひゃ!わひゃひは、その、えっと……」


爪をかじったり、髪の毛を弄るという不自然な行動をする夕子とまりもに武が声をかけると、なぜか慌てふためく2人。


「私も興味がある。アーチャー、聞かせてくれないか?」


「それはいいが、何故懐に手を入れているんだ……」


月詠は何故か懐に手を入れ、殺気を放出する。

そんな様子を、一目散に武を置いて逃げたA-01部隊と207隊のメンバーが入り口から顔をそっと出し覗いていた。


「武って結構バカなんだね」


「鎧衣、気づくのが遅いぞ。あやつはこういう事には疎すぎる……」


「アワワワ、なんか空気が重いですぅ」


「なんて威力の爆弾を放るの……」


口々に言う207隊のメンバー達。

その後ろではA-01部隊のメンバー達が「強化服を着ろ!」だの「歩兵部隊の招集を!」と口々に言いながら右往左往していた。



****



「えーと、その答えづらかったら俺はね、その、すいません……」


「白銀武、貴様には前にも言ったな。思慮が欠けていると。先の事を考えろ。
 もっとも、もう遅いがな」


そう言いながら視線を移す。


「……」


「……」


「……」


視線の先には、美女3人がこちらを見ていた。

ニヤニヤした視線、オドオド、チラチラした視線、射殺さんばかりの眼力を込めた視線。


「はぁー……」


もはやため息しか出ない。

この状態では話さなかったら何をされるか分からない。

覚悟を決めるべきなのだろう。

だが、彼女の事は……


「そうだな、俺も男だ。確かに愛した女性がいた」


「いた?」


武の問い返しに頷く。

ゆっくりとアーチャーが語りだす。

あの自分の歯車がカチリとはまり、道を開かせたあの時を思い出しながら。




「18の頃に彼女と出会った。本当にあり得ない出会いだった。
 だが、俺にとっては最高の出会いだった。凛とした顔の彼女の声を仕草を今でも鮮明に思い出せるほどに」


「「「……」」」


いつの間にPXの空気が静になり、誰しもがアーチャーの声に耳を傾ける。


「一目惚れだったのかもしれない。
 その頃俺の身の回りで起こった事件を解決するために彼女が来たんだ。
 楽しい事も苦しい事も笑った事も悔しかった事も、彼女と一緒に体験しお互いを支えあった。
 本当に短い間を彼女と過ごした。……そして、全てが終わった時、彼女と永遠に別れた。
 彼女と別れない方法も無くは無かった。ただそれは多くの人苦しめる事になる。
 彼女もそれを望まなかった。いや、誇りを捨てたく無かった。
 だから、彼女は笑って俺を愛してるって言って、行ってしまったよ。
 ま、これが私の初恋って奴だ」


「それって…彼女は死、ムグッー!」


「バカ白銀!」


「何を聞いてる白銀!」


武が余計な事を言おうとしたので、夕子とまりもが飛びつき口を塞ぐ。

それに微かに口元を緩めアーチャーが答える。


「いや、彼女は死んでいない。彼女は帰っただけ。彼女の居場所へな。もっとも私がそこに行くことは到底出来ない事だった」


【シロウ、貴方を愛している】


「彼女が俺の答えを聞く前にな」


頭の奥にこびり付いた忘れられない、忘れてはならない彼女の言葉。

いつか、胸を張って彼女に答えようと思ってた。

だが、自分は道を踏み外し、世界の道具と成り果てた。


「アーチャーは…その……後悔しているのか?」


月詠が恐る恐るといった感じで尋ねる。


「後悔しているのかもしれないし、後悔していないのかもしれない。
 彼女の誇りを傷つけた俺にはもう言えないと思っていたから。
 だが、今まで俺がやってきた事が間違いじゃないと言ってくれた馬鹿な男がいた。
 その男のすべてが俺の答えなんだろう。
 だから自分の中での折り合いが取れたら、後悔してないって胸を張って言える」


「そうか……」


なんとも言えない顔で黙り込む月詠達。

好意を寄せていた男の過去を知って、初めてこの人を好きになって良かったと思うと同時に、大きな壁が立ちはだかっているのだ。

諦める気は更々ないが、この壁を乗り越えるのは並大抵の努力では無理だろう。


「壁は高し……か」


「そうね……」


「そのような壁、越えて見せて真の者だ。私は諦める気は無い」


バチッ


空間に紫電が走った。


「あら月詠中尉、誰も諦めるなんて言ってないわよ」


「そ、そうよ。私だって越えてやるわよ!」


椅子を蹴倒して立ち上がる夕子とまりも。

それを月詠は鼻で笑い言った。


「フフン、少しでも及び腰になった者は戦場では生きて行けん。大人しく引き下がったらどうだ?」


「言うわね月詠中尉……」


一瞬にして最初のように重たい空気が室内に満ちる。

身を乗り出して話を聞いていた者たちは、すぐさま身を翻し、入り口からそっと顔を覗かせる。



そんな喧騒の中、アーチャーは聞いて置かなければ行けない事を武に尋ねる。


「……白銀武、お前は大切な人がいるか?守りたい人は?愛してる人は?」


真剣に語りかけてくるアーチャーに武は一瞬息を呑むがはっきりと答える。


「……います。守りたい人も大切な人達も。愛してるとかはまだ分かりません。
 でも、守りたい。守れなかったあの時と違って今はちっぽけだけど力があるから。
 だから俺はこの世界を守りたい」


「フン、世界ときたか。お前が守りたい世界は彼女達と進む世界かな?」


視線の先にはこちらを窺う207隊のメンバー達。


「そうです。今度こそ守りたいから」


握られた拳にこちらを見つめる確固たる意思を秘めた瞳。

その奥の炎は本物だ。

だからアーチャーは助言する。


「意思はあるか……
 自分で行動し、その手で掴みとって初めて理想が現実になる。
 思うのは簡単だ。ただ願うだけも簡単だ。
 掴み取りたければ走って戦って、血と泥にまみれながらも先に進め。そうすればお前は強くなれる」


「はい」


「どんな困難があっても、そこで立ち止まらなければ終わりじゃない」


そう、立ち止まった自分はあの時に終わって世界になってしまった。

間違っていなかったのに、膝を折り、手を地面につき、その体を止めてしまったのだ。

理想ははるか遠くなのに、その歩みを止めた俺が愚かだった。

何があっても立ち止まらなければ届いたかも知れないのに。

だから彼には……


「守りたいなら全力で生きろ」
 



[ 2013年10月16日 15:17 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 短編02

「なぁアーチャー君」


「なんだ?」


「この縄は何かな?」


「ふ、貴様の胸に手を当ててよく考えてみれば分かるさ」


言われたとおりに鎧衣は自分の胸に手を当てて考えた。


「あぁ、私の胸よ。この縄は何なんだろうか、答えておくれ……ふむ、わからん。私が何をしたんだ?」


「ほぉ、貴様しらを切るきか?」


鎧衣のふざけた態度に、アーチャーは剣を投影して鎧衣の首筋に添えるという答えを返す。


恐怖心を煽るために少々の切り傷をつける事を忘れない。


「……すまない。正直こんな事態になるとは思ってなかった」


タラリと首筋から流れる血の感覚に、流石の鎧衣もアーチャーの本気を感じ取り、口を割る。


「まったく。貴様のその技能はそもそも他の事に使うためだろ。こんなくだらない事に使うなどどうかしてるぞ」


アーチャーと鎧衣の目の前に広がる光景。




エッチな本と嫉妬




鼻から血を流しながらその巨体を悶えさせている紅蓮を筆頭に、高位の男性衛士達も鼻血を出し失神していた。

騒ぎの中心には一冊の雑誌らしき本が…

そんな中、女性衛士達は月詠 真那を中心に血眼になって、雄叫びを上げ、走り回っていた。


「探せ!探せ!1冊残らず探せ!所持していた者はすべて縛り上げろ!抵抗するなら半殺しも構わん!火器の使用も許可する。場合にっては戦術機も使え!」


「「「「了解」」」」


次々と捕まる衛士。全員、青痣ができるぐらいに殴られている。

中には腫れあがり醜くなった顔を歪ませ男泣きする輩もいた。


「流石にこれは……鎧衣、一体何冊配布した?」


阿鼻叫喚な地獄絵図に、アーチャーの額からヒヤリと汗が伝う。爆発音が聞こえるのは気のせいだと思いたい。


「うむ、1冊五千円で100冊、レアを1冊一万で10冊で合計110冊だな。ちなみに裏取引だったが10分で完売した」


自信満々に答える鎧衣。どこか誇らしげに胸をそらしているのは気のせいだろうか……


そんな二人のやり取りの間にも広間には続々と衛士たちが連れてこられていく。


「よし、これで全部か!」


「はい、情報どおり110冊すべて揃ってます」


月詠の目の前に積み上げられた雑誌らしき本。


表紙には「帝国斯衛軍 大胆写真集!」と書かれてある。もう一冊、他の物と違い豪華な装飾してあるのにはこう書いてあった。


「帝国斯衛軍 読者が選ぶベスト10 袋とじにはお風呂シーン付」


表紙の写真は盗撮とは思えないほど鮮明なシャワーを浴びている月詠真那の後姿である。


そしてそのどちらにも監修 鎧衣左近 と表記してあった。


「さて、鎧衣。覚悟は出来ているか?」


足跡を立てず床を滑るように近づいてくる月詠。

その姿はまさに修羅。

武人の呼吸にかわり、僅かに揺れる体。溢れ出る殺気は本物だった。


「月詠中尉、落ち着きなさい。私はだね、潤いが足りない男性衛士諸君に一筋の光をだな……」


その姿に内心ビビリながら、表では冷静を装って言い訳を唱える鎧衣。


「黙れ…八つ裂きにして殺すぞ」


地の底からの怨嗟が篭った低い声が月詠の口から漏れる


「……」


その声にシーンと静まりかえる大広間。

痛てー、くそーと呻いていた男性衛士達は死んだように動かなくなった。自分に矛先が向かないようにするためだ。

というより何か音を立てれば殺されそうなぐらいな雰囲気だったからとも言える。


「うっほん、あー月詠」


その凍りついた場を壊すように、アーチャーは咳払いをして月詠の説得を試みる。


「……なんでしょうか?」


ギリギリと首を捻じ曲げ、アーチャーへ視線を移す。

その顔は普段の端麗な面持ちからかけ離れて、真っ赤な顔に憤怒の表情だ。


「す、少し落ち着け。こいつは私が責任を持って処分をするから。なんならBETAの群れの中に放置してやってもかまわんし、戦術機の射撃演習場に放置してもかまわん」


「それは酷すぎじゃないかねアーチャー君」


ちょっと震える声で鎧衣が呟く。

それを無視してアーチャーは鎧衣を縛っているロープを握ると、さらに締め付けながら月詠の説得を試みる。


「まぁ、こいつがしたことは許されざる事だが、一応こんな奴でも使えるから、殺すのは後にしてくれないか?」


「アーチャー殿、この事には口を挟まないでいただきたい。これは帝国斯衛軍の問題です」


即答で切り返す月詠。聞く耳を持たないと言うのはまさにこの状態なのだろう。


「しかし、このままでは明日の演習に響くぞ。衛士たる者、万全の体制整えるべきなのだろう?」


「分かりました。では……」


「今殺します」


月詠は袖から隠し持っていた暗器を取り出すと、一直線に鎧衣に向かって閃光のごとく走る。

迫る月詠に鎧衣があわてて叫んだ。


「ちょ、ちょっと待った!交換条件だ」


と、首筋まであと1cmの所で刃が止まる。


「くだらない事を言ったら殺します。くだらない事を言わなくても殺します」


「ふっ、甘いな真耶ちゃんは。私が何の対策もしてないと思うのかい?」


ユラユラ揺れる刃先から首筋をそーと離しながらニヤリと鎧が笑う。


「何っ!?」


「これを見よ!」


そういうといつの間にか硬く縛られていたロープから鎧衣は抜け出し、帽子を抑えつつ空中で華麗に一回転。

無駄に身体能力が高いところを見せ付けつつ、大仰に一枚の写真を懐から取り出し頭上にババーン掲げた。


「そ、それは!」


「き、貴様!」


そこに写っていたのは月明かりの下、硬く抱き合う月詠とアーチャーの姿だった。

これも盗撮とは思えない鮮明さで、プロが撮ったと言えば納得できるほどの見事な写真だ。


「おい、あれって…」


「まさか…」


「アーチャーの野郎…殺す!」


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…アーチャーは死ねぇぇぇぇぇ!」


「月詠様…」


「不潔です」


その場にいた全員がざわざわと騒ぎ出した。抱き合う男女から想像できる物はたった一つ。頭によぎるのは『恋人』の二文字。

突然の出来事に、衛士達は驚いてしまい頭の中からは、盗撮の件は頭の隅に追いやってしまう。

当の本人達である月詠は顔を真っ赤にしてあぅあぅ言いながら俯き、普段は冷静なアーチャーもこの時ばかりは固まってしまった。


「では、私はこれで」


固まった二人を尻目にそう言うと鎧衣左近は気配を消しながら逃走。腐っても情報部エース。仕事は完璧。

すべては計画通りという事だ。

その後、帝国斯衛軍内に月詠とアーチャーは恋人という噂が蔓延していった。



次の日


「アーチャー、弁明はありますか」


悠陽の右手には例の写真。左手には太刀が握られ、極上の笑顔と背後にはわけの分からないオーラ。


「落ち着け悠陽!誤解だそれは!鎧衣の策謀だ!」


「そうです殿下。落ち着いてください!ま、まずはその刀を此方にお渡してください!」


「まぁ、仲良く弁明ですか? ウフッ、フフフフフフフ……」


翌日の悠陽の執務室から聞こえてきた争う声に、侍従長はまた頭を痛めていた。
     


[ 2013年10月16日 15:16 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 短編01

とある午後の昼下がり、悠揚はキョロキョロと辺りを見回しながら廊下を歩いていた。

そこへ、反対側から紅蓮がやって来た。

「どうしました殿下? 誰かをお探しですかな?」

「ああ、紅蓮。アーチャーさんを知りませんか」

「アーチャー殿ですか。先ほど衛士達の食堂で見かけましたが……」

「まぁ、そうですか」

「え、あ、殿下!ちょっとお待ちください!今食堂に行ってはなりません!殿下ー!」

時既に遅し。


近衛衛士共同食堂

「……な、何なのでしょうか。この状況は」

「おふくろ―!おふくろ―!おふくろの味じゃ―!」

衛士たちがいつもの赤いコート脱いでラフな格好で、何故か前掛けを付けているアーチャーを取り囲んで号泣している。
当のアーチャーはうんざりとした顔で立っていた。

悠揚は側にいた衛士に尋ねた。

「これは一体どうしたのですか?」

「で、殿下。これは申し訳ありません。そ、それが……」

「?」

「その、これを食べてみてください」

「はぁ」

悠揚は衛士に差し出された器を覗き込んだ。

「肉じゃがですか…」

少々行儀が悪いが悠揚は指で肉じゃがつまんで口に入れた。

「お、悠揚。いいところに来たな。この者達を解散させてくれ。まったく持って邪魔だ」

悠揚に気づいたアーチャーはこの馬鹿騒ぎを止めてくれるように頼む。

「……」

「悠揚?」

「お、お母様……」

「君もか――――――――!!」

[ 2013年10月16日 15:15 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 Interlude

その謎は秘匿された。

表上はG弾の影響によるものや偶然に地球に飛来した隕石や米軍の新兵器という噂を流布し真実を隠した。

士気の低下を防ぐための各国の首脳陣の決定だ。

しかし、裏ではあの日以来各国で様々な解析が続けられている。

分かったのは、記録写真に映し出された剣らしきシルエットの飛来物がBETAを消滅させる武器である事。

飛来物の残留物は一切無い事。飛来物が直撃した戦術機は皆無である事。巨大な建造物であるハイヴを破壊する莫大な威力を持つ武器である事。

そして謎の飛来物の発射位置とされる日本の象徴でもある富士山の唐突な活動停止だった。






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 Interlude





「ハァ……」


夕呼の寒々しい溜息が部屋に木霊する。

明星作戦が終了し、いろいろな物を得る事ができた。

これで兼ねてから準備を進めていたオルタネイティブⅣが加速するだろう。

もちろん邪魔な奴らもいるし、正直猫の手を借りたい状況である事は変わりはない。

それでも作戦前から考えていた案件についてはすべてクリア出来たから満点だ。

次のステージに進む事ができる。

だが、


「なんだっていうのよ。あれは……」


夕呼の頭の中には明星作戦を終了させたあの砲撃がどうしても離れない。

片っぱしから手に入れた映像に映し出されるのは、どれも剣ばかり。

高速で飛翔していたため記録用のカメラで写しきれず、鮮明な写真がほとんど無いため確信は出来ないが写真から立体構成すると現れるのは必ず剣なのだ。

それも戦術機が使うような巨大な物ではなく、人間が扱う物、少なくともサイズは人間サイズである。


「そんなもんでどうやってBETAを殺したっていうのよ。せいぜい数十人がかりで兵士級1匹を何とか倒せるような武器じゃないの」


そして発射位置の観測報告書には巨大な物体の移動跡は無く、人の足跡と思われるものが1人分見つかっただけ。残留痕も無し。

科学的な力、例えば火薬を使って発射したとすれば周辺には必ずその痕跡が残るはずなのだ。


「スーパー超人が一つ一つ手で投げたわけないわよね。ていうかそんな奴がいたらBETAなんて楽勝で殺せるか……」


少なくとも数万人の人と重さ数キロから数十キロの物体を100㌔近く投げれるような力が必要なのだ。

どんなに肉体改造をしても100mが人類の限界だろう。戦術機でさえ腕力だけでは無理だ。


「人間一人であんなことできるわけないじゃない」


それでも夕呼はいろいろと考えてみた。

空中に何らかの方法で磁場を形成し、電磁砲の要領で発射したというのが今のところ有力であるが、あくまで他のものよりは現実的であるという考えだ。

だが、そもそも自然界に莫大な磁場の形成をしたら、付近に生身の人間がいれば感電もしくは発射時の熱で黒コゲで死ぬ。

砂があれば必ず鉄などの金属類が微量に含まれているし、磁場の形成は莫大な電力がいる。更に巨大な装置が必要だろう。

これらをクリアしたとしても、100㌔近い距離を態々剣という形の砲弾で誘導装置なしでBETAのみ狙い撃ちなど神のみ業としか言いようがない。


「それに、なんで一切の痕跡が無いのとBETAを消滅させる力があるのかよねぇ」


そう、飛来物と思われる痕跡は一切ない。剣の破片と思われるものは全く発見されず、剣が直撃したBETAは文字通り消滅した。

質量保存の法則を真っ向から無視して、肉片から血の一滴も残さずだ。目撃した兵士の話では死体にも剣が当たっているのを見たという証言がある。

生死を問わずにBETAの肉体のみを消滅させるなんらかの方法があるという事になる。


「ハァ……本当に神様の仕業かもしれないわねぇ……」


考えれば考えるほど分からない問題に、ついに信じてもいない神に丸投げする夕呼だった。










炎が舞い、空を赤くてらし、赤茶けた大地に無数の剣が突き刺さる。

その上をゆっくりと巨大な歯車が音を立てながら回り、どこからか風を勢い良く吹き込む音と鉄を叩く音がする。

舞いあがる砂煙に思わず袖で口元を覆う。


「ここは……」


見渡す限り人はいない。

そのうち自然に足がカーンカーンと鉄を打ち付ける音の方へ向いた。

最初はゆっくりと着物の裾が汚れないように恐る恐る歩を進める。

そのうち早足になり、ついには裾を持ち上げ走り出した。


30分ぐらい走っただろうか、鉄を打つ音がすぐ近くから聞こえる。

カーンカーンとリズミカルに。

ただ、その音はどこか悲しい響きを秘めているように聞こえてならない。


そして唐突に声をかけられた。


「悠揚、君は正義の味方をどう思うかね」


後ろに振り返るといつの間にかアーチャーと名乗った出会って間もない男が炉の前に座っていた。


「……弱い人を助けて悪を懲らしめる人だと思います」


ちょっとだけ躊躇して当たり障り無い回答を溢す。


「ふむ。では、家族が人質に取られ仕方なく人を殺した男は悪か?」


「それは……わかりません」


「君の大切な人が死にそうな時、別の場所で多くの人が死にそうな状況に陥ってる。一方に行けばどちらかは助かる」


「何を……」


「君はどうする悠揚?どちらを助ける?」


思い浮かぶのは自身の半身である人、もう一方はあの剣を取った日に誓った帝国民を守るという誓い。

天秤に掛けたときどちらが重いかは決まり切っている。


「わ、私は。こ、国民のために……」


「その答えに偽りは無いか?後悔しないのか?大切な人が死んでしまうんだぞ?二度と会えなくなる」


ゆっくりとこちらの目を覗き込んできた彼の表情が見えない。

声だけを淡々と紡いでいる感じでまるで人形だ。

でも、彼の問いは自分がいつか突きつけられる選択の一つにすぎない。

政威大将軍としての道はあの日に決めた。心の整理もつけた。

恐れる必要は無い。

ハッキリと答えればいい。


「それでも、それでも私は国民を取るでしょう。それがこの国の長としての役目ですから。
 後悔はすると思います。でも、後悔を引きずって前には進めません。
 だから、前を見つめて私は進みます。
 それが修羅の道であろうとも」


「……そうか。その選択が間違いだったと君が後悔しない事を祈ろう」


「それで、あの、アーチャーさんここは?」


それに答えずアーチャーは燃え盛る炎に腕を突っ込み何かを引きずり出した。


「悠揚、君は強大な力を手に入れる事になる。それこそBETAを世界から駆逐できるほどの力を。
 だが、代償もまたとてつもなく大きい」


ゆっくりと立ち上がり、こちらに歩を進めてくる彼の手には宝飾された短刀が握られている。


「世界は息絶えようとしてる。だが、まだ死んではいない。
 守護者の概念を取り入れた世界は反撃する機会を手に入れたのだ。
 諸刃の剣であり、人類にとっては敵になるかもしれない力」


目の前に立ったアーチャーが悠揚に短刀を差し出した。


「力が欲しいか煌武院悠陽?」





感想掲示板








あとがき

今回は短め。

次回から謀略編。

基本帝国内ペースでいきます。

バトルというほどのものはないですね。
帝国内の話中心でいくからオリキャラを出さないといけないんですが、名前を考えるのが難しい。
なので、名前募集します。
有名人の名前は却下。
基本脇役キャラと悪代官的キャラの名前募集。話の中心に食い込むオリキャラは出しませんのであしからず。
[ 2013年10月16日 15:14 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 06

【世界】とはただそこにある“存在”であり、世界に現れる矛盾を嫌い、世界を脅かすものを粛正する。

その力は強大であり、【世界】という中で生活するすべての生物と繋がっている。

しかし、【世界】にも敵が現れた。

そう、自分の【世界】の外から来た存在。

BETAという敵が……






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第六話





「ああああああああああぁっ」


突然の叫びに元枢府議場で呆然と固まっていた者たちが一斉に声の主へと振り向く。

そこには自身の体を抱きしめ、尋常では考えられないほど苦しむ悠陽の姿があった。

将校たちは、あの米国が行った所業を悲しんでいると思った。何と言っても若干15歳の年若い女性であり日本の中心人物であり国を愛する殿下には耐えられない光景だからだ。

しかし、その悠陽を見た鎧衣は迅速動く。

なぜなら自分の隣にいた男が唐突に消え、殿下が苦しみ出したのだ。ならばあの絶叫はあの苦しみは【魔術】またはそれに類する物が関わっていると見ていい。


「殿下っ。誰か侍従長を呼べ! それから明星作戦総司令本部にいる紅蓮大将に伝えよ。殿下は過労によりお籠りになる」


すぐさま気絶してしまった悠陽の脈を測り、状態を調べる鎧衣。

だが、その行為は日本人からすればと不敬罪と取られてもおかしくはない。


「息はある。だが、脈が弱いな。 医師も呼べ。殿下はこのままお下がりになる。後の事はお任せする」


「何を勝手に決めている鎧衣!貴様、殿下の御御手を掴みおって何たる事か!」


「そうじゃ、そもそも貴様がここにいる事自体が不快でならん。殿下のお気に入りだからと言って調子に乗る出ないぞ!」


容態を見る鎧衣に横やりが入った。


「(く、それどころではないというのに……)橘中佐殿、葛城大佐失礼いたしました。しかし、今は殿下の大事にござります。ここは何卒お引きお願い致します」


「ならん、大事と言っても先の映像にショックを受けられただけに過ぎん。席で休ませておればよかろう」


「橘大佐、今の言い方はよろしくないですぞ。まぁ、あれだけの事でショックを受けるのは政威大将軍としてどうかと思いますがねぇ」


その言葉に同意するかのように一部の高官達が口ぐちに悠陽の事について話し出す。年若く権力のトップにいる快く思わないものは沢山いる。

だが、その間にもスクリーン上では生き残ったBETAとの戦闘が続いてるのだ。

先ほどのG弾の驚きはどこに消えたのか、今ではここぞとばかりに年若い女の子を責め立てるような事ばかり言いだす高官達に、最早怒りを通り越して呆れしか鎧衣には浮かばない。


「皆の者静まれ。鎧衣課長、殿下の事は頼む。
 誰か、担架を持ってまいれ。ここより殿下を運び出す」


ざわざわとなる議場を一人の男の声で静まる。

五摂家の1つである、斉御司喬久少将である。

知将と知られ、武も達者でありながら温和な性格で多くの一般兵から尊敬の念を受ける一方、その頑固な性格から一部の高官たちからは目の敵にされる事もあった。

絶対に悪を許さず、弱気ものを全力で助ける。不正は許さず困っているものを守る。

それが斉御司喬久であった。



「斉御司少将、ありがとうございます」


「構わん行け。皆のものは明星作戦に集中せよ。
 橘中佐と葛城大佐、貴公達は少々口が過ぎるぞ。慎め。他の者もな。
 今は目の前の事に集中せよ」



「「「はっ!」」」







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―――――殲滅

――――――殲滅

―――――――殲滅

――――――――殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅

殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅、殲滅


――――――――――――――――――――――――――――――――――殲滅


「……殲滅……」


虚ろな瞳の男の手がゆっくりと上がる。


「……殲滅……」


頭上に掲げた手を中心に、細くなってしまった龍脈から魔力が次々と集まり


「……殲滅……」


膨大な数の剣が曇天の空を覆い


「……殲滅……」


男の視線が固定され


「……殲滅……」


振り下ろされた。







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ビービーとなる飛来警報に味方の誤射かと回避行動を取ろうとした伊隅の目にそれが映った。

南西から次々と飛来する沢山の黒い何か。少なくてもG弾ではない。香月博士の説明ではG弾には特殊な物質が使われており大量生産は出来ないからだ。

その何かを詳しく確認しようとした時、世界に轟音が響き渡る。

次の瞬間、猛烈な爆風と共に機体が吹き飛ばされ、まるで洗濯機に入ったかのように伊隅の機体はシェイクされた。

何かにぶつかると同時に機体の動きが止まる。

なんとか意識をつなぎ止められたが、あまりの衝撃にショックで体に力が入らない。

外からは空気が震える轟音と機体に細かい何かが当たる音がしていた。

数分から数十分経っただろうか、節々が痛む体を何とか動かし、機体のチェックをすると推進剤タンクが破損し燃料が漏れていた。

右腕と右足に軽微の損傷を負っていたがあの衝撃では奇跡と言っていい。とりあえずは動ける。

網膜投影の電源が落ちているが再起動すれば大丈夫だろう。駄目なら副モニターを使えばいい。

それより今は現状の把握をしなくてはいけない。

震える腕で通信機のボタンを押し、今出せる大声で通信を繋ぐ。


「何処からの砲撃だっ! ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機、状況を!HQ!今の攻撃は何処からだ!」


『『『……』』』


「誰か状況説明を!」


誰も応答しない。

ちらりと全滅の二文字が浮かぶ。

少なくともあの衝撃は自分達の隊の近くで大型爆弾が爆発したはず。

全滅してもおかしくはない。


『……ちら、ヴァルキリー3風間。機体右腕と両足それと推進ユニットを破損。自力行動は不可能』


「!? 待ってろ今向かう」


『必要ありませんよ隊長……戦闘は終了しました。被害状況は不明。未確認ですが鳴海と中村と神野も死亡したと思われます。
 私の機体も駄目みたいですけどね』


「宗像か!無事でよかった。しかし、何を言って……」


『外に出てみれば分かります。BETAは消えました』


「……」


宗像が何を言っているのか伊隅には分からなかった。

G弾によって地上に出ていたBETAの殆どが殲滅されたからと言って、安全なんて事はない。

死体に紛れて戦車級や兵士級が生きている事が多々あり、それによって油断して死んだ兵は沢山いる。

戦場で機体から出るなんて自殺行為というのが常識なのだ。

もしかして、宗像は錯乱しているのか?と胸に浮かぶ。


「おまえ、今どこにいる」


『隊長機から40mといった所です。隣で……鳴海の機体が大破してます』


「外に出ているのか!?」


『ハッチが歪んで外が見れるんだから仕方がないですよ……』


ようやく伊隅は気づいた。

何時も飄々としている宗像の声が震えていたのだ。

まるで何かに脅えるように、弱々しい雛鳥のようにか細く。

そして伊隅は手動ハッチの取っ手に手をかけた。

躊躇いは一瞬。

一気に開く。







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寝台に寝かされた悠陽を宮医が慎重に診察をしている。

従者達は悠陽が倒れたという事で右往左往し、本来なら鎧衣が部屋に入る事は許されないのに誰も気づかない。


「まったく情報が少なすぎる。アーチャー君は家出してしまったのが原因なのか、G弾が何らかの影響を彼に与えたと見るべきなのか……これは難しい問題になってきたなぁ」


曲がりなりにも国の最高責任者である政威大将軍が、政務中それも国の命運を分ける重大な作戦の指揮をしている最中に失神。

これは対外的にも対内的にも状況を悪化させるには十分な事だ。

ただでさえ悠陽は年齢や妹君の事で内部に敵が多すぎる。今回の事は今後に響くだろう。

だが、それはまだいい。今後悠陽がその手腕を発揮して、そのような事を塗りつぶすような力を誇示すればいいのだから。

問題は今後もこういう事があった場合だ。

根本的な土台を崩しかねない。最悪、妹君を担ぎ出し、悠陽を葬り去る可能性が出てきた。

鎧衣はいくつものシミュレートを頭の中で計算し、今後どう動くかを計算し続ける。

しかし、完璧な答えは出ない。

アーチャーという謎のピースが解をいつも崩すから。


「早く戻って来てくれアーチャー君。せめて消えるのなら殿下の体調を元に戻してから成仏してくれ」


ちょっとだけ疲れが見えるその呟きを聞くものはおらず、すぐに虚空へ消えていった。






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第2防衛ライン


その閃光と爆風は戦場から40?近く離れている夕呼がいる司令指揮車でも感じる事ができた。

唐突にレーダーの8分の1を占める巨大な何かの群れが戦場にハイヴ目掛けて飛来し大爆発。

その速度は尋常ではなく、観測された大きさでは1mから2m前後の棒状のような物で熱源反応がほぼ0であり少なくとも飛行装置を付けていないという代物だった。

つまり、原始的に何処からか力づくで発射されたという事なのだ。

現在の科学力からすればそれはあまりにもおかしな事であり、運用方法を考えれば兵器としては欠陥品であると言わざる得ない。

何かがおかしいと夕呼は感じた。


「……発射された位置の確認と部隊の損耗を報告しなさい。米国にも確認を取りなさい。急いで!」


その声に静まり返っていたオペレーター達が慌てて動き出した。

急に慌ただしくなった中、夕呼は眉間にしわを寄せあらゆるパターンを脳裏に描き出す。


「米国の新兵器?いえ、少なくとも私にすべて隠し通せる様な事はないはずだし、あれだけの威力の物を内部で作るのは不可能なはず。米国以外?けど、あんな兵器を作れる余力を持った国は米国ぐらいしかいない。
 でも、それはありえない。いったい何が……」


何度も可能性を見出すが数瞬で否定し、新しい可能性を考える。

その繰り返しをしていると秘書のピアティフから報告が入った。


「香月博士。発射予測位置出ました。富士山頂と思われます。現在富士教導隊が観測並びに偵察に出動したそうです。
 米国からの回答は今のところありません」


「そう、損耗は?」


「指揮系統が混乱していて把握出来ません。ただでさえG弾での損耗が激しかったのに、さらに追い討ちをかけるようにあの爆発ですから相当な被害が出ているとも思われます」


「A−01は?」


「数名のバイタルサインが消えました。通信は回復していません」


「ハイブは?」


「無人偵察機の映像です」


そして映し出された光景に夕呼は身震いした。

それはどんな兵器を使っても出来ないと思われる光景だったからだ






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ハッチを開けた伊隅は目の前の光景に恐怖と震えが止まらなかった。

そこにはBETAが一匹もいなかった。死体も何もかも。

目に映るのは戦術機とその残骸と所々に小規模のクレーターが穿かれた大地。

本当にそれしかなかった。

まるで自分達の独り善がりの戦争にしか思えないほど、BETAの痕跡がない。


「ハイヴは……」


ぐるりと周囲を見渡すがどこにもあの巨大な建造物は見当たらない。

G弾で上部は消滅したが、まだ遠くからでも見える下部が残っていたはず。

爆風で吹き飛ばされたとしても精々数百メートル。

それなのに周囲には何もない。

呆然とする伊隅の視線の先を、爆風の微かな砂煙が風によってたなびいていた。


8月10日。

この日、明星作戦は終了した。正確には調査が終了し、完全に戦争が終わった日。

あの大爆発の後にハイヴに突入した部隊が見たのは、数体の弱り切ったBETAと耐えがたいほど残酷な捕虜達の姿。

そして、反応炉から見つかった大量のBETAの死体だった。







[ 2013年10月16日 15:14 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(1)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 05

Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race

通称BETA。

1958年。

火星にて存在が初めて確認され、正式に地球外生命体と認知する。

その後はこの生命体に接触しようと各国が技術競争を開始。

これにより爆発的に科学が発展していく。

1967年。

科学の発達により国際恒久月面基地が建設され、巨大な宇宙進出に伴う補給港及び整備港が開港。

同時にすでに各国で発足した航空宇宙軍が次々に国際恒久月面基地周辺に自国の基地建設を開始。

月面への大量の資材搬出が進む。

さらに月の見えざる面、所謂暗黒地帯への調査が開始される。

そして調査開始5日後。人類は初めて、サクロボスコクレーターにてBETAと思われる生命体と接触。

しかし数分後には調査チームは全滅。

その後、次々に月面にBETAが出現。

これにより第一次月面戦争勃発。双方に多大な被害をだし、事実上は勝利者なしの一時的な戦争終結となる。

しかし、被害規模が甚大であっため、人類は月から一部撤退を決定。

1968年。

BETAを脅威になりうる敵として、米軍が対BETA武器の開発着手。宇宙開発で培った技術を導入し、戦術機の試作にはいる。

その後は機械化歩兵装甲開発などにより月奪還作戦などを幾度も展開。

しかし、完全なBETA殲滅は叶わず。

1972年

アメリカで試作戦術機完成。各国に技術公表を行う。

これにより戦術機の技術競争が加速していく。

1973年

中国新疆ウイグル自治区喀什にBETAの着陸ユニットが落下。

史上初の地球上での戦闘が勃発。

当初は中国軍が優勢だったが、光線級の出現により航空戦力が無力化され、高速で飛翔する遠距離ミサイルでさえ撃墜されるようになり、事実上既存兵器では対処出来なくなる。

これと同時に人類は地球での戦闘に資源を集めるために、陥落寸前の月面基地を放棄。完全に月がBETAの支配地となる。


以後、新たな兵器や核の投入するも人類は敗退続きとなり全人類の人口の68%を消失する。



そして時は経って1995年8月8日

この日が新たな歴史の1ページの序章となる事を誰も知らない。

数年後に戻ってくる1人の男が知らない始まりの光。






Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第5話







明星作戦。

大東亜連合軍・米軍を主力とする国連軍が本州奪還作戦。

目標は数ヶ月前にBETAによって進行・壊滅された横浜奪還及びその場に形成中のBETAの巣の破壊。

人類史上初の多国籍大規模軍事作戦である。

8月5日に開始されたこの作戦は数多くの犠牲者を出しながらも、現在では地表に出てきたBETAの60%を撃破。

すでに一部の隊がハイブ攻略のために突入を始めていた。

しかし、時間がかかり過ぎているために部隊の損耗率が増加。次第に陣形は崩れつつあった。





『こちらハマー隊、ポイント4の光線級はすべて殲滅。しかし、部隊の損耗が激しい。一時後退する』


「了解。速やかに第二補給ポイントまで後退せよ。オスカー隊が代わりに向かう」


『了解した』


目まぐるしく変わっていくスクリーンの光点。

いずれも中心に向かい、戻ってくるもしくは中心で光点が消えるを繰り返していた。

最早作戦ではない。砂糖を見つけた蟻のように突撃しているような状態だ。



アーチャーが召喚されて5日目。

すでにこの世界の情勢は紅蓮の話と資料などからアーチャーの頭にはインプットされている。

そして現在行われている明星作戦についても。


「ここ数日BETAというのを見てきたが、人類を滅ぼすという意味がよく分かるな。確かにこれだけの数に戦闘力ではやすやすと勝てまい」


そう呟くアーチャーの目の前のスクリーンには、次々に砲撃によって駆逐されていくBETAの姿が映し出されていた。

そして大量のBETAに飲み込まれていく戦術機という兵器の姿も。


「ま、最優先の我らが人類の敵だよ」


隣の鎧衣が相槌を打つ。


「最優先……という事はその後は国か……どこの世界も最後は己らの欲だな」


「ふふん、アーチャー君。欲がないと人間は生きていけないよ。人間の社会生活は欲で動いているんだからね」


「分かっているさ。ところでお前はここにいていいのか? 忙しいはずでは?」


「戦時中は情報規制が厳しくてね。情報部は半休になるんだよ。渡航制限もあるからね。
 それに本作戦は多国籍軍だ。情報漏えいを心配してどこもピリピリしていて仕事どころじゃない」


肩を竦めながら答える鎧衣。いつも通りのスーツ姿であるため、斯衛の制服を着ているこの部屋にいる人間達の中で浮いている。

そのため肩を竦める動作が滑稽に見える。

もちろんアーチャーも召喚された時の服装、赤い外套に黒の上下なのだが、赤い外套で体を覆っているので赤の斯衛服に見えなくもないためそこまで浮いていない。


「それで、暇つぶしか?」


「そうとも言うけど、私がウロウロしていると目をつけられて何を言われるか分からないからね。
 殿下のそばにいた方が楽なんだ」


「フッ、嫌われ者は大変だな。まぁ、お前が傍にいれば私も姿を現しやすい」


「それはそれは」


ニヤリと笑いながら目深に帽子を被る鎧衣。

将校の1人がこちらを注視していたのだ。


アーチャーと鎧衣がいるのは元枢府内の議場兼司令室。

政威大将軍である悠陽の仕事場の一つみたいな所である。

ここには現在さまざまな明星作戦の情報が集められており、その報告を悠陽が逐一聞いているのだ。

その悠陽の顔には濃い疲労が浮かび上がっている。

明星作戦開始から3日目。ほぼ不眠不休で働いているのだから当たり前だ。


「そろそろ、悠陽も休ませないと体が持たんぞ」


その様子にアーチャーは諦めが混じった声で呟く。


「休まないと思うよ僕は。殿下には責任という圧力と責任を背負おうとする意思があるから。
 正式に政威大将軍にならせられてまだ数日しか経っていないのに、殿下には重すぎる責務だけどね。
 まぁ、どうしてもというなら君が言えばいいじゃないか」


「私があの場に近づけられるわけないだろ。警戒されている」


「それを言うなら私もだよ。あそこにふんぞり返ってる橘大佐なんてさっきから私と君の事を調べるように何度も指示を出している。
 まったく小物だねぇ」


「よく分かるな」


「これでも視力は良くてね。見たくもない男の唇を眺めてしまうんだよ。
 どうせなら殿下の瑞々しい唇を拝見していたいのだが、残念ながらあの様子ではこちらから見えない」


「ほぉ、読唇術か」


侮れないなこの男と改めて思うアーチャー。

読唇術というのは読んで字の如し。唇の動きから相手が何を話しているのかを探る方法の事だ。

だが、これには相当の努力と読解力が必要であり易々とは使えない。

悠陽が手元に置くのも納得が出来る技術である。


「それにしてもこのままでは最終的に押されるな」


「どうかな。どこぞの国が最終兵器を持っているからねぇ」


そう呟く鎧衣。

視線の先のスクリーンからまた一つ光点が消えた。









「ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機へ、予定ポイントの確保に時間がかかり過ぎている。なんとしてもここは確保しろっ」

『了解っ』


伊隅の檄に全員が返答を返す。

が、その声には出撃時とは比べ物にならないくらい疲弊していた。


「くっ、まずいな。補給コンテナはあるが機体状況に衛士の疲弊が出始めたか……」

その呟きにも焦りと疲弊が混じり合っていた。

香月夕呼博士直属の特殊任務部隊【A-01】、通称伊隅・ヴァルキリーズの隊長である伊隅みちるは隊の状況確認する。

元々は連隊規模だったものが特殊任務で伊隅の隊しか残っておらず、そのため作戦行動が厳しい物になっているのだ。

そのため既に1名がBETAによって戦死、1名が機体中破のため途中で後退、現在このポイントにいる11名のメンバー達の機体は小破もしくは損耗している。

あまり無理が出来ない状況になりつつあった。


「せめて支援砲撃があれば……」


存在自体が秘匿されているA-01部隊に支援砲撃は最初の一斉砲撃以外はない。

だからこそ、エリートと言われるほどの戦術機の腕が必要なのだ。

しかし、いくら腕が良くても圧倒的な物量で攻めてくるBETAには敵わない時が必ずある。

戦術機も万能ではない。動けば動くほど機械には負荷が加わり磨耗していくのだ。

最低3日に1度は整備しないと動きが悪くなってしまう。

明星作戦が開始されて3日たって整備などせず、ほぼずっと戦場にいる状態で、さらに最前線部隊であるA-01部隊の戦術機の稼働時間は異常と言っていいほど長い。

武器や燃料は交換できるが機体の交換は出来ない。


「……っ!HQ、こちらヴァルキリー1。支援砲撃もしくは支援部隊を送れないのか? もう、限界が近い」


『伊隅、状況を説明しなさい』


「香月博士!?どうしてそこに……」


伊隅は突然聞こえてきた香月夕呼の声に驚いた。

少なくとも自分と通信してるHQは第2防衛ライン状にある。つまり後方と言っても危険地帯だ。

本来なら第5防衛ライン。つまり、司令本部にいるはずの人間である。


『どうでもいいでしょそんな事。で、状況は』


「失礼致しました。現在最優先確保ポイントを攻略中です。
 しかし、部隊の損耗が激し過ぎます。
 機体の不調も出始めており、何かしらの支援を要請します」


『……予備ポイントは?』


「すでに確保してあります」


『予備ポイントまで下がっていいわ。米軍が“アレ”を使うわ。下がらないと死ぬわよ』


「まさか!? 帝国の許可なくですか!?」


『そうよ。分かったなら予備ポイントまで下がりなさい。これは命令よ』


「り、了解しました」


戦場で動揺するなと自分に言い聞かせ、一度だけ大きく息を吸うと各機に通信を繋ぐ。

一瞬、自分の隊に組み込まれたたった一人の男である鳴海の顔が思い浮ぶ。

彼は戦場であるこの地域の出身者だ。

その彼には残酷な事を言わなければならない。


「ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ各機へ。香月博士の最優先命令だ。
 戦線を維持しつつ予備ポイントまで後退する」


『何でですか隊長!もう少しでここは落とせる!俺たちの町を取り戻せるのに!』


「(…やはり鳴海か)論議をするつもりはない。
 ……もうすぐここは消滅する」


『まさか……』


「各機、命令は聞こえたな。後退を開始する。
 宗像は先頭で道を開け。その後に各自で撃破しつつ後退していく。風間は隊全体の支援攻撃。
 殿は鳴海と私で行く」


『待ってください。米軍がG弾を、G弾を帝国に落とすというのですか!?
 俺の、俺の町がっ』


「議論はしないといった。これは命令だ鳴海少尉。
 後退開始する。復唱しろっ!」


『ちくしょうっ……鳴海少尉、後退を開始します』






8月8日 14:16

それは唐突だった。

特殊弾頭に包まれたG弾を内包したミサイルが相模湾沿岸米軍艦から2発発射。

迎撃しようとする光線級のレーザーをその身に受けつつも、1発は打ち落とされるが残りの一発がミサイルの速度と特殊弾頭の強固な守りで突破。

遂にミサイル内部のG弾が横浜ハイブ上空200m地点で炸裂した。

それは逃げ遅れた一部の国連及び大東亜連合軍を巻き込み、モニュメントと呼ばれるハイブ地表構造物の一部を破壊した。

その5分後に3発目が発射されハイブ手前500m地点で炸裂し、モニュメントの上部を完全に破壊し地表にいたBETAを一掃。

奇怪な構造だったモニュメントが下部だけを残して消滅した事とBETAを一掃した兵器に戦場の兵士達に興奮した。

これなら勝てると。

逆転の光を見た兵士達は、次々に砂塵が舞う荒野と化した台地を踏みしめハイブへ進んで行く。

だが、帝国軍や一部の国連軍は呆然としていた。

圧倒的破壊力を持った凶悪な兵器を事前報告も十分な撤退勧告もせずに、行われたその一撃に怒りを持たない訳がない。

戦場に出ている兵士達は興奮しているため気づいていないのだ。

自分達の仲間が軍によって無駄に散らせられた事を。日本帝国という国家の領土に向けて行われた所業に。


そして3発目のG弾の炸裂と共に、呆然と固まっていた元枢府議場内に一人のまだ若い女の絶叫が響き渡り、一人の男が跡形もなく消え去った。





あとがき

とりあえず次回で明星編終了。
遅々として進まなくて申し訳ない。
でも、次回が物語の核心の一つとなる重要なシーンになります。

ちょっと最近はオルタの物語の記憶が無くなってきたので書き難くなってきた。
それが心配です。
他の人のSS見ながら記憶を掘り起こしている次第であります。
だから一部の方だけに公開している質問掲示板に久しぶりに質問を出す日が近いかもしれません。
その時はよろしくお願いします。

それでは次回をお楽しみにw
明星編最終話です。



[ 2013年10月16日 15:09 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(1)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 04

何百というライトに照らし出された光景にアーチャーは内心驚愕した。

事前に情報として紅蓮から聞いてはいたが、この世界の科学技術は自分の中では異常と言っていいほど進んでいたのだから。





Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第4話





足が止まったアーチャーへ月詠が振り返り尋ねる。


「どうしましたか?」


少し不審げにこちらを見る月詠にアーチャーはハッとすると冷静を装う。


「いや、なんでもない。少々ライトに目が眩んだだけだ。
 それにしてもすごい光景だなこれは……」


アーチャーの目の前に広がるのは、巨大な倉庫に収まる二百機はあるだろうと思われる人型の機械。

紅蓮の話に出てきた戦術機というこの世界では既に当たり前の兵器だそうだ。

しかし、アーチャーにとっては当たり前どころか驚愕の一言しかでてこない。

長年戦場を渡り歩いてきたため、ある程度の機械兵器の構造は知っている。それどころか解析して簡単な修理さえした事があった。

だが、今目の前にある兵器は自分の知識の中では見た事もない人型のロボットだ。完全に自分の中の知識の上をいっている。

戦場を渡り歩いているとき技術者からチラリと聞いたが、人型兵器は自重の何倍をも支えることが出来る事と素早い動きができる足がなくては兵器にならないと言っていた。

つまりこの世界では最低でもそれだけの技術があるという事だ。

魔術が発達しなかったため、急激に科学技術が進んだという可能性もあるのだろうかと思った。


「アーチャー殿?」


「……近くで見てもいいだろうか?」


いつの間にかポロリと自分の口から零れた言葉に驚く。

自分の中に子供のような好奇心が残っていた事にだ。


「え? あ、ここにある戦術機は明星作戦に出撃するものなので、近くでお見せする事は出来ません。
 現在は整備中なので申し訳ない」


「いや、こちらこそ唐突に変なことを言ってすまないな。次に行こうか」


「あの、練習機ならあちらにありますけど」


そう言って月詠が指差す方には演習場と書かれたドアがあった。





紅蓮は書類を書くキーを打つのをいつの間にか止め、一人考え事をしていた。

脳裏に描くのはアーチャーと名乗る男。

少なくともこの地位に就くまで、自分はそれなりの修羅場を潜り抜けてきたと紅蓮は思っている。

しかし、その中で培ってきたものを覆すあの男はなんなのだろうか。

あの男が話した荒唐無稽な話の数々。余裕で自分を倒す戦闘力に、反則とも言える技術、いや魔術という力を持っている。

話だけなら何を馬鹿なと一笑するだろう。

だが、あっさりとあの男はあり得ない現象を行使した。

紅蓮は種無し手品を見せられた気分だ。どうやったら目の前で人が消えると言うのだ。

間違いなくあの力は本物だった。


「危険なのかもしれん……少なくとも現時点であの男の力は未知数。あれ以上の力を使えるのなら戦術機で殲滅など不可能だな」


ポツリと自分の執務室に独り言が木霊する。

静まりかえる部屋で紅蓮は悩み続けた。






「なるほど……」


撃震とかいう戦術機の足元でアーチャーは納得した。

簡単に解析しただけだが、骨格フレームは自分が知らない未知の素材で出来ており、各関節部には衝撃を吸収するらしい機構が見受けられる。

外装部分も何十にも施されてて、中には未知の素材もあった。

これだけの大きな機械を動かすのだから、中枢部はどうなっているかと思えば意外に小型化されていた。

つまり情報処理能力も高いと言うことだろう。


「まったく、とんでもない世界だな」


そう呟きながらアーチャー頭を掻く。

一体一体が並みのサーヴァントと同等ぐらいの火力なのだ。

と言っても戦闘になれば的が小さいサーヴァントの方が圧倒的な速度で動けるのだから、純粋な1対1戦闘を行えばサーヴァントが強いと言える。

しかし、数が数だ。集団戦闘になればあのセイバーでさえ太刀打ちは難しいだろう。宝具を使ったとしても回数制限がある。


「BETAとやらはそれ以上に強いという事か圧倒的に数が多いという事か。
 滅びに向かっているというのもこれで納得できるな。こんな兵器を開発しても、いまだに勝利できないのだから。
 しかし、世界という形を保っているのに世界から干渉がない、守護者が現れないというのはいったい……」


そんなブツブツ呟くアーチャーの後ろ姿を月詠は不思議そうに眺めている。

帝国内では現在は撃震より、実践配備が進んでいる第三世代主力戦術機不知火の方が圧倒的に強いと言われている。

もちろん撃震が弱いと言うわけではないのだがスペック差が大きいのだ。

そんな旧式の機体を撫でながら感心されても、と月詠は思った。

大体彼は情報部出身のはずだ。自分が知らない最新鋭の戦術機を知っていもおかしくないはずなのに……


「あの、良かったら搭乗してみますか?
 戦術気乗りが同伴すれば許可が出ますが?」


「いや、遠慮しておこう。私は造る者で操る者ではないからな」


「造る者?技術者でもしていたんですか?」


「技術者じゃない。私は贋作者だよ。
 さて、とりあえず理解した。次は資料室か簡単に情報を調べれる場所に案内してくれ。調べ物があるから場所を知っておかなかなくては」


誤魔化すように話題を変え、さっさっと歩き出すアーチャーを月詠は分からないといった表情をしながら追いかける。






「香月博士、A-01部隊すべて準備完了。各ポイントで待機しているとの事です」


「ありがとうピアティフ。作戦と同時に各指揮官の指示に従えと伝えて」


「はい」


スクリーンに映る光点の位置を確認しながら白衣の女、香月夕呼は指示を出す。

その指示を横で補佐をするイリーナ・ピアティフが各小隊に連絡をしていった。


「香月博士、米軍から通信来ました。予定通り明後日、夜明けと共に進軍開始。各自所定の位置より作戦通りに進軍せよとの事です」


「帝国軍は?」


「明日には配備完了だそうです」


「ぎりぎりまで粘るわね。まぁ、しょうがないけどね」


ため息を吐きながら夕呼は頭を軽く掻いた。

国連軍主導、いや実質は米軍主導の下の今回の作戦に、帝国軍側は参加表明をしているとはいえ、反発からの渋りは苛烈だ。

もともと仲が悪い事もあるが、自分達の国にG弾という大量破壊兵器を使うのだから仕方がない。

だが、それで作戦に不都合が出来て損害が大きくなっては意味がない。

自分が立てた計画の一部なのだ。一度しかないチャンスを意固地なプライドで失敗されたら堪ったものではない。

もう一度、夕呼は大きくため息をつく。


「お疲れのようですね香月博士」


「ラダビノッド司令……」


「仕方がないですよ今回の事は。アメリカもごり押しで計画に介入してくるほど焦っているんです。双方に軋轢が生まれないほうがおかしい」


「分かってはいるんですけどね。学者な私には馬鹿な縄張り争いにしか見えません。このままでは、未来の縄張りなんてあそこにいるBETA共がぶんどるんですから」


「確かに。けれど人間は一筋縄ではいかない生き物です。そう易々とプライドは捨てれないですよ」


「……分かってます」


小さく答えながら、3度目のため息を夕呼は吐いた。





「大体の場所は案内しましたけど、他に行きたい場所はありますか?」


月詠の案内で、一部は建物の用途を教えてもらうだけに留めてアーチャーは時間を短縮した。今は時間が惜しい。

最初は、いくつかの外部へ出るルートを無意識に構築していたが、考えてみれば自分は姿を消せるという強みがあったと思い出し建物の用途の説明だけを聞いて後で確認だけいすればいい。

敷地面積、遮蔽物の有無、情報が集まる場所、万が一の為の悠陽の寝所を中心とした狙撃ポイント構築、一番高い建物、方位などを重点的に確認しておく。

あとは時間がある時にでも確認しておけば、この世界で特に脅威になるような事はないだろう。

となると次はこの世界の情勢などの情報が必要になる。

多少は紅蓮に聞いたが、今度は詳細に知る必要がある。情報部と名乗っているので、事情を知らない月詠には聞けない。

先ほど案内された資料室で探せばいいのだが、自分の存在が知れ渡ってない現状でそういう事は出来ない。

紅蓮の元へ戻って聞くのがベストだろう。


「いや、十分だ。大体は把握した。後は自分で歩いて把握する」


「そうですか。それでは私は明星作戦の準備があるのでこれで失礼します」


「分かった。私は紅蓮の元へ戻る。案内ありがとう月詠少尉」


にっこりと笑いかけながらアーチャーが手を差し出す。

お礼の握手というやつだ。

海外経験で身についた社交辞令の一つで無意識の行動だった。


「い、いえ、こちらこそ失礼な真似をして申し訳ありませんでした」


そう言いながらおっかなびっくりといった感じで月詠はアーチャーの無骨な手を握った。


「いや、助かったよ。感謝する。それではな」

    
一度キュと月詠の手を握り返して手を離し、紅蓮の部屋へ足を向ける。


「あ……」


「ん? どうした?」


「い、いえ。それではまたどこかで」


もう少し貴方の温かさを感じたかったなどと口が裂けても言えない。というかそんなロマンチック思考が浮かび上がったこと自体が恥ずかしい。

自分でも分かるほど真っ赤になった顔を伏せ気味に、月詠はアーチャーに敬礼をした。


「フ……」


そのあたふた様子にちょっと笑いながら、アーチャーは月詠の頭に手を置いて言う。


「またな。月詠少尉」


さらりと撫でるとアーチャーは紅蓮の元へ戻っていった。





かちゃりと電話の受話器を紅蓮は置く。

相手は鎧衣だ。

内容はアーチャーと名乗る者について。

明星作戦前に情報部を動かすのは気が引けたが、それでも自分の勘があの男は注意しろと告げている。

だから、もう一度あの男について綿密な調査を鎧衣主導の下行わせた。鎧衣ならすぐにそのぐらいの情報なら集めれる能力があるからだ。

あの男の目撃情報からロンドンについての再調査。また世界中の超常現象の目撃証言の再確認や話に出てきた町の名前、偽名からの調査など。

が、結果はいずれも不明。

なんの情報も出てこなかった。


「手詰まりだな……」


「何がだ?」


「うお!?」


突然声をかけられて驚く紅蓮。自分しかいない執務室で、それも気配がない状態で声をかけられたのだ。

いくら紅蓮が優れた武人だとしても驚くなというのは無理な話だ。

振り向くとアーチャーが腕を組んで立っていた。


「……今度からは扉から入って来い。貴様は礼儀をしらんのか?」


「それは失礼した。だが、一般職員に私の存在が浸透してなかったから、お前の部屋に堂々と来るのが難しくてな。今回は許してくれ」


「むぅ、仕方がない。明日には全員に通達しておく。今回だけは特別だぞ」


「すまんな。で、何が手詰まりなのだ?」


分かってますよといった顔をしながら聞いてくるアーチャーに、紅蓮のコメカミが引き攣る。


「くそっ、子供じみたいびり方だな貴様は。
 ……お前の再調査だ。理由は言わんでも察しろ」


「当然の行為だな。逆にそういう事をしなかったら貴様の程度が知れているところだった」


「いちいち貴様は嫌味を言うのだな。私がそんなに気に入らんのか?」


そう返す紅蓮の発言にアーチャーは目を丸くし、心底驚いたという顔をしながらポツリとこぼす。


「……褒めたのだが伝わってなかったか?」


「伝わるか馬鹿者!」


そうして、なんだかんだと言い合いながら、アーチャーはこの世界の現状を事細かに改めて紅蓮に尋ねていく。

そのおかげで紅蓮は溜まった報告書を一晩かけて読まなくてはいけなくなり、翌日珍しく疲れた様子の紅蓮に書記官が目を丸くしたのだった。


前へ   次へ


あとがき


次回明星作戦へ。

なんか前回と同じような内容になりましたが、戦術機とはなにか?などの説明してなかったなと思って、この話を挟みました。
じゃないと戦力がよく分からないですからね。
サーヴァントの強さは、きのこ先生の発言『戦闘機ぐらいの強さ』を元に、実際にはこうなるだろうと予想してみた。
例えセイバーと戦術機が戦ったとしても、魔力は無限じゃないから最後は物量が勝つだろうと予測。
という感じで進めさせてもらいます。
と言っても、多少はご都合主義を入れないといけませんがね。
[ 2013年10月16日 15:07 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 03

召喚されて二日目、アーチャーは自分と同じような赤い服を纏った女性に、刃を突きつけられていた。





Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第3話





色々と事情を説明した後、悠陽と鎧衣・紅蓮の三人とアーチャーは今後のことを話し合った。

問題になったのがアーチャーの身分について。

身分不詳のまま悠陽の側にいると色々と面倒なことになると言うわけだ。

最初は紅蓮と悠陽が、とりあえずアーチャーを斯衛軍に入隊させて、階級は大尉で悠陽のお側就きに捏造しようと案を出した。

しかし、この案には鎧衣が難癖をつけた。いわく、突然殿下に誰も知らない男がお側就きになるのは怪しいのではないかと。

この鎧衣の発言にはアーチャーも同意し、階級があると色々と制限がつけられるから必要ないと悠陽に言った。

その結果、悠陽の側にいるときはなるべく霊体化でいる事。

どうしても霊体化でいることが出来ない状況の場合は、鎧衣の部下と言う事になり、万が一のために悠陽から許可証を渡された。

許可証はこの者には最大限の便宜を図ることと言う物だ。

もちろんこんな許可証は普通なら怪しさ大爆発だ。だが、その下に帝国情報省外務二課 課長 鎧衣左近と入れれば大丈夫なのだそうだ。

木の葉を隠すには森の中。怪しい奴を隠すには怪しい奴の下にということだ。


「なるほど、鎧衣は怪しい人物と言う事で周囲には認知されていると言うことか……そして私はその怪しい奴の部下と言うわけか」


「なんでだろうねぇ。こんなにも一生懸命に働いている人間が怪しまれるなんて」


「ふん、貴様はどこで何をしてるか分かったもんじゃないからな」


「鎧衣は世界中を飛び回っていますからね。仕方がありません。
 でも、これでアーチャーさんが怪しまれたとしても、言い訳が出来ますね」


こうしてアーチャーの身分は一応決まった。書類上の名前はさすがにアーチャーと言うわけにはいかないので『藤村切嗣』という事にしておく。


「藤村切嗣ですか…お知り合いのお名前ですか?」


「遠い記憶の人たちの名前を借りた。まぁ問題ないだろう。おそらくこの世界には同姓同名はいないだろうからな」


「じゃあこの名前で私の部下と言う事で登録しておくよ。何かあったら此処に連絡すればいい。2割の確立で私が捕まる」


そう言うと鎧衣は立ち上がり、帰り支度を始めた。


「では、鎧衣。後のことは頼みました。くれぐれも彼のことが外部に流れないようにしてください」


「心得ています殿下。それでは仕事がありますので私はこれで」


「待て鎧衣」


立ち去ろうとする鎧衣にアーチャーが声をかけた。


「ん?なんだいアーチャー君」


「色々世話になるからな。これはほんのお礼だ」


そう言うとアーチャーは鎧衣の帽子を手に取った。黒鍵によって穴を空けられたあの帽子だ。


「――――投影、開始」

アーチャーが穴の上に手をかざし、なでるように手を動かすと綺麗に穴が塞がっていた。


「ほぉ、魔術と言うのはこんなことも出来るのか」


鎧衣は驚きの声を上げた。アーチャーによって空けられた帽子の穴が一瞬にして復元したのだから。


「ふん、大事なものなのだろう」


「ありがたく受け取っておくよ。それでは殿下、またいつか」


そう言うと今度こそ鎧衣は執務室から出て行った。

パタンと扉が閉まるのを確認してからアーチャーは悠陽の方に向き直った。


「……悠陽。口が開きっぱなしだぞ。紅蓮お前もだ」


ポカーンとした表情で悠陽と紅蓮がこちらを見ていた。


「ああ、すみません。……その、魔術と言うのはあんな事も出来るんですね」


「まぁな。基本的な魔術のひとつだ」


「あれで基本的などと言うのか。まったく魔術というのは面妖なもんだな」


「と言っても、今の私があれくらいの魔術を使用しただけ、結構魔力を使ってしまうのだがな」


「そうなのですか?ずいぶんあっさりと治してたように見えましたけど」


「聖杯の加護があれば服を一から作ることも出来るぞ。少々負担がかかるがな」


「はぁ、改めて魔術の凄さが分かりました」


「そうか分かったのなら、そろそろ君は休みたまえ。ただでさえ私を召喚したばかりなのだ。少々寝たぐらいでは疲れは取れんぞ。
 今日はもう休んだほうがいい」


「ですがまだ政務が……」


「殿下、あとの事は私にお任せください。お顔色がすぐれないようですし、もしものことがあれば大変です。今日は休んでください」


そう言うと紅蓮は侍女を呼び出し、殿下を休ませるように言った。

悠陽は大丈夫だと言ったが流石に召喚してすぐに体の調子が良くなるわけがない。

たしかによく見れば顔色があまりよくない。

だから、ここは無理にでも休ませたほうがいいのだ。


「それでは今日は休ませていただきます。アーチャーさんすみません。
 紅蓮も怪我しているのにすみません」

「いえ、私のことはお気になさらず。それではごゆるりとお休みください」


悠陽が侍女と一緒に執務室から出て行った。

それを確認して、紅蓮がアーチャーに切り出した。


「それで貴様は今からどうする?私はいまから雑務をこなさなければいけない」


「そうだな。少々その辺を見て回ろう。戦場での基本は地形を把握することだからな。
 それに、ある程度ここにいる者たちに顔を覚えさせておかなければ、いざと言うときに動きづらいからな」


「わかった。案内の者をつけよう。一人でその辺をうろうろさせると流石に怪しいからな」


「そうだな」


「しばし待て」


そう言うと紅蓮は机の上の電話をとると何処かにかけた。

しばらくするとこんこんと執務室のドアが叩かれた。


「入れ」


ドアから入ってきたのは赤い服を纏った20代くらいの女性だった。


「失礼します! 月詠真那少尉参りました」


「ご苦労。休め」


「はっ」


びしっと背筋を伸ばし、足を少し開いて後ろで腕を組んで月詠真那と名乗った女は姿勢を整える。

切れ長の目に、スラリとした女性としては長身な体型。そして艶やかな長い髪が似合う赤い服。

雰囲気は何処となく優しい雌ヒョウと言ったところだろうか。

そんな感じの女性だ。



「月詠少尉、仕事中すまんがこの者を殿を案内してやってくれ。大体の場所教えてやればいい。それとこの者は殿下の客人だくれぐれも粗相のないように」


「はっ!ではこちらへどうぞ……あの、お名前は」


「アーチャーだ。よろしく頼む月詠少尉」


「アーチャー? あ、いえ失礼しました!ではこちらへ」


そう言うとドアを開け執務室からでる。彼女に続きアーチャーも部屋から出ようとすると、後ろから紅蓮に声をかけられた。


「アーチャー殿。彼女は私の愛弟子だからあまり意地が悪いことをするなよ」


「なんだそれは。私がいつ意地が悪いことをした」


「貴様の喋り方は意地が悪いのだ」


「ふん、私は事実を言っているのだ。それに私は女性にはやさしい紳士なのでな。そんなことはしないさ」


「どうだかな、ほら行け。待ってるぞ」


そう言うと紅蓮はシッシッと手を振り執務室からアーチャーを追い出す。

そのぞんざいな扱いにムッとしながら、アーチャーは部屋から出て月詠の前に立った。


「では、改めてよろしく頼む。あー、月詠少尉と呼んだほうがいいのか?」


「それで構いません。では私についてきて下さい。アーチャー殿」


「あー、そんな硬くならなくていい。私のことは普通にアーチャーと呼べばいいし、言葉も丁寧じゃなくていい」


「しかし、殿下の客人にそのような扱いは……」


「べつにかまわんさ。客人と言ってもたいした者ではない」


「そうですか…あの、差し支えなければどこから来たのか教えていただけないでしょうか?」


「私は情報省から来た。帝国情報省外務二課 鎧衣左近の部下だ」


予定しておいた設定をアーチャーは月詠に話した。つまり自分は鎧衣の部下で情報のやり取りのために今日こちらに来たということを。


「あの鎧衣左近の部下だと。そうか、明星作戦のため……」


鎧衣の部下と言うことを話すと突然、月詠の態度が豹変した。

目を細め、懐に手をやりながら睨みつける。

ピリピリと周囲の空気が震えるのをアーチャーは肌に感じた。


「貴様の所属を言ってみろ。階級は?情報省の何処に勤務している?仕事の内容は?」


「……別にかしこまらなくていいと言ったのは私だが、流石にそのような尋問行為には目をつぶれんぞ」


「だまれ!貴様がパイプになって米国に情報を流すのだろう!殿下を騙して何を企む」


何故だかエキサイトする月詠を横目に見ながら、アーチャーは鎧衣がどういう人物なのか分かったような気がして、ため息をついた。

いろいろ海外を飛び回っていると悠陽が言っていたのだから、各国に独自の情報網を引いているか、極秘の交渉係という所だろう。

普段から勘が鋭いところに巧みな話術。それに恐らくわざとだろうが、妙な言動に行動。

改めて鎧衣が、周囲からどう思われているかというのがわかった気がするアーチャーだった。


「所属は言えん。大体私は悠陽の客人と言うことなのだがな。そのような事を言われる筋合いはない」


「悠陽? 貴様はやはり米国のものか。殿下のことを名で呼ぶなど恐れ多い。日本人なら誰でもそうだ!」


そう言うと懐から短刀を出すとアーチャーの首筋に刃を添える。

まるで一歩でも動けば殺すと言った表情で。


「興奮しているところ悪いが、殺気丸出しで私に刃を向けないでくれ。これでも戦場暮らしが長くてな。あまり良い気分ではない。
 それに君は私や鎧衣がスパイだと思っているようだが、それは何か証拠があってのことか?」


「そ、それはそうだが……だが、明星作戦の間際に鎧衣の部下がここに居るのは怪しい。
 鎧衣はスパイ疑惑をかけられている男だ。その部下がこんな時期に来るなど米国からのスパイとしか思えん」


「明星作戦とやらはなんだ。私は情報省に入ったばかりで、情報をそこまで知っているわけではないんだよ」


「明星作戦を知らない? そんな馬鹿なことがあるか。帝国衛士の中で知らないものはいないぞ」


「そうなのか。だが、先ほども言ったと思うが私は戦場に長くいたもんでね。早々は情報が入ってこなかった。この国に来たのもごく最近だ。
 だからその明星作戦とやらは知らない。よければ逆に教えてもらいたいのだが」


「……貴様、本当に日本人なのか?その格好にその髪。肌の色も目の色も日本人には見えんのだが……」


「生粋の日本人だ。日本語に訛りはないだろう。肌の色とかは戦場暮らしをしているうちにこうなった。
 いろいろな戦場を渡り歩いていれば、こうなっても仕方がない」


アーチャーが月詠に話したことは半分嘘で半分本当の事だ。

肌の色に髪の色・目の色。これらはすべて魔術の使いすぎによる副作用だ。

そしてその魔術を最も使ったのが戦場だった。

それこそ生前はあらゆる戦場を渡り歩いた。そこが地獄と知っていても、自分からそこへ向かって行ったのだ。

空からは爆弾が降り注ぎ、地上は銃弾と地雷。誰かの叫び声に血の匂い。絶え間なく音が響き、何かが焼ける匂いが漂う。

一瞬の判断が間違えれば死んでしまう世界。

そんなところを渡り歩けば、魔術を使わなくとも人は変わってしまう。

性格から姿かたちまで。

だからアーチャーは昔の自分を捨てたのだ。残したのはたった一つの理想だけ。

その理想を胸に、冷静に冷徹にすべての人を救うために戦い続けた。

そして最後は……


「すみません、アーチャー殿。嫌なことを思い出させてしまったようだ」


「む、何を謝っているのだ?」


「……その、どこか苦しそうな顔をしていたので、私が嫌なことを思い出させてしまったかと思って……」


先ほどと違い、急に大人しくなる月詠少尉に


「ふふふふ、君は優しい娘だな。だが大丈夫だ。何処までもまっすぐな男のお陰で答えは得られたからな。
 今の私に後悔はない。君が気にする必要はないさ。
 ……それより私はスパイだったのではないのかな月詠少尉?」


ぐりぐりと月詠の頭を撫でながら、アーチャーはからかう様に月詠に言った。


「撫でるな!私を子ども扱いするな。歳はあまり変わらないではないか!
 私は、べ、べつにあなたがスパイとは言っていない。鎧衣がスパイだから、その、あなたが……」


素に戻ってあたふたするする月詠に、アーチャーは笑いながら言った。


「くっくくく。まぁ、鎧衣は変人だからな。スパイの疑いをかけられても仕方がない。
 だが、本質は先を読む勘が鋭い男だ。この国の未来を考えて行動しているさ。
 少なくともあの男は悠陽を裏切るということはしないだろう。
 私はそう思っている」


「そうですか……」


アーチャーの話を聞いた月詠は顔を下に向け、少し黙ると勢いよく顔を上げ、こちらに向かって今度は勢いよく頭を下げた。


「あなたの事をスパイなどと疑ってしまい、大変申し訳ありませんでした。
 この事についてはいかなる罰も受けます。
 本当に申し訳ありませんでした」


周囲に響くほどの腹の底から出した大声で謝りだした。

それを見ながらアーチャーはまっすぐな娘だな改めて思った。


「気にしなくていい。勘違いされても仕方がない。疑いが晴れたならそれでいいさ」


「ですが……」


「それよりそろそろ案内を頼む。早くしないと日が暮れるぞ」


「あ、申し訳ない。では、私の後についてきて下さい」


そう言うとあたふたと月詠は歩き出した。

その後姿を見ながら、アーチャーはふと思ったことを言った。


「そうそう月詠少尉」


「はい、何でしょうか?」


「こう見えても私は30後半だ。見たところ君はまだ20代だろ。歳はあまり近くないぞ」


「えっ!」


「……どうしてそこで赤くなる」


顔を赤くする月詠真那2○歳。帝国衛士の中でも成長著しい期待の戦術機パイロット。
好みは自分より年上の頼れる男性だった。



前へ     次へ




あとがきと言う名の反省

は~い月詠さん出しました。
性格が丸いのは、まだ青いと言う事でご了承ください。
外伝か番外編で月詠さんが堅物になっていく所が描けるといいなぁと思っています。

本編はまだ明星作戦前なので、小尉の月詠さんです。
本当は中尉にしておこうかなと思ったのですが、やはり二年後までに中尉と言う感じにします。
月詠さんはエリートですからね。このぐらいでOKかなと思っています。
ちなみに設定に詰まっていたのは、月詠さんの年齢です。
24か28という設定はどこかで見たような気がするのですが、とりあえず○で誤魔化しておきます。
アーチャーの年齢は、聖杯戦争ではピーク時の姿で召喚されるので、年齢設定では30後半でもOKかなと思っています。
おじ様アーチャー……渋いぜ!


そういえば月詠さんはショタ設定だったような……orz

なんか今回の内容は薄かったな……反省orz



というわけで第3話終了!
次回こそはいよいよ明星作戦!
プロット・執筆時間・情報収集によりますが、前編・中編・後編の構成になる予定。
楽しみしてお待ちください。

[ 2013年10月16日 15:06 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 02

―――――赤い

―――――視界がすべて赤い

―――――燃えるように熱い

―――――周りは炎に包まれ、体は少しも動かない

―――――何かが焼ける異臭が鼻につく

―――――ちらりと眼球を動かすと、視界に入るのは黒焦げの何か

―――――聞こえてくるのは、何を言っているのか分からない叫び声

―――――ここがどこだかわからない

―――――どこからかザッザッザッと地面を蹴立てながら、小走りに誰かが来る

―――――その誰かが何かを言いながら、私を抱き上げた

―――――抱き上げた彼の顔は……







Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 第2話





「……ここは?」

「殿下、大丈夫ですか? ずいぶんうなされていたようですが……」

悠陽が目を覚ますと、自分の侍女が心配そうにベッドの側に立っている。

キョロ、キョロと辺りを見回してみると、ここは自分の部屋だということがわかった。

簡素な装飾と広い部屋にいくつかの家具しかないさびしい自分の部屋だ。

ふと、自分がなぜ此処にいるのか分からなかった悠陽は、側にいた侍女に尋ねた。


「あの、私は……」


「儀式の後にお倒れになったそうで、医師は過労とのことです」


「儀式?」


ようやくそこで悠陽の寝起きの頭が回り始めた。

突如巻き起こった風とまぶしい光

その中から現れた赤いコートを着た長身の白髪の男

彼は私の手を握りながら、「これより我が身は煌武院 悠陽の為の剣となり楯となる。君の命に従い、君の為に道を切り開くことを誓おう」と言ってきた。


「殿下? 殿下!」


「あ、はい!」


「お体の調子がまだお悪いのですか? 顔が赤いようですが…」


「え、あ、いえ、何でもありません。大丈夫です。ほら、なんともない」


そう言うと悠陽はベッドから降りると、パタパタと手を振った。


「そうですか…ならいいのですが。何かあったら言って下さいね。殿下はすぐ無理をしますから」


「わ、分かりました。大丈夫です」


とそこへ、コンコンと誰かが扉を叩いた。


「誰ですか?」


「はっ、紅蓮であります」


「よい、入れ」


「失礼します」


ガチャリと扉が開き、紅蓮がその大きな体を少し屈めながら部屋に入ってきた。

入れ違いに侍女が一礼して部屋から出て行く。

扉が閉まるのを確認してから、紅蓮は話し出した。


「殿下、お体のほうは?」


「心配ない。私は大丈夫だ」


「それは何よりです。ですが、あのような事があったのです。十分お体には気をつけてください
 あの者が言うには、万が一の場合は殿下の体に、その少々負担が掛かると言っていたので」


「あの者?」


「あの白髪の青年です。アーチャーと名乗っている男です」


「あ、その男は?」


「隣の私の執務室にいます。少々事情を聞いていたので」


「そうですか、ではその者を此処へ。私も事情を聞きたい」


「ですが、まだ怪しいところもありますし、そのあの男が言うには自分は幽霊の類だと……信じられないことに私の目の前で消えたりしました。
 私は、そういうのはあまり信じないのですが、さすがにあれを見ると…それに武器の類を隠し持ってるようで、危険かと」


悠陽はポカーンと口をあけながら、紅蓮の説明を聞いていた。

いや、聞いているというよりは、紅蓮の後ろを見ている。


「? いかがしましたか殿下」


「……いえ、その幽霊の類というのは理解できました。確かにあのような事が出来るのは幽霊か物の怪ですね」


そういいながら悠陽は紅蓮の後ろを指差した。

その白い指先をたどりながら、紅蓮が後ろを振り向くとそこには腕を組んだアーチャーが静かに立っていた。


「…貴様どこから入った?」


「入るのは容易い。それにマスターが目を覚ましたのだ。
 様子を見に来るのは普通だと思うが」


悠陽はしっかりと見ていた。

深い霧の中からゆっくりと出てくるかのように、紅蓮の後ろにアーチャーが現れたのを。


「さて、マスター。体の調子は戻った様だな。まぁ、一流の魔術師でも倒れそうになるぐらい大変だからな、サーヴァントの召還は」


「はぁ…」


「ん? どうしたマスター。あぁ、悠陽と呼んだほうが言いか?」


ポーと悠陽はアーチャーを見ていた。

最初に見たときは、赤いコートを着ていたが、今は脱いでいるのか黒い服装で立っている。

よくよく見てみれば、紅蓮のようにがっしりとした体型ではなく、ほっそりとした体型。だが腕や首元を見れば相当に筋肉がついているのがよく分かる。

遠目からでも目立つ真っ白な髪に、日本人にはあまり見られない浅黒い肌。

そして何より惹かれるのが、鷹のように鋭いがきれいに澄んでいるその目だ。


「どうした悠陽?」


「馬鹿者! 殿下を呼び捨てるなど恐れ多い。殿下は怒っておられるのだ」


「む、そうなのか。では、なんと呼べばいいのだ?」


「あ、……悠陽でいいです、えっとアーチャーさん」


あわててアーチャーに悠陽は言った。

本来なら誰かも知れない人物、それこそ斯衛兵でもない者に自分の名を呼ばせるのは正直躊躇う。

それに、周りの者たちにも示しがつかない。

だが、それでも悠陽は彼には名で呼んでほしかった。


「殿下よろしいのですか? 他の者にも示しが…」


「紅蓮。ちょっとだけ……ちょっとだけわがままを言わせてください」


「それは…」


紅蓮は、そのか細い声での悠陽のお願いに声を詰まらせた。

たった15歳という歳でこれからの日本を導いて行かなくてはいけないのだ。

その責務に比べれば、こんな小さなお願いぐらいたいしたことはない。

そう紅蓮は思った。


「分かりました。ご自由に」


「ありがとう紅蓮。では、アーチャーさん、改めて私のことは悠陽と呼んでください」


「了解した悠陽。これでいいかな?」


「はい!」


その後、アーチャーは、まず悠陽に自分の存在がどのような物なのか説明をし、その後紅蓮に話した事とほぼ同じ事を話した。

そして、確信の部分に話を進める。


「さて、理解は出来たか?」


眉間に皺をよせながら、難しい顔で聞いていた悠陽にアーチャーは尋ねる。


「その……サーヴァントと言うのがどんな物かは一応理解はできました。貴方がそういう存在であると言う事も。
 ですが、魔術ですか? それがどういう物なのかは、その、よく分からないのですが…」


「なるほど、君は紅蓮大将よりは頭が柔らくて助かる。この男頭が固くてな」


「ふん、大体いきなり貴様が話した夢物語を信じられるか!」


「紅蓮、落ち着きなさい。で、その魔術と言うのは?」


「そうだな。魔術と言うのは一定の条件を満たしたとき使える力の事だ。もちろんこれは万能ではない。魔術で使えるのは時間をかければ科学の力でも再現可能なのだ。
 簡単に言えば、火を熾すのに魔術を使うかライターを使うかぐらいの差だな。
 だが魔術は極めれば火を熾すにもライター以上の火力を熾すことが出来る。まぁ、それもミサイルを使えばかわらんがな。
 大体は、こんなところだな」


二人とも難しい顔をして、何も言わない。やはり理解ができないのかとアーチャーは思った。
もともと魔法や魔術といった神秘的な事に関する概念が薄いのかもしれない。


「そのよく分からないのですが……つまり魔術を使うよりは化学の力を使ったほうがいいということですか?」


「時と場合によるがな。だが戦闘するなら圧倒的に魔術が強い。なぜなら科学のような大規模な施設は要らないし機械もいらない、使いようによっては呪文…言葉を紡ぐだけで爆弾並みの破壊力を起こす事も可能だ。
 つまり一流の魔術師は魔力が続く限り、そんな攻撃がいくらでも出来る。まぁ、制限もいろいろとあって簡単には出来ない事が多いが…」


「では、貴様もそのような魔術を使えるということか!?」


信じられないといった顔で紅蓮がアーチャーに詰め寄る。


「そうだ。魔力というエネルギーがある限りはな。だが、人が持っている魔力には限界があり、いつまでも使えるというわけではない。
 そして私はサーヴァントだ。先ほども説明したが、私は悠陽から魔力を供給させてもらっている。
 悠揚の魔力はとても多く、私を現界つまり存在させておく事ができる。これがそこらの一般人だったら一瞬でミイラだ。
 そもそも本来なら聖杯からの加護により、現界はたやすいのだが今回の召喚はそれがない事が問題なのだがな」


「つまり貴方は私の魔力ですか? それによって存在しているという事ですね。そして私の魔力が足りないから魔術は使えないと」


「使えないわけではではない。そうだな2回ぐらいは魔術行使は可能だ。それ以上は君に負担が掛かる。
 それに今回の召喚は私もわからないのだ。想定外の召喚だからな。
 本来の力が取り戻せる方法があれば、今以上の力を使うことができるだろう」


「なんだ、きさ……アーチャー殿はほとんど人間と変わらんということか?」


「ハッ、分かっているのにそれを私に聞くのか?
 ただの人間がサーヴァントに勝てるわけがない。純粋に力の差が大きい。
 たとえお前が10人いても私に勝つことは無理だろう。お前ぐらいの武人なら言わなくても分かっているはずだ」


そのアーチャーの言葉に紅蓮は苦い顔をした。紅蓮にはアーチャーが言っている事が正しいことは分かっていたのだ。

自分が切りかかった時のあの対応の素早さ。閃光の様な太刀筋。一撃一撃がとてつもなく重い。冷静な判断力。

そして自分の利き腕を踏み砕いた瞬間の冷徹さ。

武人としては技が荒いところがあるが、戦闘者としては確実に一流だろう。


「そうなのですか、紅蓮?」


「……確かに私はアーチャー殿には及ばないでしょう。長年、無現鬼道流をやってきて、この流派こそ最強だと誇りに思っています。
 ですが、彼はおそらく技がない。彼の太刀筋は技術です。私が学んできたのは技であって技術とはちがう。
 技術と技では、技術が高いほうが有利ということです」


「よく分かっているではないか。本当に貴様は武人の鏡だな」


「あの、よく分からないのですが…」


小さく手を上げながら、悠陽がアーチャーに尋ねた。


「つまり私が扱う剣術は戦闘のために特化した唯の技術に過ぎん。だが、紅蓮の剣術は一振り一振りが技だ。つまり一撃でも当たれば必殺になるが、私の場合は必殺にはならない」


アーチャーの説明によく分からないといった顔で悠陽は首をかしげる。


「殿下もそのうちわかるようになります」


「そうなのですか?」


「私に聞かれてもな……」


こうして、この日はアーチャーが色々と悠陽に説明することで終わった。





国連太平洋方面第11軍・臨時基地




薄暗い室内には、大きなディスプレイを中心に、周りには小さなディスプレイとオペレーター達。

中央の画面には奇怪な巨大オブジェが映し出されている。


「準備は?」


中央指令台で画面を見つめながら、男が白衣を着た隣の女性に声をかけた。


「ほぼ完了しています。あとは米軍の準備とG弾を待つのみですわ」


「そうか」


「帝国からも支援をするとの事です」


「あちらも苦渋の決断だろうな」


「ええ、この国の本土にG弾を撃ち込むのですから」


「私は国連所属だからあまり大きな声では言えないが、やはりG弾を使うのは……もし、私の祖国で同じ事を行うとすれば、私は耐えれないだろう」


白衣の女性はその言葉に画面から目をそらし、下に視線を落とした。


「日本人の君には酷な事ではないかね?」


「……それでも、オルタネイティブ4には必要なのです、G元素がそしてBETAのデータが。そのための犠牲は覚悟しました」


「人類のためと言って、世界は日本を犠牲にするか……まったく、やりきれんな」


画面に映し出された奇怪なオブジェは不気味なぐらい変化がなかった。








あとがき

第二話終了~!
今回は、魔術についての説明とアーチャーの現時点の力についてでした。
次回は明星作戦です。この物語は武がこちらにやって来るだいたい2年前から始まります。
つまり1999年からのお話です。その為、独自設定が多数入りますのでご注意を。
で、召喚について掲示板で議論されていたので一言。
一応納得できる形で召喚理由は考えております。それがどの場面で出るかなどは答えられません。
独自設定・独自解釈がこの小説では多くなるので、突っ込みどころは沢山あると思いますがご容赦を。
ちなみにアーチャーは戦術機には乗りません。なぜならタモがアーチャーが戦術機に乗るところ想像出来ないから!


[ 2013年10月16日 15:06 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 01



「お父様、お母様、私は…私は…冥夜ぁ……」


ぐっと唇をかみ締めると少女は視線の先にある、玉座に向かい歩き出した。


「これより、継承の儀を始める!」


儀礼用の服装をした男か高らかに声を上げた。

それに合わせて、周りにいた衛士たちが、さっと足をそろえ、姿勢を整えた。

そして男は玉座の前に立った女の子に一礼をし、大きな木の箱から一本の剣を取り出す。




―――――「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」
―――――そう言って私は、いや俺は晴れやかな笑顔を浮かべた。彼女もそれに笑顔で答えてくれた。
―――――あぁ、安心した。これならこの世界の俺は大丈夫だろう。ありがとう遠坂。
―――――そう思ったと同時に俺の意識は薄れていった。




「政威大将軍 煌武院 悠陽殿下。お受け取りください」

男が、一本の柄の宝石以外は特に装飾されていない剣を恭しく差し出す。

悠陽はほんの一瞬の躊躇い、それを受け取ると力強く握り締め天に掲げて宣言した。


「私、煌武院 悠陽は政威大将軍として国民をまた国家を導くことをここに誓う」


そして鞘から剣を抜き放った。



―――――気がつけば何もない空間を、暗い闇の中を俺は漂っていた。
―――――ここは始まりの場所だ。
―――――ここで俺は平行世界のの俺と融合し、記憶を補うのだろう。
―――――平行世界の衛宮士郎。数々の功績を、時には害を、そして死を残し、英霊になる存在。
―――――……だけど、今だけでも答えを得ているのならば俺は満足だ。
―――――そう思っていると強烈な力に引かれた。
―――――あぁ、次の召還が始まったのか。
―――――できれば守護者としてではなく、誰かの為になる所へ行きたい。




轟音と光と突風が広間に巻き起こった。


「何事だ!くっ、殿下を、殿下をお守りしろ!」


儀式を見守っていた紅蓮 醍三郎大佐は叫んだ。その命令に従い衛士たちが悠陽のもとに向かおうとする。

とその時一瞬さらに大きく光ると、突然光と突風が止み、あたりに静寂が戻った。


「殿下!大丈夫ですか殿下!」


あわてて紅蓮は悠陽の元へ駆けつけようとして、玉座に目をやる。

そこには赤いコートを着た長身の白髪の男が悠陽を支えながら立っていた。



目を開けるとそこには、長髪のきれいな髪をした少女が目を見開きながら俺を見ていた。

手には一振りの剣を持っている。チラリと一瞥して解析したが、それなりの年月を過ごしたただの古い剣だった。だが柄のところに埋めてある宝石だけは解析できない。

周囲を確認すると周りに何人かいるが、皆召還の際の光によって一時的に視力がなくなっている様だ。右往左往している。

とグラリと目の前の女の子が倒れそうになった。


「おっと」


「あ……」


あわてて俺は抱きとめる。状況からして彼女がマスターのようだ。

と言うことは今回は守護者としての召還では無いのだろう。

だが、聖杯戦争にしては聖杯とのつながりがほとんど無い上に、知識が流れてこない。それに前回の記憶が残っている。

ふむ、と首をかしげていると


「あ、あの……」


「貴様ぁ―!殿下からはなれんか!」


巨漢の男が刀を手に取り、こちらに突っ込んでくる。

すかさず俺は女の子を背後にかばうと応戦する。


「――――投影、開始」


干将・莫耶を投影すると相手の刀を受け止める。


「き、きさまどこから武器を!」


「フン、敵にそんなことを教えるほど私は優しくない」


干将で相手の剣を捌くと軸足を蹴り上げ転倒させ、利き手と思われる右手を瞬時に踏み砕く。

ゴキリと広間に骨が砕ける嫌な音が響きわたる。その音に俺を取り抑えようと身構えた全員の足が止まった。


「ほぉ、腕を折られたのに声ひとつ上げないとは余程の武人とお見受けする」


「ほざけ。貴様を倒せばいくらでも叫んでやる」


ぎろりと男は俺に視線を向けてきた。ただでは死なないと目が言っていた。


「……で、どうするマスターよ。いや、まだ契約が済んでいなかったなから正式なマスターではないか」


起き上がろうとする男の背に足を乗せ身動きが取れないように押さえ込むと、俺はマスターと思われる彼女のほうへ振り返った。


「あ、え、契約ですか?いえ、それよりその足を紅蓮からどけなさい!」


「……ふむ、いいだろう。契約は済んでいないがあなたがマスターのようだからな」


彼女へ意識を向けると確かにラインが繋がっていた。

しかしそこから流れてくる魔力は、普通の魔術師以上はあるが、なぜか聖杯の加護が無いので現界させて置くのでほとんど精一杯のようだ。

先ほど投影した干将・莫耶だけで魔力の3分の1を使ってしまった。これでは満足な戦闘などできない。

そもそも聖杯とのつながりが無いのがおかしい。それに記憶も……。

と黙り込んだ俺を女の子が押しのけ、倒れている男に声をかけた。


「紅蓮、大丈夫ですか?」


「殿下、お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。それよりその男から早く離れてください。危険です。
 おい、貴様ら!いつまで呆けておる!殿下をお守りしろ!」


紅蓮とか言う男は折れた腕を庇いながら、呆然としていた周りの人間に渇を入れた。

その命令にあわてて言った。どうもマスターと周りの者たちは仲間みたいだからだ。


「ちょっと待て。私は別に敵対する気は無い。そちらが剣を向けたから応戦したにすぎん」


「貴様なにをふざけた事を!」


「お待ちなさい」


「殿下…」


すっと女の子が立ち上がると俺のほうへ向き直った。

年は14~15歳だろうか。それにしては存在感がある少女である。


「……あなたは誰ですか?」


「私はアーチャーのサーヴァント。聖杯の下なのかは今は分からんが、貴方の召還に応じ参上した」


「サーヴァント?聖杯ですか?あのアーチャーというのは本名なのでしょうか?」


「何を言っているのだマスター。君が私を召還したのだろう?それとアーチャーというのはクラス名だ。真の名は別にある」


どうもさっきから様子がおかしい。そもそも召還の儀式としては人が多すぎるし、召還陣も無い。

大規模な召還術と言うわけでもないようだ。

それにさっき紅蓮と言う男は目の前の女の子を殿下と呼んでいた。と言うことはそれなりの高位の人物と言うことなのだろうか。


「何を訳のわからないことをごちゃごちゃと言っているのだ!殿下、やはりこの男は危険です」


「黙りなさい紅蓮!皆のもの武器を下ろして下がりなさい!この者と争っても無駄に血が流れるだけです」


じりじりと近づいていた兵は彼女の一喝で俺から離れる。


「ほぉ、力の差を見抜いているか。マスターとしてはいい判断だ」


「あなたもその武器をしまいなさい。無益な威嚇行為は必要ありません」


「了解した。で、貴方の名は?契約に名前はひつようだからな」


そう言いながらコートの中に干将・莫耶を入れるフリをして、消し去る。

このような小さなことでも、今の時点で敵に知られるわけにはいかない。


「……先ほど貴方が言った、契約と言うのは何のことなのか私にはわからないのですが」


「……」

契約を知らないだと。これは完全におかしい。やはり今回の召還は何かイレギュラーなのだろう。

聖杯とのつながりも無ければ守護者としての世界とのつながりも無い。それに前回の記憶をそのまま引き継いでいる。

まるで身包みをはがされてポイッとその辺に捨てられた気分だ。


「先ほど聖杯のことを知らないようだったな。では、どうやって私を召還した?」


「そもそも私は召還などというのは知りません。ましてやそのような行為もしてません」


「なに!」

ということは何故私は召還されたのだ。聖杯戦争でもない守護者でもない、ただの召還されただけ。

唯一引っかかることと言えば先程の剣の宝石だけだ。

あまりにも訳が分からな過ぎた。


「う~む、困った。私も訳が分からなくなってしまった」


「……」


悩み始めた俺を女の子がジーと見つめる。


「あ~とりあえず名前を教えてくれないか?契約しなければ私は消えてしまうのだが」


「消えるだと!貴様もしかして物の怪の類なのか!
 殿下、教えてはいけません。この男は異常です」


利き腕の骨を折られたのに元気な男である。着ているものや装飾品からして、この武人も高位な人物らしい。


「……契約したら私に利はあるのですか?」


「殿下!?」


「私も混乱しているから君に利があるかどうかは答えられない。
 だがこれだけは約束する。いかなる時でも君を守り通そう。世界が滅びようともな」


「……いいでしょう。契約します。貴方のその偽りのない瞳を信じて。
 私の名は政威大将軍 煌武院 悠陽 です」


「ふむ、なにやら大将軍などと凄い事を聞いた気がするが……まぁいい。
 ここに契約は成った。これより我が身は煌武院 悠陽の為の剣となり楯となる。
 君の命に従い、君の為に道を切り開くことを誓おう」


彼女の、悠陽の手を取りながら俺は宣言する。

するとなぜか彼女を顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「? どうしたマスター」


「い、いえ、何でもありません。
 ところで貴方の名は?私はまだ聞いてはいないのですが」


「あぁ、すまないが私のことはアーチャーと呼んでくれ、真の名は教えられない」


「アーチャーさんですか……」


とそこへ顔を真っ赤に染めた紅蓮が割って入ってきた。


「も、もう許せん!貴様!物の怪だろうが、なんだろうが知らんがさっきから聞いていれば殿下に向かってなんと言う言葉を!
 名を教えられないだと、貴様ぁ、誰に向かって口を聞いているのか分かっているのか!」


「煌武院 悠陽だが……マスター、彼は何を言っているのだ?」


「えっと…」


はて?と俺は首をかしげ悠陽に尋ねた。


「わ、わ、分かっていて何たる口の利き方!
 その方がこの日本帝国の中心を担う政威大将軍で在らせられるのだぞ!」


唾を飛ばしながら紅蓮がさらに詰め寄り怒鳴る。


「貴様が何を言っているのかよく分からん。だが彼女が重要な人物であることは理解した。
 ただそれだけだ。以下に彼女が偉かろうと煌武院 悠陽という一人の人物に変わりは無い。
 私は煌武院 悠陽と契約したのだ。政威大将軍など知らん。
 もっとも彼女が敬えと命令するのならば応じるが…」


「殿下!」


「よい紅蓮。それにしても私を知らないとは驚きました。貴方は日本語が流暢だから日本人だと思っていましたが、もしかして違うのですか?」


「こんな成りだが日本人だ」


そういいながら俺は色素が抜けて白くなってしまった髪を触った。

生前の魔術の無理な行使による副作用だ。皮膚も黒くなり、目の色も変わってしまった。


「日本人だと!?貴様、嘘を申すではない。日本人がこの方を知ら無いわけが無い!」


「嘘ではない。さっきも言っただろう。こちらも事情が分からず混乱していると」


「むぅぅ」


「紅蓮、落ち着きなさい。とりあえず継承の儀は終わりです。各自もち……」


と悠陽が指示の途中にグラリとまた倒れてきた。

それをまた俺が抱きとめた。


「大丈夫か」


声をかけるが返事が無い。先ほどの違い今度は完全に気絶していた。

召還による疲れと契約による魔力の消費が原因だろう。いままで立っていたのもきつかっただろうに。


「殿下!?どうなさいました」


「……貴様は殿下、殿下とうるさいな。
 心配ない、ただの疲労だ。彼女の部屋はどこだ」


俺はぐったりとした彼女をお姫さん抱っこで抱えると紅蓮に尋ねる。


「き、貴様!殿下のお体にぃ~!」


「落ち着け馬鹿者。とにかく彼女の部屋に案内してくれ。
 それと貴様も腕の治療をしておけ」


「うぬぅ~~~~~。殿下の寝所はこちらだついて来い。
 それと敵の情けはいらぬ!」


そういうと紅蓮は俺が折った腕を押さえながら、荒々しく部屋の出口へ向かった。その途中にその場にいた部下に指示を出す。


「おい!貴様らはこの場を片付けて置け!……それと宰相殿、この事はご内密に」


「うむ。とりあえずはこの場は殿下に任せておこう。何かあったらいつでも連絡を」


「分かりました」


廊下に出ると紅蓮はドアの横にいた警備員らしき者に、悠陽の部屋に医者を呼ぶように指示を出すとこちらだと言って案内する。


「ふむ、なるほど悠陽はよほど偉いのだな」


先ほどの召還された部屋もそうだが、廊下に出ると改めてこの場所がどういうところか実感する。

廊下の幅は2m異常あり、柱には派手さは無いが細かい装飾が施されている。この感じからする純日本風の建物のようだ。

細かく周りを見渡したりすれば、長年の経験から大体のこの建物の大きさは把握できた。

約東京ドーム一個分だろう。庭入れるとそれ以上は少なくともある。

それほど大きな建物で、中にいるであろう人の数からして相当な重要人物なのだろう。

いや、さきほど紅蓮と言う男が言っていた「日本帝国の中心を担う政威大将軍」だと。

少なくとも私は『日本帝国』など知らないし『政威大将軍』と言うのも知らない。

それに日本帝国の中心を担うと言うことは大統領みたいなものということなのか。

宰相がいると言うことは少なくとも総理大臣以上の権限を持つと言うことだ。


「着いたぞ。ここが殿下の寝所である」


いろいろと考えていると、どうやら目的地に着いたようだ。

紅蓮が扉を開け、その後を俺はついて行った。


「そちらに寝かせよ。あとは付き人がやるから貴様は下がれ」


「そう言われてもな。私は彼女のサーヴァントだ。早々にはなれるわけにはいかん」


「さーばんとだが何だが知らんが今は医者に診察させる。それとも貴様に医術の知識があるのか?」


「……分かった」


俺に医術の知識が無いわけではない。戦場に出ればそれなりに自然と医術など身につく。と言っても怪我などの外科的知識がほとんどだが。

ここで引き下がったのはこの紅蓮という男と揉めれば、後々にいろいろと煩そうだからだ。


「貴様にはいろいろと聞かねばならぬ。こちらに来い」


「私も聞きたいことがあるからいいだろう」


医者がやってきたのを確認すると紅蓮は俺を隣の部屋に案内した。

どうやら自分の執務室のようだ。


「さて、まずは貴様の身分を聞こう」


「アーチャーだ」


「ふざけるな!貴様の名を言えと言っているのだ!」


バンッと紅蓮は自分の執務机を壊さんばかりに叩いた。


「断る。真名は大切なものだ。信じておらん奴に教えるわけにはいかん」


「ぐぬぅう。では貴様はどこから現れた?
 あの場に侵入者などは入れないはずだ」


「……ひとついいだろうか?」


「なんだ?」


「これは尋問か?」


「当たり前だ!どこからともなく現れた貴様を誰が信じるか!殿下が許しても私は許さん!!」


はぁ、はぁと荒い息を吐きながら紅蓮が俺を睨む。


「そうか。貴様は少々頭が固いようだが……まぁいい。これから話すことをよく聞いておけ。話の途中での質問は聞かん。
 とりあえず最後まで話しを聞け。その後に質問には答えよう。それとこちらの説明が終わったら私も貴様らには聞きたいことがある」


「いいだろう。話せ」


俺は聖杯戦争の事、サーヴァントの事、契約の事、今の状況の事、を手短にだが的確に説明した。

話をしている間、紅蓮と言う男の顔は真っ赤を通り越してドス黒くなっていた。


「以上だ」


「貴様、私を馬鹿にしているのか?」


「信じる信じないは貴様の固い頭で考えろ。
 しかし、そうだな。一つ私が人間ではない事の証拠を見せよう」


「証拠だと?」


「よく見ておけ」


俺は紅蓮の目の前で霊体化する。

この状態になれば、まず一般人には視認は不可能だ。


「き、消えただと!?」


「これが霊体化だ。人には視認できない。もちろんあらゆるセンサーにも引っかからない」


「なんと面妖な。声だけが聞こえておる」


驚いた表情のまま紅蓮はキョロキョロと辺りを見回す。

俺は霊体化から実体に戻った。


「これで少しは信じれただろう?」


「むぅ、このような事を見せられれば信じないわけにも如何だろう」


「少しでも理解してもらえるだけでこちらは助かる。ではこちらから質問していいだろうか?」


「いいだろう。貴様を完全に信じたわけではないが殿下に危害を加える事はないということは理解できたからな。
 私が答えられる範囲でなら答えよう」


「では最初に……」


そして俺は様々なことを紅蓮に尋ねた。

紅蓮からの回答は驚くべきものばかりだった。

この世界ではBETAと言う謎の地球外生命体によって、地球全体に危機が迫っているそうだ。

今の世界人口は15億人。消滅した国は約50カ国。そして今なおBETAの進行は進んでいるとの事。

そしてこの世界で魔術と言う概念は聞いたことがないとの事。

私から魔術の説明を聞いた紅蓮は端末を操作しながら言った。


「そのような力があれば誰かが必ず使っているはずである。
 情報省からもその様な報告は一度も無いし、こんな時代だ。いくら神秘を秘匿しなくてはならないと言っても自分が死ねば意味が無いだろう?
 それにそのイギリスにある時計塔とか言うところだがロンドンにあるのだろう?
 すでにロンドンはBETAの進行によって消滅している。時計塔とか言うところがあるのなら誰かが魔術を使っているはずだ。
 目撃例が無いのだから貴様が言う魔術というのはない。
 言っとくが情報省の情報収集能力は世界有数の力を持っている。ほんの少しでもその様な超常現象が目撃されれば報告されているはずだ。
 今、調べたがその様な報告はまったく無い」


その言葉に俺は一つの仮説にたどり着いた。


「なるほど。歴史の根幹の部分で魔術は発達しなかったと言うことか。確かに平行世界の無限の可能性からすればありえないことは無いな」


と言うことは聖杯が無いことも頷ける。なぜなら聖杯を下ろすための器などを造る魔術師がいないのだから。

しかし、それならば何故私は召還されたのだろうか?

聖杯の可能性は消えた。

と言うことは残ったのは守護者としての仕事だけなのだが、自意識が覚醒状態ではありえない。。


「ますます状況が分からなくなったな」


「それと貴様が話していた冬木市という所は存在しない。
 BETAの進行により、かなりの市や町は壊滅して名前などが変わったが、過去にもその様な地域は無いな」


そう言うと紅蓮は端末から視線をこちらに向けた。


「聞きたいことはこれだけか?」


「今のところはそれだけで十分だ。後は自分で情報を集める」


「…好きにしろ。だがあまり目立つことはするな。殿下の顔に泥でもつけてみよ。貴様がどんな存在だろうが必ず抹殺してやる」


「分かっている。マスターには迷惑はかけない。とりあえずは私が召還された目的を模索すことにするさ。
 ……唐突だが少々扉に穴を開けるぞ」


「は?」


「――――投影、開始」


俺は紅蓮から見えないように懐で黒鍵を投影すると間髪いれず、この部屋の唯一の扉へ投げた。

ドスッと刀身の半分以上が刺さる。


「貴様、やはり頭がおかしいのではないか?」


俺の行動が理解できない紅蓮が疑わしそうな目で俺を見た。


「その様な考えしかできないとは貴様は相当頭が硬いな。
 盗み聞いている不届き者がいたから警告したのだ」


「何だと!」


椅子を蹴倒して紅蓮は立ち上がる黒鍵が刺さった扉目掛けて走りより開け放つ。

そこには1人の男が、帽子に開いた穴に指を通して寂しそうな顔をして立っていた。

おそらく穴の原因は黒鍵が刺さったからだろう。


「お前は鎧衣!何故ここにいる」


激高する紅蓮を無視して、鎧衣という名の男はズカズカと部屋に入ってきて俺の前に立った。


「君が殿下をお姫様抱っこして現れた男か。ずいぶんと乱暴だなぁ。
 この帽子は一昨年に娘と妻が私にくれた大事な物なのだが、見たまえ。見事に穴が開いてしまったではないか」


「それは失礼した。だが少々蝿が飛んでいてな。煩くてつい黒鍵を投げてしまった」


「ほぉ、あの剣は黒鍵というのか。見事な切れ味だ。あの分厚い扉を貫通するとは」


この男、観察力に優れている。危険な人物だな。瞬時に警戒心をあげる。

とそこへ紅蓮が扉に刺さった黒鍵を引き抜いて戻ってきた。

ポンとおれにそれを投げ返すと鎧衣の前に仁王立ちする。

受け取った黒鍵は先ほどと同様に、コートに入れるフリをして、かき消す。


「鎧衣。貴様どこから情報を得た?いくら殿下のお気に入りとはいえ情報の漏洩は見過ごせん」


「まぁまぁ、紅蓮君落ち着きたまえ。私はちょっとその辺の人に尋ねただけだよ」


「……貴様の今までの行動からして絶対に口を割らんことは知っている。
 だが会えて尋ねよう。誰から聞いた?」


「それは秘密さ。教えたら君はその人を殺してしまうかも知れないからねぇ」


「ぐぬぅぅ。鎧衣、いつまでも人を馬鹿にするなよ。いつか貴様を痛い目にあわせてやるぞ」


「おお怖い。そう思わないかいえ~と…」


「アーチャーだ」


「珍しい名前だな。まぁ、私も左近と言う、かっこよくて誰も使わない名前を持っているがな」


そう言うと鎧衣は、ハハハハハハハッと1人で高笑いした。





その後は鎧衣という名の男にもう一度俺の現状を話した。

本来なら話さないほうがいいのだが、この男は情報省に所属しており外国にも行っているらしい。

ならば利用しない手は無い。少々リスクを伴うが仕方あるまい。

戦場で現状把握は大切なことだ。それと情報も。


「つまり君は人間ではなく幽霊と言うことかな?」


「それに近い存在だ」


「なるほど。あ~、ところで紅蓮君。そろそろ君は医者の所に行ってきたらどうだい?この場は私が預かるから。
 あまりその腕を放置しておくと衛士として使い物にならなくなると思うのだが?
 それに私の視界にグロテスクな紅蓮君の腕はいれたくないからねぇ」


確かに元から太い紅蓮の腕は二倍以上に腫れ上がっていた。内出血しているのだろう。どす黒く変色していて鎧衣の言うとおりグロテスクだ。

あれは相当な激痛が走っているはずなのに大丈夫なのだろうか?

俺と鎧衣の視線を受けて紅蓮は自分の腕を見ると立ち上がり言った。


「確かにそれは困るな。医務室に行って来る。くれぐれも2人とも変なことはするなよ。特に鎧衣。貴様はいろいろと問題を起こすからな」


「それは無いんじゃないかな。どちらかと言うと彼みたいな存在に言うべきことだと思うが」


「だまれ。お前のほうが信用できん。それではアーチャー殿くれぐれも頼みます」


初めて紅蓮が俺の名を言った。それなりに信用してくれたのだろう。


「どう思うアーチャー君?」


「知らん。だが私も貴様を早々は信用せん。どこか胡散臭いからな」


「しょうがないじゃないか。情報省に勤務すればたいていはこの様になるものなのだよ。
 あぁ、そう言えばこんな物を持っているのだが君も食べるかい?」


そう言うと鎧衣はスーツの下から板チョコを取り出した。

カカオ72%と表示してある。


「最近凝っているんだよチョコレート。私はどちらかと言うとビターが好きなのだが君はどうだい?」


「貴様としゃべると疲れるな。話題がころころ変わって。
 大体だな、私の存在を疑問に思わんのか?」


「さぁ、世の中に君見たいのがいても不思議は無いと私は思うよ。
 でだ、私はナッツ入りのチョコレートは嫌いなのだよ。あれはナッツが歯に挟まってイライラしてしまう」


つくづく変な男である。

板チョコの銀紙を剥がすと半分に割り、俺に差し出してきた。

「紅蓮君が戻るまでこれでも食べながら語ろうじゃないか、アーチャー君」

「君はいらん。アーチャーと呼べ」

「それにしてもやっぱりチョコはビターだねぇ。この苦味がいい。大人の味だなぁ」

「貴様、人の話はちゃんと聞け」

結局、紅蓮が戻るまで俺は鎧衣と不思議な会話を延々と交わすことになった。



次へ



あとがき

嘘予告を多少訂正・加筆したものです。
人気があったので、連載して行こうかなと思う今日この頃。
連載というのはなかなか難しく、話を続けるのは大変です。
ほかにもタモは連載小説を持っているため、なかなかこちらはUPできないと思います。
そこのところのご理解をしていただけると助かります。
なるべく早めのUPを目指そうとは思ってますよ?


[ 2013年10月16日 15:05 ] カテゴリ:Muv-Luv/錬鉄の近衛騎士 | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 18

「きゃ!」

「ひゃあ!」

「やんっ!」

突如、大浴場でキャアキャア騒いでいた3-Aの一部の者たちが、かわいい悲鳴を上げた。

「どうしたんですか?」

悲鳴を上げたまき絵にネギが不思議そうにたずねた。

「やだもーネギ君。そんなこと言っちゃって!」

「ネギ君のエッチ~おませさん何だから~!」

「はぁ……あの何のことかよく分からないんですけど…」

「じゃあ、……この手は何!」

そういうと佐々木まき絵は勢いよくお湯に手を突っ込み、何かを掴んだ。





赤い丘より新たな世界へ18






「……あれ、なんだろこの太くて毛むくじゃらなのは?」


「ぼ、僕じゃないですよ」


まき絵はゆっくりと、手のひらに握り締めた毛むくじゃらの太い何かをお湯から出す。

湯気の間から現れたのは白い毛皮の…


「ネ、ネズミー!」


そう叫ぶとまき絵は掴んでいたネズミと思われる動物を放り投げた。


「キャー、ネズミだー!」


「イタチだよ!」


そのまき絵の近くにいた面々も、それを聞いてパニックに陥る。

こんな所にいるネズミと言えばあの薄汚いドブネズミと相場が決まっているからだ。

そして、パニックと言うのは水面の波紋の様に広がるもの。

数十秒後には、阿鼻叫喚の騒ぎになっていた。


「おい、向こうでなんか騒いでるぞ」


「何やってるのかしらね?なにか出たみたいだけど」


騒いでいた3-Aメンバーと離れてお湯に使っていた遠坂凛と長谷川千雨他数名は、騒ぎの中心に目を向けた。

目に飛び込んできたのは、何かの影が縦横無尽に飛び回り、次々とクラスメートが裸になっている光景。


「あぁ? 何やってんだあいつら。いくらなんでも裸はやり過ぎだろ……。ん? なんだあの白いのは」


長谷川千雨は曇った眼鏡を拭いながら、よく見ようと騒ぎの中心に近づこうと立ち上がる。

と、突然後ろから手をつかまれた。


「遠坂さん?」


後ろを振り返ると真剣な顔をした遠坂凛が千雨の手を掴んでいた。


「長谷川さん、今すぐお湯から上がりなさい。そこのあなた達も」


「はぁ?」


側にいた他の生徒にそう言うと凛は立ち上がり、すぐさま騒ぎの中心へお湯を蹴立てて向かっていった。


「…なんなんだ?」


後に残された長谷川千雨は、風呂から出ろと言われた理由が分からず首を捻った。






校舎屋上



「何もないな」


士郎は遠坂たちを探すために、見晴らしの良い校舎屋上に来ていた。

もともと魔力の探知は苦手なため、肉眼で探索するためだ。

ぐるりと周囲を見渡してみるが、特に異常はない。

視界に広がるのは穏やかな光に包まれた、学園都市の夜の風景。


「う~ん、一体遠坂たちは何処に行ったんだ?」


いろいろと士郎が考えていると、背後に微かに人の気配が生まれた。


「……だれだ?」


振り向きながら言うと、ゆっくりと屋上の端の暗がりから誰かが出てくる。


「わしじゃよ、衛宮君」


月明かりに照らされて現れたのは、学園長だった。


「どうしたんですか、こんな夜に?」


「いや、月がきれいなもんでな。一杯飲もうかとの。
 どうじゃ、付き合わんか?」

「いえ、ちょっと遠坂を探しているので……」


「大丈夫じゃよ。この学園にいる限りは余程のことがないと大事に見舞われる事はない。それに遠坂君の居場所は把握しておる」


「ですが、侵入者がいるようですし……」


「ああ、ああ、いいんじゃ、いいんじゃよ。その侵入者はわしも知っておるからの。少々悪戯が過ぎるようじゃがほっといて構わんよ。
 それより飲もう、年寄りに付き合ってくれ」


「はぁ、じゃあご馳走になります」


そう返事をすると、学園長は懐から日本酒と杯を取り出した。

どこに入っていたんだ?


「ほれ」


学園長に杯を渡される。


「あ、学園長どうぞ」


トクトクと学園長の杯にお酒が注がれた。


「おお、こりゃすまんな」


「いえいえ」


そうして月明かりの下、静かな酒盛りが始まった。






女子寮大浴場


明日菜は呆然としていた。

悲鳴が聞こえたので、急いで女子寮の大浴場にやって来たのだが、そこで繰り広げられていたのは、裸のネギと裸の3-Aクラスメート達があちらこちらに走り回っている光景だった。


「な、何やってるのあんた達はー!」


明日菜は吼えた。いくらなんでもちょっと悪戯の度を越えていて、やり過ぎである。

しかし、そんな叫びも逃げ惑う女の子達の悲鳴によってかき消され、本人達には聞こえない。

と、そこへ


「明日菜! そいつ捕まえて!」


「と、遠坂さんまで裸に! 何やってんの!」


「いいからそいつを捕まえろー!」


「はい!」


凛の怒りを含んだ絶叫に、明日菜は自分にすばやく近づいてくる白い物体に気づく。

反射的にガッと側にあった風呂桶を掴むと飛び掛ってきた物体に勢いよく叩きつけた。

パコーンと吹き飛ばされる白い物体。


「どいて、明日菜!」


凛は明日菜の前に立つと鬼のような表情で、ガンドを連続して吹っ飛ぶ白い物体に叩き込む。クラスメートの存在など知ったことかと言わんばかりに魔術を使いまくる。


「おら、おら、おら! 死ね。死ね。死ね。死ねぇー!」


ついには、ガンドの攻撃に耐えられず、轟音をたてて大浴場の壁が崩壊した。それでも凛は崩れた瓦礫に向かって執拗にガンドを撃ち続ける。

その光景に全員いっせいに壁際まで引く。なぜなら優等生の本性を垣間見た瞬間だったからだ。


「あ、あの遠坂さん~」


そのなかで、過去のトラウマに耐えながら明日菜が凛に声をかけた。


「はぁ、はぁ、はぁ、ごめん明日菜。……今私に近づくと怪我するわよ」


「ふぁ、ふぁい!」(ひー遠坂さんめちゃくちゃ切れてる~)


攻撃をやっと止めて、明日菜に返事しながら、凛はゆらりと土煙が漂う瓦礫に向かって歩き出した。






校舎屋上



「なぁ、衛宮君」


「なんですか、学園長?」


静かに酒を飲んでいると、学園長が急に声をかけて来た。


「君達は結婚しておらんのか?」


「ブハッ」

突然、学園長がそんな事を聞いてきた。


「いきなりなんですか!大体、誰とですか!?」


「いや、遠坂君と君じゃよ。君達本当は26歳なんじゃろ? 結婚していてもおかしくない年じゃし、二人とも好き合っているようだしの
 向こうで結婚しとらんかったのか?」


学園長の言葉にちょっと時間がとまった。

今まで遠坂と結婚など考えた事がなかったのか?と言われればあったと思う。ロンドンにいた時の事だ。

だが、結局それは遠坂には言えなかった。自分が追いかける理想のために遠坂の幸せを壊したくなかったからだ。

その後は、なるべくその事は考えないようにしてきた。

まぁ、向こうでは毎日が戦争でそんな事を考える余裕なんて全くなかったということもあるが……


「いや……結婚してませんよ。一度は考えたことはありますけど、結局言えませんでした。彼女の幸せを壊しそうでね
 といっても向こうでは、ほぼ一緒に毎日行動してましたし…その…こう、なんというか、色々な関係も持っていましたから事実婚に近い形でしたけど」


「……なんか遠坂君がかわいそうになってきたの。あぁ、乙女の夢ウェディングドレスを遠坂君も着たいじゃろな~どっかのへたれのせいで、それもかなわんとは……
 あぁ、なんてかわいそうなんじゃ!というかこの話からあわよくば木乃香と衛宮君がお見合いして、一気に結婚してくれないかという策略を練っていたのに……」


「うっ!た、たしかに遠坂には悪い思いをさせているかもしれませんが、でも俺は遠坂の事を愛してますしこれからもこの思いは変わりません!」


「わかった、わかった、そんな恥ずかしい台詞をよく言えるの。こっちがあてられてしまうわい」


「す、すいません。でも本心です!」


「まぁ君のその一途な気持ちは良く分かったが、あんまり待たせると愛想つかされるぞい」


「むぅ…」





衛宮家


「ただいま」


学園長との酒盛りが随分長引いてしまった。

ちょっとほろ酔い気分になった所で酒がなくなったので、お開きになったのが11時。

家に帰ってみると明かりが着いていたので、2人が帰って来ていることがすぐに分かった。

だが、

「あれ? 遠坂~ネギ君~!」

返事がない。

とりあえず唯一電気がついている居間行く。


「ただ…い…ま」


なんだろうこの光景。

ネギ君と明日菜が何故か椅子に正座して、青白い顔をして振るえながら座っていた。

彼らの目の前のテーブルには縄で縛られた元は白いと思われる汚れた何かが無造作に転がされていた。

「ネギ君、これなんだ?」

「あ、あのこれは「あら、お帰り士郎」……」

ネギ君が何かを言おうとした時、ちょうど遠坂が奥の扉から入ってきた。

ニコニコしながら、血がついた釘バットを引きずりながら……


「ど、どうしたんだ?」


「なにが? 私がどうかした?」


「遅くなったことを、お、怒ってるのか?」


「別に怒ってないわよ?あんたとは関係ない事には怒っているけどね……」


そう言うとテーブルの上に無造作に置かれていた何かに低い声でぼそりと言った。


「起きてるわね。まずは言っておくわ。あんたは言ってはいけない事を私に言った。その罪は海より深く、山より重いのよ
 分かる? つまりこれよりあんたの処刑を行うのよ。あぁ、言っておくけど弁明は聞かないわよ。
 既に私の中では死刑確定の判決が下っているからね」


その言葉にビクリと白い物体が動く。よく見るとイタチみたいな小動物だ。


「今からする事は分かっているわね?」


「ひぃ、たす…たす…」


イタチが何か喋ろうとする。


「と、遠坂さん。か、彼はですね、ぼ、僕の友達で…」


「だから? 私に向かって堂々とあんな事を言いながら、しかも触った……絶対に許さないわ!」


開いた口が塞がらない。遠坂が何を言っているのかもわからないし、何より転がされているイタチらしき動物が懇願するような目でこちらを見ている。

それはもう、某金融会社のCMに出ていた犬のような目でだ。それを見た神楽坂も視線で何か合図している。

とりあえず俺は、この騒ぎの原因を遠坂に尋ねた。


「で、遠坂。何があったんだ? 触ったとか言ったとか何のことだ?」


ゆっくりとこちらを振り向くと、いきなり涙声で語りだした。


「し、しろう~。こいつが、こいつが、私を裸にして胸に触って『ふ、貧乳か…』て言ったのよ!こんな、こんな小動物に私の苦悩を笑われたのよ!」


「触った……!?」


この時、俺は少々酔っ払っていた。まぁ、それが引き金になったと言えるだろう。


「そうか、つまりそいつは遠坂の胸を触ったのか…」


たとえばの話だが、知らない奴に彼女を裸にされ、胸を触られ、挙句に彼女を馬鹿にする発言をされたら、その彼氏はどう思うだろうか?

答えはぶち切れである。

つまりそういう事だ。


「おい、そこの小動物。今の話は本当か? 正直に答えろ」


「士郎さん?」


「ああ、ネギ君。そんなに怯えなくても大丈夫だ。君は関係ないからね」


「ですが…」


「これはそこの小動物と俺との問題だからな。大丈夫だよ、たぶん殺しはしない」


「殺、殺し!?」


「さて、小動物。質問の答えは?」


ガクガク震えながら、必死に逃げようとする。

もちろん、遠坂によって紐で縛られていたので逃げられるわけがない。


「もう一度聞く答えは?」


「ご、ごめんなさい。わわわわ、悪ふざけがす、すすすす過ぎました。おおおおお許しを」


「「……死ね!」」


その後の話は秘密だ。遠坂と俺が共同であんな事やそんな事をやったとだけ言って置こう。

ただ、ひとつ言えるのは一応小動物は死ななかった。ゴキブリ並みの生命力を持っていたようだ。






あとがき

壊れ話の回でした。カモ君にご冥福を。
グダグダな構成になってしまいましたね。私にギャグは書けないと実感しました。
やっぱりシリアスに攻めないとね。次回からシリアスに突入?
結婚話はなんとなく出してみたかったから。

それにしてもしばらく執筆から遠ざかっただけでこんなグダグダになるなんて……orz


[ 2013年10月16日 15:01 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 17

麻帆良学園にとある場所で、ある会議が行われていた。

「やっぱり、ネギ君の様子はおかしいよ」

「そうだね。昼間のパートナー発言とか」

「あぁ、ネギ先生、この雪広あやかがいつでもパートナーになって差し上げるというのに」

「はいはい、パートナーの話は今は置いといて、やるの?やらないの?」

「もちろんやるよ。ね、みんな!」

「「「「オオッ――――――――!!」」」」

かくして動き出すのは、小さな小さな陰謀。





赤い丘より新たな世界へ17





少し暖かくなってきた午後の昼下がり、
俺はエヴァンジェリンの後ろを少し距離をついて歩いていた。

「貴様は何時まで、私の後をついてくるんだ?」

「む、そんな事言われても、俺には位置が分からないし、それにエヴァンジェリンが危ないかもしれないだろ」

「くっ、何処までも真祖を馬鹿にして」

「……君より凄い真祖をしってるからな」

絶倫メガネLOVEの真祖、猫真祖、その名もワルクエイ…もといアルクェイドという真祖を。

「なんか言ったか?」

「いや……」

エヴァンジェリンが侵入者を感知して、既に30分が経っていた。
とりあえず、侵入場所に行き、そこから痕跡を辿っているところだ。

しかし、ゆっくりとした歩みでいいのだろうか。

「エヴァンジェリン、もう少し急いだほうがいいんじゃないか? 侵入者なんだろ」

「衛宮先生。マスターは魔力を封じられて、索敵能力が落ちています。
 そのため痕跡を探るのに時間をとられているのです」

「おわっ! ど、何処から出てきたんだ!」

突然、エヴァンジェリンの魔法使いの従者である絡繰茶々丸が、エヴァンジェリンと俺の間にヌッと現れた。

絡繰茶々丸、エヴァンジェリンとドール契約を交わしたロボットらしい。
正確にはガイノイドタイプのロボットとの事。
学園長から貰った資料によると麻帆良学園内の大学部で作られたそうだ。
見た目は普通の女の子なので、本当にロボットなのか?と思ってしまう。

こちらに茶々丸はチラリと視線をやると、俺の驚きに反応は見せず、エヴァンジェリンに尋ねた。

「マスター、何故衛宮先生がいるのですか?」

「……勝手についてきてるだけだ。ほっとけ。
 それより侵入者だ。ここまで辿ってこれたが、どうも妖精みたいなのだ。魔力が小さくて痕跡が消えかけている。
 できるか?」

「はい。では、索敵に入ります」

カシャという音とともに、茶々丸の頭の上にニョキとアンテナが生え、クルクル回りだした。

「……うん。確かにロボットだ」

その光景を目の当たりにすると、納得してしまう俺だった。





「ネギ――――――ッ」

明日菜は夕暮れの学園を走り回っていた。
さっきまで昨日の件があり、ネギのことが心配だったので一緒に寮まで帰っていたのだ。
ところがちょっと目を話した隙にいなくなってしまった。
明日菜の脳裏によぎるのはエヴァンジェリンの悪魔のようなニヤリと笑う顔。

「……まったく。世話を焼かすんだからっ!」

そんな事をぶつぶつと言いながらも足は止めず、視線をそこら中に飛ばす。

「ネギ―――――――ッ」

「何をやってるんだ神楽坂?」

とそこへ士郎がやって来た。

「あ、衛宮先生。ネギが…て、何でエヴァンジェリンと一緒にいるの!」

明日菜が視線を横にずらすと衛宮士郎の隣にエヴァンジェリンと茶々丸がいた。

「ほう、たいそうなご挨拶だな神楽坂明日菜」

「衛宮先生とエヴァンジェリンが一緒にいるいると言うことは…グルだったの!?」

「はぁ……なんだその安直な考えは」

余りにも短絡的な考えにため息しか出ない士郎。

「だれがこんな男と……この男が勝手に私についてきているだけだ」

フンッと顔をそむけながらエヴァンジェリンが明日菜に言う。

「エヴァンジェリンに勝手についてくる……」

信じられないと言う目で明日菜は士郎を見る。
その目はやっぱりこいつは…という猜疑心に満ちた目だった。

「あんたついにロリコンストー「違うからな。勘違いするなよ神・楽・坂!」…じゃ何で?」

「お前には関係ない神楽坂。それよりネギ君を探していたんじゃないのか?」

そこでようやく明日菜はネギのことを思い出した。
エヴァンジェリンのほうに向き、噛み付くように言う。

「そうだった。あんたネギをどこにやったの!」

髪を逆立てながらビシッとエヴァンジェリンを指さした。
その手を鬱陶しそうに払いのけて、即答する。

「しらん」

「ほんとに?」

「しらんと言ってるだろう。嘘じゃないぞ。そこの男に聞いてみろ。今日一日ずっと私の後ろからついてきていたからな」

すかさず明日菜は士郎に視線を移す。その視線の中からは猜疑心の色は落ちていない。
げんなりしながらも正直に士郎は答えた。

「ああ、今日はエヴァンジェリンは何処にも行ってないぞ。昼間からずっと俺が見ていたからな」

「じゃあネギは何処へ……」

心配そうにつぶやく明日菜に、エヴァンジェリンがからかう様に言った。

「ふふっ、やけに、あの坊やのことを気にかけるじゃないか。情が移ったか神楽坂明日菜?」

「な…あんたには関係ないでしょ!とにかくネギには手を出したら許さないわよ!」

そう言って顔を赤くした明日菜はネギを探しに別の場所へ駆けていった。
それを見送った後エヴァンジェリンが言う。

「ふん、ガキだな。で、衛宮士郎、貴様はどうする?いつまでも私の後をつけても意味が無いぞ。もう今日は帰るからな」

「え、侵入者はいいのか?」

「まぁ、侵入者といってもこの感じからして妖精が迷い込んだのだろう。害は無いが悪戯をするから気をつけることだな」

「わかったよ。忠告ありがとう」

士郎はなんとなく頭に手を置き、なでなでしようとする。
その手を強引に払いのけながら、エヴァンジェリンは士郎を睨みつける。

「ッ!子ども扱いしおって……衛宮士郎、爺から何を言われているか知らんが、私の邪魔をするのなら力ずくで排除するぞ。
 私は『闇の福音』。数多くの人を殺した賞金600万ドルの真祖だ。あまり舐めるなよ」

そう言い放つとエヴァンジェリンは茶々丸を伴って家に帰っていった。
その後姿を眺めながら士郎が思い出すのは、白い少女と自身の罪。

「ふふふ、ついイリヤを思い出して頭を撫でるところだった。
 ……数多くの人を殺した600万ドル賞金首か。
 エヴァンジェリン、俺はたぶん君以上に人を殺しているよ」

寂しそうにに呟く士郎の言葉は、だれにも届かない。





衛宮家


「ただいま~」

シーンと家の中は静まりかえっていた。
気配が少しもしない。寝ているはずの遠坂の気配さえもなかった。

「あれ?どこかに出かけたのかな」

一応遠坂の部屋も覗いてみたがいなかった。

「何処に言ったんだ?」





女子寮


「あ~広いお風呂はいいわね~」

ここは麻帆良学園女子寮大浴場である。
その広大な浴場で、遠坂凛は足を伸ばしてリラックスモードで湯に使っていた。

目の前で行われている3-Aによる『ネギいじり』を眺めながら。

なんでも「ネギ先生を元気づける会」らしい。
実際は生徒による担任へのセクハラにみえる。

「あはは、ネギ君のちっさくてかわいい~」

「おっきくしてみよっか!」

「え、10歳やしおっきくならんやろ」

セクハラの度を越している目の前の光景を見ながら、クラスの中でおとなしい人達の中の長谷川千雨が、凛の側にやってきて声をかけた。

「なぁ、遠坂さん。あんたネギ先生と同居してるんだろ。私が言うのも何だが、あれ、止めなくていいのか?
 なんかもう、元気づける会を通り越してすげー逆セクハラだし」

「いいじゃない。若者は激しいのがいいの。貴方も行ってきたら?」

「若者は……て、あんたも同い年だろ。大体なんで私があんなお祭り連中とかかわらなきゃいけないんだ」

「だったらほっときなさいよ。その内しらけておさまるでしょ。
 大体10歳の男の子が女の子の水着姿で恥ずかしがることはあれ、普通は喜ばないわよ」

「まぁ、それはそうだが……」

だが、長谷川千雨は思った。目の前で繰り広げられている光景。
どっちかと言うと女子が異常に興奮して喜んでる気がする。特に委員長とか鼻血を大量に出してハァハァしながら、ネギににじり寄っている。目が怖い。

「いっか。私は関係ないからな」

そんな光景を見ながらも、長谷川千雨は自分に害は及ばないと判断し、ほっとくことにした。自分に不利な事がない限り人間そうは動かないのだ。


「ちょっとー、何処触ってんですか! あ、見ないでください~!突かないで~!」



エヴァンジェリン家


「茶々丸、準備は」

フリルがたくさん付いた漆黒のゴスロリファションに身を固めたエヴァンジェリンが茶々丸に尋ねた。

「計画は順調です、マスター。このままで行けば数日内で実行に移せます」

「そうか……」

「? どうかしましたか、マスター」

何かを考えるかのように虚空を眺めだしたエヴァンジェリンに茶々丸は尋ねた。

「茶々丸、衛宮士郎と遠坂凛をどう思う?」

その質問に数秒、間をあけて茶々丸は答えた。

「わかりません。彼らの力は未知数と考えます。衛宮士郎、遠坂凛両名ともあらゆる手を使って調べましたが、情報がまったくありません。
 また、マスターのご指示通り衛宮士郎と桜咲刹那の退魔の仕事を監視しました」

「それで?」

「前回マスターが衛宮士郎と戦った時と同じくアーティーファクトを使用しました。
 ですが、アポーツによる物体移動の空間の捩れは観測されていません。
 恐らく、あれは魔力で1から造った物かと思われます」

「馬鹿な! あれだけの魔力を帯びた物を1から一瞬で作り出すだと!そんなことありえない……」

エヴァンジェリンは茶々丸からの報告に驚愕した。
アーティーファクトとは、術者とその従者とで交わされた事により得るか、職人が魔力を得物自体に練りこんで長い年月をかけて作り出すしかないのだ。

「いや、私との戦闘の時、剣を爆発させていたな。熟練した戦士が自身の武器を壊すことは、そうそうにない。
 つまり、壊しても構わないぐらい剣を所持しているか、作り出すか。
 しかし、媒体もないのにどうやって造ってるんだ? まさか本当に1から全部魔力を練って造っているのか? いや、それでは効率が悪い。それにいくらなんでも、あの速度で魔力で1から造るなど……
 呪文も唱えていなかったようだし、系統は錬金術よりか」

ぶつぶつと自分の思考に嵌るエヴァンジェリンに茶々丸が言った。

「マスター、衛宮士郎の呪文は記録済みです。「trace on」が恐らく始動キーで、「I am the bone of my sword.」が呪文かと」

エヴァンジェリンはポカンとして、開いた口が閉まらなかった。

「……一体何処に英語の呪文を唱える魔法使いがいる。奴のことがますます分からなくなった」

魔法使いが英語で詠唱するなど聞いたことがない。大抵の魔法使いはラテン語または古典ギリシア語で詠唱する。
始動キーは詠唱前のパスワードみたいな物で英語、フランス語、キリル文字など幅広いが……

「私が生きてきた中で英語の呪文など……新しい系統の魔法使いなのかも知れんな」

「遠坂凛のほうですが、彼女はまったくの未知数です。無詠唱でかなり強力な魔法は使えるようですが……」

「あぁ、正直私もあの女があの程度の魔法しか使えないなどありえない。だいたい爺が連れて来た奴があれだけの力しかないなど、もっとありえないな」

「いかがいたしますか、マスター」

茶々丸がエヴァンジェリンに指示を仰いだ。

「……監視を続けろ。特に遠坂凛の監視を強化しろ。衛宮士郎の攻撃方法は大体把握した。後はあの女だ。
 攻撃方法さえ分かればこちらも対策は練れるからな」

「了解しましたマスター」





あとがき

正直ごめん。話伸ばしすぎだorz
なかなか話が進まない。
今度からプロット作成時より原作削りをかなりしようかな。

目標は原作1話につき小説1話で進めよう。

これならいいかなと思います。
最近、新人の世話で忙しいので不定期更新が続いていますが、がんばります。
皆様末永いお付き合いをお願いいたします。

アルベール・カモミールごめんな。また君は出てないよ;;


[ 2013年10月16日 15:00 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 16

「う、う~ん……うん?」

明日菜が目を覚ますと、自分の担任であるネギ・スプリングフィールド顔が目の前にあった。





赤い丘より新たな世界へ16





「キャ―――――!」

「ごべらっ!ぶぼっ!」

突然の事態に明日菜は気が動転してしまい、目の前にあるネギの顔を思わず殴る。
明日菜の強烈な一撃を、寝ていたため無防備で受けたネギは、横回転しながら部屋の壁まで吹き飛ばされた。

「あ、あんた―!どこから入ったのよ!」

顔を真っ赤にしてネギに詰め寄より襟を掴んで前後にシェイクするが、すでにネギは目を回して気絶していた。

「むぅ~明日菜どないしたん?」

騒ぎを聞いて目を覚ました、明日菜の同室の近衛木乃香が寝起き顔でこちらを見ている。

「こ、木乃香、この変態教師が私のベッドに入ってたのよ。まったく、信じられない!
 いくら子供だからってやっていい事と悪いことがあるって言うのに」

そう言って、ペイッとごみを捨てるかの様に掴んでいた襟から手を離す。
もちろんネギは気絶しているため、その場にベチャと買ったばかりのアイスクリームがコーンから落ちた時の様に潰れた。

「あ~、あのなぁ明日菜」

同情の眼差しをネギに向けながら、興奮する明日菜に木乃香が言う。

「何よ?」

「ネギ君がここにおるんのはな。昨日の夜、明日菜が倒れたからってここまで運んできてくれたからなんよ」

「はぁ?私が倒れたっていつ……。アッーーー!」

そこでようやく明日菜は昨日の夜の事を思い出した。

(確か昨日の夜、桜通りでのどかちゃんが吸血鬼に襲われて、その場に偶然居合わせたネギが吸血鬼を追いかけて行ったんだっけ。
その後を私が追いかけて……追いかけてどうしたんだっけ?)

「ネギ君ずっと心配して看病しててくれたんよぉ?ほら、頭ぶつけたから心配やって」

そう言うと木乃香が手鏡を明日菜に差し出す。
明日菜はそれを受け取ると自分の顔を鏡に映した。

「な、何よこれ~!」

そこに映っていたのはおでこに円形の痣をつけている自分の顔だった。






学園長室


「そうか。いや、報告ご苦労じゃたな衛宮君」

ふぉふぉふぉとバルタン笑いをしながら朗らかに学園長が言う。

「はぁ、本当に大変だったんですよ?特に最後が……」

「ん?何か言ったかの?」

「いえ、何でもありません」

結局、昨日の夜のエヴァンジェリンと遠坂の口喧嘩は明け方まで続いた。
終了の合図は、日が出てきたのに気がついたエヴァンジェリンが帰ると言い出したからだ。
恐らく、日が出てきて魔法が使えなくなったからだろう。校舎の屋上から立ち去ろうするエヴァンジェリンと茶々丸に、遠坂は最後まで罵詈雑言を・・・・
その遠坂も先ほど家に立ち寄った時に、疲れたから報告は任せると言って、さっさっと自分だけ寝てしまった。
まぁ、あれだけ壮絶な口喧嘩をすれば疲れるだろう。


「で、ネギ君は大丈夫かの?」

「大丈夫とは?」

「エヴァに勝てるか? と言うことじゃよ」

「それは……勝てるかどうか言われれば、ほぼ勝てないでしょう。
 エヴァンジェリンの経歴が話どおりであれば、経験の差で圧倒的にエヴァンジェリンが有利です」

先日、学園長から吸血鬼がエヴァンジェリンという事を聞いた俺たちは、彼女について色々調べていた。

本命 Evangeline.A.K.McDowell
推定年齢600歳前後。
特殊な生い立ちの為、多くの刺客に狙われ、その全てを跳ね除けて今まで生き続けて来たそうだ。
魔法会では賞金600万ドルと言う莫大な賞金がかけられている。
『闇の福音』という名で魔法世界では恐怖の対象だそうだ。


「まぁ、そうじゃろな。経験の差が大きいからの。
 それでは君たちは如何するのじゃ?ネギ君を助けるのか」

「いいえ。様子を見ます。遠坂は徹底抗戦と言っていましたが、俺はネギ君の成長のためにも、この戦いは必要だと思います」

きっぱりと俺の考えを学園長に話した。

「……ほぉ、それは君の経験からかの?」

すると学園長が目を細めながら何かを探るように俺に尋ねる。

「……そうですね。俺の時はこんなもんじゃなかったですけど」

そう、俺が経験したのはこんな生優しい物ではなかった。

聖杯戦争。
知略と暴力が渦巻き、憎悪と欲望が蔓延る殺し合い。
あの時の経験が結果は如何あれ、俺をここまで成長させたのだ。
ネギ君はまだまだ甘い。
子供だからと言うこともある。
だが、いずれにしても、いつか彼は見なくていけない。知らなくてはいけない。
こちらの裏の世界はまだ知らないことが多いが、裏の世界は何処まで行っても裏なのだ。
危険な事に関わると言う事が、どんな事なのかを彼は知らなくては。

「すまんな。嫌な事を聞いたようじゃな」

余程深刻な顔をしていたのだろう。学園長がそう俺に声をかけてきた。

「いえ。気にしないでください」

「そうか。では傍観と言うことじゃな」

「はい。我侭言ってすみません」

「いいんじゃよ。わしもネギ君にはこういう経験は必要と思うからの。特にナギの息子であるネギ君はな」




その頃、ネギは明日菜に昨日の事を話しながら学園に向かっていた。おでこの痣については転倒した時についたと話した。

「ふ~んなるほどね。エヴァンジェリンが吸血鬼だったんだ」

「ええ、だから学園に行きにくくて」

ネギの脳裏には昨日のことが浮かぶ。

迫りくる鋭く伸びた犬歯と朱い唇。
チラリと覗く舌。
そして何よりもエヴァンジェリンの愉悦に浸った顔。

ごくりと喉がなる。
そんな青ざめたネギに明日菜が何でもないように声をかけた。

「大丈夫よ。学校で襲ってきたら校内暴力とか言って停学にすればいいじゃない」

「そ、そ、そんな単純な話じゃないんですよ!」


キーンコーンカーンコーン


「あ、ほら鐘が鳴ってる急ぐわよ。教師が遅刻なんて恥ずかしいでしょ」

そう言うと明日菜はネギの腕を掴むと駆け出した。

「あ~ん、ちょっと待ってくださいよ。まだ心の準備ができてません!」




衛宮家

学園長の報告が終わると、俺は一旦家に戻った。

「ただいま、遠坂~寝てるのか?」

家の中から返事は無い。寝ているようだ。
とりあえず、来ていた服を脱ぎ、シャワーを浴びる。

風呂から上がるとジャージに着替え学校に行く準備をした。
最初の頃はスーツを着ていたが、用務員の仕事もするようになって最近はジャージで通っている。
家を出る前に遠坂の部屋に立ち寄り様子を見た。

ベッドの上でスゥースゥーと寝息を立てて寝ている。なぜか下着姿で。
昨夜着ていた洋服は、ベットの周りに脱ぎ散らかしてあった。

「はぁ、もう少しこういう所はキチンとしてくれないかなぁ」

そうつぶやくと、起こさないように部屋に入り、脱ぎ散らかしてあった服を集めて畳み、部屋の椅子の上に置いておく。
まだ、肌寒い季節なので寝ている遠坂に毛布をかけた。
それがすむと、小さな声で「お休み」と言うと、俺はゆっくりと音を立てないように部屋から出て行った。




麻帆良学園 3-A教室前

「ど、どうですか?エヴァンジェリンさんはいますか?」

オドオドしながらネギは明日菜に尋ねた。
明日菜は教室の扉から首だけを中にいれ見回す。

「いないわね。そういえば普段からエヴァンジェリンはあんまり見かけないわよ。ねぇ木乃香」

「そやねぇ。ウチもあんまり見いへんわ。授業中もおらへんしなぁ」

二人の言葉にネギはホッと息を吐き、教室の扉に手をかけ開けようとした。

「ネギ先生」

「わあぁ!」

突然ネギは後ろから声をかけられ飛び上がった。
声をかけてきたのは、昨日の夜にエヴァンジェリンと一緒にいた茶々丸だった。

「あ~、茶々丸さんおはよう」

のんきに挨拶する木乃香とは対照的に、ネギの顔は死人のように青ざめた。
話を聞いていた明日菜は身構える。
と、茶々丸の側にエヴァンジェリンがいないことに気づいたネギは恐る恐る尋ねた。

「エ、エヴァンジェリンさんは?」

「―――マスターは学校には来ています。
 ですが教室には来てません。つまりサボタージュです」

「よ、よかった」

「……お呼びしますか?」

「とんでもないですぅ。結構です!」

「……そうですか」




麻帆良学園屋上


「こういうのって普通は水道局の人がするのかな?」

そうぼやきながらも俺はパイプの破損箇所を探した。

ここは麻帆良学園の屋上。ここにいるのは昨日のネギとエヴァンジェリンの戦闘で貯水タンクのパイプが破損したらしい。
その修理を学園長に頼まれたからだ。

「――――同調、開始」

魔術を使い、破損箇所を調べる。

「全部で5ヵ所か」

漏れ出した水は、屋上の端のほうにある排水溝へ流れているから周りは水浸しにはなっていない。
だが亀裂が5カ所あるのだ。相当の水が流れ出していた。

「こういうのをを塞ぐのは結構大変なんだけどなぁ。学園長も簡単に言ってくれる」

先ほどみたいにまたぼやく。
ここ最近、用務員の仕事を請け負う様になってから、学園長の注文がえらく多い。
やれ、階段の破損した床板パネルや校内の破損した壁を直せとか、木製ベンチの修理とか等だ。
そして、何より許せないのが3-Aの連中。
あいつら何をしたらこんなに壊すんだ?と思うほど机や椅子の破損が多い(偶に血糊がついているのは深く考えない)

「ネギ君一人でだいじょうぶかな?」

そんなことを考えながらも手はテキパキと動かす。
工具箱から取り出したチューブ型パテで亀裂箇所を埋めて、乾くまで待つ。
乾いたらその上にシートを巻き、またその上からパテを塗る。
投影の魔術を使ったほうが楽だが、こんなことに魔力を使いたくない。それにこの身は剣に特化した存在。
無理な投影は遠坂に禁止されている。

「よしっ。こんなもんかな」

1時間ほどで作業は終了した。
ずっとかがみこんで作業していたので、うーんと背筋を伸ばしコリをほぐす。
と、そこで屋上に誰かいる事に気がついた。
日陰の部分で、誰かが壁に背を預けて寝ているようだ。さっきまで屈んで作業に集中していたから気がつかなかったらしい。

「あれ、いま授業中じゃないか。まったく、サボりだな」

そんなことに気づいた俺は授業をエスケープしてきた生徒を注意しようと近づく。

「君、授業をサボっておひるね……」

「ふわ~あ。ん?」

しばし見詰め合う。

「「あ―――――!」」

そこで寝ていたのはエヴァンジェリンだった。

「貴様、ここで何をやっている!」

すかさず戦闘態勢のエヴァンジェリン。そんな彼女に呆れながら俺は言った。

「なにってなぁ。昨日のお前たちの戦闘の尻拭いだ」

「はぁ?」

「昨日の戦闘で貯水タンクのパイプが破損したんだよ」

先ほどまで流れ出していた水の跡を指差して言う。

「そうか、それはそれはすまなかったな」

反省の色をまったく見せない棒読みでエヴァンジェリンが言う。

「……おまえなぁ、少しは反省しろよな」

「何故私が反省しなければいけないのだ。この学園に封印したのが悪いのだ。私がそんな事知るか」

「……」

「大体だな、お前たちが……」

突然エヴァンジェリンが話の途中に黙り込んでしまい、顔を下げた。

「? どうした?」

「……小さいが、何か来たな。学園の結界を越えた者がいる」

唐突にポツリとかわいらしい唇から漏らした。

「なんだと」

黙り込んでいたのは結界に集中していたためらしい。

「侵入者だ。調べに行く」

それだけを言うとさっさっと屋上から出て行こうとする。

「あ、おいちょっと待て。俺も行く」

「必要ない」

「何言ってんだ。危ないかもしれないだろ」

「……貴様誰に向かってそんなことを言ってるんだ?
 私は真祖の吸血鬼だぞ。そうそう遅れは取らん」

「お前こそ何を言っている。今は日中で、満月じゃない。昨日みたいに行かないぞ。
 それに俺も学園の警備員だ」

「……フンッ。勝手にしろ」

そう言うと彼女は屋上から出て行った。





後書き


最近どうも筆が遅く、文がめちゃくちゃになる傾向が・・・・・・
少々気が緩んでいるのかもしれません。
初心に帰ってがんばります。


[ 2013年10月16日 15:00 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 15


「ネギ君は?」

「あそこだ」

校舎の屋根の上では睨み合うネギ君とエヴァンジェリンの姿があった。





赤い丘より新たな世界へ15




俺は学園長への報告が終わった遠坂と合流して、ネギ君がいる場所から少しはなれた建物の屋上にいる。

「へー、追い詰めているみたいじゃない。これなら大丈夫ね」

「いや、見ろ。エヴァンジェリンには協力者がいるみたいだ」

校舎の上では何故か下着姿になっているエヴァンジェリンとネギ君が何か話している。
とそこへ、何処からともなく現れた人影が彼女を守るように立ちはだかった。

「あの子は・・・・・・」

「出席番号10番の絡繰 茶々丸。エヴァンジェリンの仲間みたいだな」

「なるほど、ミニステル・マギ(魔法使いの従者)ということね」

聞きなれない言葉を遠坂が言った。

「何だそのミニなんとかというの?」

「ミニステル・マギ(魔法使いの従者)よ。学園長に借りた本にあったわ。
 魔法使いは呪文詠唱中は完全に無防備になるの。だから、その間に攻撃を受ければ致命傷になるし、呪文も完成できない。
 そこで考え出されたのがミニステル・マギ(魔法使いの従者)ってわけ。
 ミニステル・マギ(魔法使いの従者)は、詠唱中の魔法使いの盾となり剣となって主人を守るのよ。
 あの様子からすると、たぶん絡繰さんがエヴァンジェリンの従者みたいね」

遠坂のミニステル・マギについての説明の後、普通に俺は思った。

「ということはネギ君危なくないか?
 彼にはミニステル・マギ(魔法使いの従者)がいないんだからさ」

し~んと一瞬その場の空気が固まった。

「・・・・・・ちょっとやばいかも?」






「ちゃ、茶々丸さんがエヴァンジェリンさんのパートナーなんですか!」

ネギの目の前に現れた茶々丸は、マスターであるエヴァンジェリンを守るように構える。
そして、エヴァンジェリンは勝利の笑みを浮かべた。

「残念だったな坊や。これで私の勝ちだ」

「申し訳ありませんネギ先生。マスターのご命令ですので」

「くっ、パートナーがいなくたって!風の精霊 11人・・・・・・あぶぶぶ」

ネギが呪文を唱えようとするとすかさず茶々丸が妨害する。と言っても軽くはたいたり、頬を抓る程度の攻撃だ。
何度もネギは攻撃しようとするが、そのたびに茶々丸が妨害し、ついに羽交い絞めにされた。

「ふふふ、ようやくこの日が来た。奴が私にかけた呪いを解く日が!」

そう言いながらエヴァンジェリンは茶々丸に捕まったネギにゆっくりと近づく。

「え・・・の、呪いですか!?」

突然の事に驚くネギへエヴァンジェリンは、嬉しさを隠し切れないのか顔をニヤニヤ笑わせながら言った。

「そうだ!お前の・・・・・・お前の父親であるサウザンドマスターに敗れて以来、私は魔力を極限まで封じられて、15年間もノー天気な女子中学生と一緒にお勉強させられているんだよ!」

「そ、そんな事を急に僕に言われても~」

「・・・・・・この呪いを解くには奴の血縁たるお前の血が大量に必要なんだよ。
 だから悪いが死ぬまで吸わせてもらうぞ」

エヴァンジェリンの口から吸血行為のための異様に長い犬歯がギラリと覗く。
その迫力にネギは恐怖に駆られ叫んだ。

「うわ~ん、誰か助けて~!」






「――――同調、開始」

先ほどよりさらに視力を強化し、精神を標的に集中させる。この一撃ははずせない。

「――――投影、開始」

投影するのは漆黒の弓と先端が吸盤になっている玩具の矢を投影する。

「士郎」

「わかっている。軽く脅しをするだけだ。害はないさ」

キリリと弦を引くと俺は矢を放った。
銀の閃光が夜空を切り裂き、標的へ一直線に走る。





「あ~ん、カプッ」

「あぅ・・・あっあぁ・・・・あ」

ネギの首筋にエヴァンジェリンは噛みつき、チューチューと血を吸すっているとそこへ

「コラーこの変質者ども―――っ!!ウチの担任に何すんのよ――――ッ!!」

ドカッ

「はぶぶぅっ」

突然現れた乱入者に、エヴァンジェリンはとび蹴りを貰い茶々丸と一緒に屋根の端まで飛ばされた。
だが腐っても真祖、この事態に混乱しながらもすぐさま起き上がる。
とそこである事に気がつき驚愕した。

「ま、魔法障壁を破っただと!?」

戦闘中は常時展開しているはずの魔法障壁をいとも簡単に乱入者は破ったのだ。
力が弱くなっているとはいえ、簡単には破れないはずなのに。

「い、一体だれが・・・・・」

乱入者を確かめようとエヴァは振り向くと


そこはカオスだった。


「あ、明日菜さん、しっかりしてください!傷は浅いです!」

「神楽坂、すまない。お前が飛び込んでくるとは・・・・・・」

「明日菜ちゃんしっかり!死んじゃダメよ!」

なぜか額から玩具の矢を生やし、目を回して気絶している神楽坂明日菜と、いつの間にか現れた衛宮士郎と遠坂凛がいた。
突然降って沸いた映画のワンシーンの様な光景にエヴァンジェリンの頭は混乱した。

「明日菜さん、明日菜さん!」

「あ~高畑先生だ~、タカハタせんせい~」

ネギの呼ぶ声に明日菜は訳の分からない事を言いながらネギに抱きつく。

「や、やばい。幻覚症状だ。おいしっかりしろ神楽坂!」

「明日菜ちゃん、気をしっかり持って!」

ギャーギャーと騒ぎまくるネギたちに、ハッと混乱した頭からようやく抜け出したエヴァンジェリンは、自分の存在を無視している士郎たちに向かって叫ぶ。

「おい、お前ら!私を無視するな!」

その叫びに見向きもしない士郎たち。
すかさず茶々丸がつっこむ。

「残念ながらマスター、彼らはまったく聞いていません」

「くっ」

エヴァはズカズカと近づき、士郎たちに己の存在を知らせようとした。

「おい、聞けお前ら」

「くっ、完全に気絶した。・・・・・・あの場合は仕方がないよな?」

明日菜の頬をペチペチ叩きながら、士郎は遠坂にいい訳をする。

「そうね。仕方ないといえば仕方ないわよ。
 まぁ脳震盪だと思うから、そんなに心配しなくても大丈夫よネギ君」

「で、でも。さっき死ぬな!とか言ってませんでしたか?」

「冗談に決まってるでしょうネギ君。これでも私はそこらの医者以上に人体には詳しいのよ。とりあえず安静にしていれば大丈夫だから」

明日菜を診断した遠坂がオロオロするネギに言う。
それを聞いたネギはホッと胸を撫で下ろした。

「あ~だけど起きたらやばいかもな」

突然士郎が頭を抱える。

「何でですか?」

「だってこの矢を射ったのが俺だとわかったら」

明日菜のおでこに張り付いていた玩具の矢をプラプラと振りながら士郎が言った。
ちなみに明日菜のおでこにはくっきりと円形の吸盤による痣がついていた。

「確実に怒るわね。よくてグー1発、悪くて半殺しかしら。私は半殺しにかけるけどね、明日菜の性格なら」

「はぁ~だよな~。・・・・・・よし、ネギ君後はまかせた。先生としてちゃんと寮まで送るんだよ」

さわやかスマイルでネギ君の肩に手を置きながら士郎が言う。

「え、なんで僕が!」

「だって君は彼女の担任だろう?」

そんなほのぼの?とした3人のやり取りに、ついにエヴァンジェリンは我慢できなくなり、あらん限りの叫びを上げた。


「い、いい加減にしろ~お前ら!私を無視するな~~!!」


ピタッ


ようやくエヴァンジェリンの存在に気がついた士郎たちは動きを止め、そちらを見る。

「はぁ、はぁ、お前ら私を無視するとはいい度胸だな。この屈辱忘れんぞ」

荒い息を吐きながら何処となく目も潤ませながらエヴァンジェリンがこちらを睨んでいた。
遠坂は明日菜をネギに預けるとエヴァに言った。

「あらエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん、こんばんわ。
 こんな時間にこんな所で何をしていらっしゃるのかしら、子供はそろそろ寝る時間よ?」

完全にあかいあくま猫かぶりバージョンである。

「ふん、どうせ見ていたのだろう、この狸が。だいたい貴様の方が私より子供だろうが、この貧乳の小便くさい小娘が」

エヴァンジェリンの挑発に遠坂は我を忘れて激怒した。
無理もないだろう。ロンドンにいるころに、桜に匹敵するぐらいまで成長した胸が、今では昔以上に・・・・・・。

「ひ、貧乳ですって!そ、それを言うなら貴方もでしょうが!
 だいたい貴方は私より600歳ぐらい年上なんでしょう。
 真祖だろうがなんだろうがしらないけど私からすれば、しょせんあんたなんかただの皺くちゃのババァよ!」

「な、なんだと。私の何処が皺くちゃババァだ!まだピチピチなのだぞ。見ろこの柔肌をこれでもババァだと言うのかこの小娘が~!」

「お、落ち着けよ二人とも。今そんな話をする事ないだろ」

喧嘩を始めた二人をなだめ様と士郎は声をかけた。

『アァ?そんな話~ぃ?』

二人同時に振り向き、視線で人を殺すどころか神を殺せるぐらいの眼光で士郎を睨む。

「い、いえ。なんでもありませんです。はい。なんでもありません」

全身に冷や汗をかきながら、士郎は再び壮絶な口喧嘩を始めた二人を見て思った。
魔術や魔法を使わない事だけはありがたいと思っておこう。



「あの、士郎さん僕はどうしたらいいんでしょうか?」

二人の壮絶な口喧嘩を不安そうに見ながらネギは士郎に尋ねる。腕の中には相変わらずおでこに間抜けな痣を残して、気絶している神楽坂。

「あ~、とりあえず神楽坂を寮まで運んで上げてくれ。確か近衛と同室だったと思うから」

「分かりました。士郎さんはどうするんですか?」

「・・・・・・とりあえずあの二人を止めて、学園長の所へ報告に行ってくる。遅くなると思うから先に帰って寝てて」

「分かりました。・・・・・・生きて帰ってきてくださいね」

「うっ、善処するよ。ほら、早く行かないとまた捕まるよ」

ネギは明日菜を抱えると杖に乗り、女子寮を目指して一目散に飛んで行った。余程エヴァンジェリンの事が怖かったのだろう。
いや、二人の争いに巻き込まれたくないだけかもしれない。
そんな事を考えながら、残された俺は今だ口喧嘩を続ける二人を見てため息を吐く。


「この貧乳の××××が!おまえなど女の魅力のカケラもないわ!ほれ見ろ、このダイナマイトボディの私を」

とエヴァンジェリンはドロンと先日襲ってきた金髪の美女に姿を変えた。確かにダイナマイトだ。

「何馬鹿な事を言ってるのよ。そんなの幻影じゃない。
 大体魅力がないですって?チャンチャラおかしいわね。だって士郎は私の魅力にメロメロなのよ!」

「あぁん~お前の魅力にメロメロだと言うのかあの男は。だったらあいつはロリコンだな。そしてその変態を魅了して喜ぶお前も変態だ」

「な、な、な、なんですって~。よりにもよってなんて事を言うのよ!」

エヴァンジェリンの言葉にさらに逆上する遠坂。さすがに俺もそんな事を言われれば黙っていられない。

「オイ、勝手に人をロリコンだとか、変態とかいうな!俺はいたって健全だ!」

するといつの間にか士郎の横に茶々丸が立ち、妙に冷静な口調でつっこむ。

「いえ、士郎先生。遠坂さんに手を出している時点で貴方はロリコンです」

「うっ・・・・・・と、とにかく二人とも口喧嘩はそこまでにしておけって、明日も学校があるんだぞ?早く帰って寝ろ、子供は寝る時間だぞ」

士郎の説得にエヴァンジェリンは絶対零度の冷ややかな視線を向けて言い放った。

「黙れロリコン。貴様の指図はうけない」

「士郎。ここまで言われたら私も引き下がれないわ」

睨み合う遠坂とエヴァンジェリン。二人の間には壮絶な火花が散っていた。
その光景に何を言っても無駄だなと悟った士郎はため息を尽きながら言う。

「・・・・・・はぁ、もう勝手にしてくれ」

そしてそれが始まりの合図となった。








はい第15話の終了です!
明日菜ごめんよ。君の一瞬の輝かしい活躍は忘れない。
それと明日菜に矢が当たる前に投影した矢を消せばいいなどの指摘はご勘弁をm(__)m
そして茶々丸、お前はツッコミ役に決定だよ。
という感じの15話でした。
そして次回こそはカモ君が出演します!お楽しみに。



おまけ


「どうぞ士郎先生」

「あ、わるいなお茶なんか貰って」

「いいえ。構いません」

遠坂とエヴァンジェリンの壮絶な口喧嘩を前に、少し距離をとり、何処からかもって来た茣蓙の上に座り、お茶で和む士郎と茶々丸。

「そろそろ夜が明けるな」

「そうですね」

「早く終わると良いな」

「そうですね」

「ちょっと止めてきてくれない?」

「すみません無理です」

一体何時まで続くのか乙女のバトル!

おわれ!
[ 2013年10月16日 14:59 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 14

「遠坂さん。この感じは・・・・・・」

「ええ、魔力を感じるわね」






赤い丘より新たな世界へ14







ほのかに消毒液の匂いがする保健室のベットには、佐々木まき絵はスヤスヤと眠っていた。
しずな先生が言うには、昨日桜通りで寝ているのを発見されたとの事だ。

「甘酒飲んで寝てたんじゃないの~」

と暢気に椎名桜子が言う。
周りには3-Aの面々が、狭い保健室の中に、まき絵を心配して押しかけていた。
それぞれ口々にまき絵について、ガヤガヤと口々に喋って騒がしい。

そんな面々を後ろに、遠坂とネギ君がひそひそと何か話していた。

「どうしたんだ?」

「それが『魔力の痕跡があるわ』・・・・・・そうなんです」

ネギ君の台詞を遮り、遠坂が俺に言った。
眠っている佐々木の首を指差して、状況説明をしだした。

「まき絵さんの首周りを見て。傷が二つあるわ。ここを中心に微かだけど魔力を感じる。それにこの傷の感じは・・・・・・でもこれは・・・・・・」

ブツブツと思考の渦にはまり込んでいく遠坂。俺も指摘された傷を見たときに気づいた。
そう、吸血鬼に噛まれた時の傷と似ていた。遠坂もそれに気づいたのだろう。
こちらの世界では吸血鬼というのが、どのような物か判らないが佐々木を見た感じは普通に眠っている。
噛まれたとしたら死徒に、または死者になっているはずである。
佐々木からそのどちらの感じもしないのが、遠坂は疑問に思っているのだろう。
だが、この首の傷から見て吸血鬼に噛まれたという可能性は高い。
何時、どの様な事が起こっても大丈夫な様に、俺は武器の設計図を造っておく。隣の遠坂も険しい表情をしている。おそらく同じ考えなんだろう。
でも、もしもの時は俺が・・・・・・

「どうしたんですか?」

心配そうにネギ君が見上げている。俺の表情が硬くなっているのに気がついたのだろう。

「いや、なんでもないよ」

この子には教えられないなと思った。
自分の生徒というより友人に近いかも知れないが、それを殺すかもしれないことになるなんて、絶対に教える事は出来ない。

とその時

「失礼するぞい」

学園長が保健室に来た。生徒の1人が倒れていたと聞いてやって来たのだろう。

「おっと、みんな来ておるのか。あ~申し訳ないんじゃが衛宮先生と遠坂さん以外は教室に戻りなさい」

「衛宮先生はわかるけど、なんで遠坂さんもなのですか?」

学園長の言葉に綾瀬夕映が疑問を持つ。

「事情は話せないんじゃ。ネギ君、生徒を教室まで連れて行きなさい」

「えっ!僕もダメなんですか?」

「すまないな。衛宮先生たちだけと話しをしたいんじゃよ」

「・・・・・・判りました。皆さん教室に戻りましょう」

ネギ君は学園長の雰囲気から何かを感じ取ったのだろう。
それ以上何もいわずに、ブーブー文句を言う生徒達を保健室から外に押し出して、自分も最後に出て行った。

「で、話は吸血鬼の事ですか?」

遠坂が先に学園長に聞く。

「まぁ、そうなんじゃが。・・・・・・2人とも何をピリピリしておる?」

「学園長、1つお聞きしたいのですが」

「なんじゃ?」

「吸血鬼に噛まれたらどうなりますか?この世界でも、やはり死徒または死者になるんですか?」

俺が最も聞きたい事を遠坂が学園長に尋ねた。

「死徒というのが何かは判らんが、吸血鬼に噛まれたら、吸血鬼になるわけではないぞ。この世界で吸血鬼と言うのは、失われた秘術で吸血鬼になった者のことを言うのじゃ。
 そっちの世界ではどうなるかは知らんが、そんなに警戒せんでも大丈夫じゃよ。
 まぁ、操られたりするがそれも解呪できるからの」

学園長の言葉に俺達はホッと胸を撫で下ろす。とりあえずは佐々木は大丈夫みたいだ。用意していた設計図を霧散させる。

「それでじゃがな。今回のこの事件についてなんじゃが・・・・・・実は犯人は判っておる」

「犯人がわかっている?どういうことですか?」

ズイッと遠坂が学園長に迫る。さすがにこれは俺も頭にきた。判っているのなら、何故止めないのか、何故捕まえないのか、学園長の考えがまったくわからない。

「う、うむ。まぁそう興奮しなさんな。多少は血が減るがそこまで害は無いし、それにこの事件の犯人は生徒なんじゃよ」

「「生徒?」」

「2-Aにエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルという子がおるじゃろ?あの子は事情があって、この学園に封印されている真祖の吸血鬼じゃ」

「「真祖!」」

真祖とは、世界の意思によって生み出された精霊に近い存在。はっきり言って、あの聖杯戦争の時のサーヴァントでも勝てないだろう。

「そっ、そんなのがこの学園に封印してあるの?」

「いまは封印の影響で人間と変わらんがな。満月になるか血を吸えば多少は魔法を使えるようじゃが」

「・・・・・・つまりそれ程は危険ではないという事かしら?」

「まぁ封印が解ければ並みの魔法使いでは太刀打ちできんじゃろ。ほれ、衛宮君達が襲われたと言っておったじゃろ。
 君達を襲ったのも彼女じゃよ。まぁ、あの時は4割ぐらいの力だと思うんじゃが・・・・・・」

「はぁ、よかった。こっちの世界では真祖ってその程度なんだ」

「まったくだ。あのアルクェイドさんみたいな人だったらどうしようかと思ったよ」

アルクェイド・ブリュンスタッド、向こうの世界でただ1人になってしまった真祖の姫君。今は眼鏡の騎士と一緒にお城でラブラブしてると思うが、あの人と出会ったときは凄かった。本気で死にそうになった。

「その程度なんてエヴァに聞かれたら大変じゃ。そんなにそっちの世界の真祖は凄いのかの?」

「凄いなんてもんじゃないですよ。本気出したら地球最後の日です」

「なんと!」

俺の話に学園長の目が見開かれた。そうと驚いているようだ。

「ふむ、やはり世界が違うというの根本が違うというか・・・・・・あ~でだ、話を戻すぞい、エヴァが何をしているかと言う事じゃが、エヴァの封印はネギ君の父親が行ったものでの、その名も『登校地獄』と言う。
 でこの封印まぁ呪いのほうが正しいかの。これを破るためには呪いをかけた者の血縁者か、本人の血で解けるみたいなんじゃよ。
 だから、今のうちに他の者の血を吸って魔力を蓄えてから、ネギ君を襲うつもりなんじゃろ」

なんかすごい呪いだな。登校地獄なんて誰が考えたんだ?横を見ると遠坂の顔も少し引きつっている。ネーミングセンス最悪だし。

「つまり私達に、ネギ君の周りを注意しろと言う事ですか?」

「いや、逆じゃ。手を出さないで欲しい」

「それはどうしてですか?」

「あの子の成長のためじゃよ。まだ今は子供じゃが何時かは大人になる。それにあの子の父親は裏の世界では余りに有名すぎる。その事であの子自身に何らかの危害が加えられる事があるじゃろう。
 いつまでも誰かが守ってやる訳にはいかん。ネギ君はいつか自分の力で生きていかなくてはいけなくなる。そのための試練じゃよ」

「・・・・・・そうですね。俺もそれには同意です。ですが、過保護かもしれませんが、本当にネギ君が危ないと感じた時は介入させてもらいます」

「それはかまわんよ。・・・・・・本当に君達はネギ君を大事にしとるの」

「当たり前じゃないですか家族なんですから」

「そうか、家族か・・・・・・」

そう言って学園長は、よっこらしょと腰を上げて保健室のドアに向かった。

「衛宮君と遠坂君、あの子の事をよろしく頼むぞ」

「はい」

そして学園長が出て行った保健室には、俺と遠坂とまだ眠りこけている佐々木だけが取り残された。

「さて、とりあえずはどうする?」

「とりあえずは様子を見ましょう。そのうち何らかのアクションを向こうから起こすと思うから」

「そうだな。じゃ、俺はまだ仕事があるから。遠坂は授業がまだ残っているだろ」

「そうね。あ~あ、中学生の授業なんてつまんないわ」

そんなことを遠坂はぼやきながら保健室から出て行った。そして俺も仕事に戻るために保健室から出た。






夜、桜通り

ざわざわと少し強い風に揺られて、桜通りには花びらが舞っていた。
頼りない街灯と月明かりに照らされた、そんな通りを宮崎のどかは歩いていた。
先ほど明日菜たちと別れて1人で寮に向う途中である。

「か、風強いですねーーちょっと急ごうかな~」

のどかの頭の中には今日の話が思い浮かんでいた。
吸血鬼なんていないと思っていても、薄暗い夜道を1人で歩くのはかなり心細い。
ザワッと木々が風に揺られるたびにビクッと体をふるわせる。

「こ・・・・・・怖くない~、・・・・・・怖くないです~・・・恐くないかもぉ~・・・・・・」

心細さを紛らわせようと、即興の鼻歌を歌ってみるが、逆に周りに誰もいないと言う事を再認識させるだけだった。

「ちょっと急ごうかなー」

誰もいない空間にそう言うと、さっきより早歩きになって寮に急ぐ。
とその時

「27番宮崎のどかか・・・・・・悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」

「えっ!」

突然、何処からか声が聞こえると、のどかの頭上を黒い影が覆った。






校舎屋上

「で、どうする?さっそく相手が動き出したぞ」

「大丈夫よ。ほらネギ君が向かってるわ」

「でも、その後ろの方から神楽坂達も向かっているんだが?」

「・・・・・・士郎、行って来なさい!」

「何で俺だけなんだ?」

「あんた1人でも大丈夫でしょ。学園長に報告してから、私もすぐに行くから先に行って」

「・・・・・・りょ~かい」

そうして2つの赤い影が消えた。






桜通り

「まてー!ぼ、僕の生徒に何するんですかーっ!」

『ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人 縛鎖となりて 敵を捕まえろ 魔法の射手・戒めの風矢!!』

今まさに宮崎のどかの首筋に噛み付こうとした吸血鬼に向かって、ネギは捕縛魔法を使った。

「ちっ、もう気づいたか。氷楯・・・・・・」

すぐさまネギの存在に気づいた吸血鬼は、小瓶を投げつけてネギの呪文をはじき返した。
しかしさすがに勢いまでは止められず、はじきとばされる。
そして月明かりに照らされた吸血鬼の顔をネギは知っていた。

「き、君はうちのクラスの、エヴァンジェリンさん!?」

「フフフ、10歳にしてこの力。さすがに奴の息子だけはあるな」

そう言ってエヴァンジェリンはニヤリと笑った。
黒いマントを風にたなびかせながら、ゆっくりとネギに歩み寄る。

「な・・・・・・何者なんですかあなたはっ!
 僕と同じ魔法使いのくせに何故こんな事を!?」

ネギの叫びが夜の桜通りに響く。
その叫びをエヴァンジェリンはマントの下から小瓶を取り出しながら答えた。

「この世には・・・・・・良い魔法使いと悪い魔法使いとがいるんだよ、ネギ先生」
『 氷結 武装解除! 』





「ネギ君!!」

俺が桜通りについた時、黒い影が遠ざかっていくところだった。既に現場には神楽坂たちがいた。

「士郎さん!彼女達をお願いします!」

「え?あ、ちょっと!」

それだけを言うと、俺の呼び止める声も聞かずに、ネギは風の様に走り出して、あっという間に見えなくなった。

「私もちょっと行ってくる!」

「ちょ、明日菜~」

「ま、待て、神楽坂」

その後を神楽坂が、ものすごいスピードで追い駆けて行ってしまった。
その場に残された、俺と近衛は呆然としてしまった。追い駆けようにも、すでに目では見えないくらい遠くに行ってしまった。

「と、とりあえずはどうしようか?てっ、何で宮崎は裸なんだよ」

近衛の腕に抱かれていた宮崎は見事に素っ裸だった。

「うちもよう分からへん。ここに来た時はもう服が脱げてた」

「そ、そっか。とりあえずこれを着せとこう」

俺は赤い聖骸布のコートを脱ぐと宮崎にかけた。

「さてどうしたらいいものか」

事態が思わぬ方向に動いているなぁと思いつつ、これからの事を俺は考え始めた。





はい、14話の終了です!はしょりすぎました!ごめんなさい!
今回の話は書くのが大変だった。設定も考えるのが大変でした。
仕事の合間にちょくちょく書いていたので、読み直して見ると、誤字・脱字多数です。
また、ネギまの世界で、吸血鬼が生まれる方法の明確な設定が分からず、とりあえず某所から引用しました。間違ってたらごめんなさい!
今回の話は、いろいろと変な所があるかもしれません。またまた、ごめんなさい。
あ、あと前に「雪広」を「雪平」などと書いてしまったので、ネギま辞書というのを導入しました。
これで少しは誤字が減るかな?
次回をお楽しみに!

[ 2013年10月16日 14:58 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 13

月明かりに照らされた桜通りをまき絵は歩いていた。
周りには誰もおらず、風の音だけがザワザワと響いていた。
ふと視線を感じて、きょろきょろと辺りを見回す。

「だ、誰もいないよね・・・・・・」

この桜通りは夜になると人気がまったくなく、1人で歩くのは少々怖い。
おどおどしながらもまき絵は、寮に向かって歩き出した。
そして・・・・・・






赤い丘より新たな世界へ13






 
午前5時30分
今日もいつも通りに目を覚ます。
寝ているネギ君の横を音を立てないように歩き部屋を出た。
洗面所で顔を洗い寝癖を整える。
先日買い溜めしておいた食材で、今日の朝食は和食を作ることにする。
米を磨いで炊飯器にセット。冷蔵庫から鮭の切り身を取り出して軽く塩を振って下味をつける。
味噌汁のだし取りまでをする。
後は皆が起きてから用意が出来るので、鍛錬をする事にした。

まだ薄暗く寒い空の下、庭に出て目を瞑り軽く瞑想をする。
少しずつ周りの雑音を消していき、自分の世界に埋没していく。
数分後ゆっくりと瞑想から目を覚ます。
そして俺は慣れ親しんだ呪文をつむぐ。

「――――投影、開始(トレース・オン)」

手に馴染んだ干将・莫耶を投影するといつもと同じように仮想の敵と模擬戦をする。
ヒュンヒュンと音を立て、舞うように少しも動きを止めずむしろ加速していく感じで剣を振る。
滑らかな動きで、少しも停滞しないように隙が出来ないように。
相手の切り上げを身を翻して避け、相手の突きを干将でそらし、莫耶で切りつける。
時間を忘れ鍛錬を続ける。

その時、パキッと何かが折れる音がした。

「誰だ?」

ぱっ、と後ろを振り向くと驚いた表情の神楽坂がいた。

「すっすいません。あっあの私・・・・・・」

「何だ神楽坂か。いや、こっちも驚かせてしまったな。すまない」

長年戦場で過ごしていると背後の音には敏感になってしまい、驚かせたようだ。
それに、ここは女子寮の敷地内。神楽坂が来てもおかしくはない。

「どうしたんだ。今日もバイトか?」

「いえ、今日のバイトは終わりました。あの、それ本物ですか」

神楽坂の視線をたどると鍛錬用に造りだした干将・莫耶に行き当たる。
普通の人なら日常では美術館とかでしかほとんど目にしない剣。
それを手に持って振り回していたら、普通の一般人は怪しむ。

「ああ、これか。刃はつぶしてあるよ。俺はあんまり魔術、いや魔法は使えないからね。体を鍛えてるんだ」

「そうなんですか。何かを振る音が聞こえたから、つい覗いちゃった」

「あんまり見せるもんじゃないけどな」

そう言って視線を逸らす。誰かを守るため鍛錬であり、同時に誰かを傷つける鍛錬。
それを誰かにを見られるのは、少々気が引ける。

「どうしてですか?」

「いや、こんなの見てても面白くないだろ?」

「いえ! 凄かったです。なんか舞ってるようで、かっこよかったですよ」

「そ、そうか?そう言ってもらえるとなんかうれしいな」

6年間も鍛錬しているが、そんなことを言われたのは初めてだったので照れてしまう。
頬をぽりぽりかきながら思いついた。

「そうだ。神楽坂は朝ご飯まだ食べていないだろ。よかったらうちで食べていかないか」

「いえ!木乃香がうちで準備してくれるんで・・・・・・」

「だったら近衛も一緒に連れてきていいぞ。びっくりさせてしまったお侘びだ」

「そうですか。じゃ木乃香を呼んできますね」

「7時半ぐらいに来てくれればいいから」

そう言って神楽坂と別れる。


家に戻ると最初にシャワー浴びて汗を流す。
シャワーから上がるとすぐに着替えて朝食の準備を始めることにする。
2人分増えたので鮭の切り身を2つ増やし塩をかけて他のと一緒に焼く。
次に卵を溶いてそれにだしと少量の塩と砂糖を入れて玉子焼きを作る。玉子焼きは甘めである。
後は味噌汁や漬物、ほうれん草のおひたしを作り朝食の完成である。
ちょうど完成した所にネギ君が起きてきた。

「おはようございます」

「おはようネギ君。朝食は出来てるから」

「ありがとうございますね。顔を洗ってきます」

「あっネギ君。今日は神楽坂と近衛が来るから」

「えっ。どうしてですか?」

「ちょっと朝にいろいろあってね」

「そうですか。僕は構わないですよ」

そう言ってネギ君は洗面所に顔を洗いに行った。


その後、遠坂を起こしに部屋へ向かった。ノックをし、返事がないことを確認して部屋に入った。

「遠坂~朝だぞ~」

遠坂の部屋は散らかっていた。と言うより昔みたいな部屋になっていた。工房とまではいかないが、何かの研究をしているのか、部屋の中にはフラスコなどの実験器具などが置いてあった。
春休み中は、ほとんど部屋に篭って色々と研究していたみたいだった。
本が出しっぱなしで床に積み上げられているなかを、足元に気をつけながらベッドに近づく。
ふと、机の上を見ると、いくつかの宝石と注射器が置いてあった。宝石に魔力を込めていたのだろう。

「遠坂、起きろ。今日から学校だぞ」

ゆさゆさと遠坂の体を揺さぶる。

「う、う~ん。・・・・・・もうちょっとだけ」

もぞもぞと布団の中に深く潜り込んでいく
昨日血を抜いたからだろう。いつもより低血圧みたいだ。

「ダメだ。早くしないと今日は神楽坂たちが来るぞ?」

「・・・・・・分かった。すぐに行く」

微妙な返事を聞いた俺は最後に、二度寝するなよと行って部屋を出た。






「お邪魔しま~す」

「お邪魔します」

時間通りに神楽坂と近衛がやってきた。二人とも制服である。今日から新学期なのだ。

「おはよう。神楽坂、近衛」

「おはよう!衛宮先生」

「おはようさん。衛宮先生なんかエプロンが似合うな~」

「そうか~。まぁ長いこと着てるからかな」

主夫歴が長い俺に着こなせないエプロンはない!でもフリフリエプロンはかんべんな。

と、そこへお客が来ていたので、しっかりと猫被ってキリッと制服に身を包んだ遠坂が現れた。

「二人ともおはよう」

「おはよう遠坂さん」

「おはようさん」

女の子3人が話しているその間に、俺は朝食をテーブルの上に並べる。
リビングから遠坂たちの声が聞こえてくる。

「でも本当に遠坂さんが衛宮先生と同居してるなんて思わなかったわ。遠坂さんほんとに何もされてない?」

「それはどう言う意味だ神楽坂!」

突然、神楽坂が爆弾発言を言う。

「実は毎晩、士郎は狼に・・・・・・」

「遠坂!」

それに遠坂が悪乗りをした。

「キャーーー。やっぱりロリコン教師だったんだ。木乃香近づいちゃだめよ!」

ささっと俺から神楽坂が近衛を引き離す。
ネギ君も引いている。て言うか、君、意味分かってるの?

ロリコンその言葉に俺の心が割れる。(だって硝子だもん!)
《―――――体はロリコンで出来ている》
《―――――血潮はプ二で、心は萌》
《―――――幾たびの批判の視線を越えて不敗。ただ一度の敗走も無く、ただ一度の挫折もない》
《―――――ロリマスターはここに一人。萌えの丘で同人誌を書く》
《―――――ならば、わが生涯にアダルトは不要らず》
《―――――この体は、無限のロリで出来ていた》


はっ! 何だ今の電波。突然頭の中に謎の文が閃く。やばい、これはやばいカット、カット。
一人であたふたしていると遠坂が言った。

「士郎~早く食べないとなくなるわよ」

気がつけば、いつの間にか俺の周りには誰もおらず、皆は食卓に着いて朝食を食べていた。







「「「「3年!A組!!ネギ先生ーっ!」」」」

今日から新学期が始まった。クラスのメンバーは変わらず、ネギ君が正式な先生になったことが変わったと言えよう。
ちなみに俺は形だけの副担任と新しく用務員の仕事をする事になった。
副担任としての仕事は、書類などの事務的な仕事を主としてネギ君のサポート。
用務員の仕事は、備品の修理などである。この用務員の話は、俺と学園長が話し合いネギ君の自立を託すための処置と言うことになったのだ。

「えと・・・・・・改めまして。3年A組担任になりました。ネギ・スプリングフィールドです。
 これから来年の3月までの1年間よろしくお願いします」

ネギ君の自己紹介が終わる。次は俺だ。

「あ~、3年A組副担任になった衛宮士郎だ。
 と言ってもネギ君が正式な先生になったと言うことで、俺はこれからは授業には参加しない。
 HRとかネギ君が授業できない場合は参加するがな。
 だからネギ君を困らせるようなことはしないように。
 それと普段は用務員の仕事してるから、備品が壊れたりしたら言いなさい。
 と言うわけで1年間よろしくな!」


「「「「はーい!よろしくお願いします!」」」」

みんなニコニコと嬉しそうに笑っている。特に雪広とか雪広とか・・・・・・。余程ネギ君が担任なのがうれしいのだろう。
教室を見回すとみんな元気に全員そろっていた。遠坂は前の席の綾瀬夕映と何か話している。
その時、鋭い視線を感じそちらを見た。出席番号26番のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。
こちらじっと見ている。
視線に気づいたのかネギ君もエヴァンジェリンの方を見ていた。

「なぁネギ君。あの子どこかで見たことないかい?」

「さぁ分かりません。でもなんかこっち見てますよ」

高畑先生から貰った名簿に困った時は相談しろと書かれていたが、あったことがなかった気がするし会ったような気もする。
だが、2年生の時は授業には出ていなかったような。

とそこへ、ガラリと戸を開けて源しずな先生が来た。

「ネギ先生。今日は身体測定ですよ。3-Aのみんなもすぐに準備してね」

「あっそうでした。で、では皆さん身体測定ですので・・・・・・えと、あのっ、今すぐ脱いで準備してください!」

し~ん

何気にネギ君の爆弾発言炸裂。ネギLOVE雪広など恍惚とした表情でぽわわ~んとなっている。
ちなみに俺はすでに教室を出て廊下に退去している。

「あ、え、え~と」

「「「「ネギ君のエッチ~!」」」」

なぜか大喜びの生徒達。

「うわ~ん。ごめんなさい」

顔を真っ赤にさせてネギ君が廊下に飛び出してきた。





身体測定が終わるまでネギ君と廊下で待つ。
窓の外から見える景色がきれいだ。天気も良いし雲ひとつない青空が広がっている。

「士郎さんは用務員の仕事て何が出来るんですか?」

「う~ん、そうだな大抵の電化製品は修理できるかな。
 もちろん専門じゃないから難しいことまでは出来ないけど。
 それに壁の補修とか机の修理とか窓ガラスの交換とか」

「なんかえらく具体的ですね」

「大人になると、いやでも覚えなくていけなくなったんだよ」

実際は遠坂とルヴィアが破壊した物の修理や教室の補修などで腕を上げたのだが。

「大人って大変ですね」

「大変なんだよ」

とそこへ

「大変や!大変や!」

と叫びながら和泉亜子が走ってきた。よっぽど急いできたのだろう。息が乱れている。
と足がもつれたのか倒れそうになる。

「おっとあぶない」

すかさず俺は和泉を抱きとめた。

「あ、あ、あ、ごっごめんなさい」

ぱっ俺から離れた。余程急いでいたのか顔が真っ赤だ。顔を俯かせてモジモジとしだした。頭振ったり顔が青くなったりまた赤くなったり。
感じの何が大変なのか聞くために声をかけた。

「で、何が大変なんだ?」

「そ、そうだ!ネギ先生!まき絵が・・・・・・まき絵が倒れた!」

「「何!? まき絵がどうしたの!」」

廊下の騒ぎが聞こえたのか、教室の窓とドアが開いてみんなが顔を出した。

「うわわわわわわ!?」

驚くネギ君。目の前に広がるのは色彩鮮やかな下着の群れ。
おいおい中学生がそんな下着はくなよと思うぐらい派手な下着を着けた生徒もいた。
ふと、遠坂と目が合った。ちなみに下着の色は大人の黒。

「よ、よう」

「何か言う事は?」

にっこりと悪魔の笑みを浮かべてこっちに指を向けた。周りの生徒も遠坂の周りから一歩引く。

「・・・・・・不可抗力だよね?」

「死ね」

超強力ガンドを受けて吹き飛び廊下の壁に叩きつけられる。唖然とする生徒達。ネギ君顔真っ青。明日菜はシューズ投擲体勢で硬直。
薄れ行く意識の中で思ったことは、「一般人の目の前で魔術使うなよ」だった。






さて始まりました吸血鬼編!カモ君出ませんでしたね。ごめんなさい。
吸血鬼編は大体5,6話構成で行こうと思います。次回をお楽しみに!


[ 2013年10月16日 14:58 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 12

ネギ君が正式な教師になることが決定し、春休みに突入した。





赤い丘より新たな世界へ12





朝食を食べ終わると、俺は動きやすい私服に着替えて、出かける用意をした。

「あれ? 士郎さん出かけるんですか?」

そこへいつもの格好のスーツを着たネギ君がやってきた。

「ああ、ちょっとね。ネギ君もどこかにいくの?」

「はい。今日は明日菜さん達に学園を案内してもらうです」

えへへと嬉しそうに笑うネギ君。

「そうか。それはよかったな。お昼はどうするんだ?」

「どこかで食べますから大丈夫ですよ」

そうして行って来ますと言って出て行った。
ネギ君が出て行った後、二度寝している遠坂に書置きを残すと俺も家を出た。






電車に乗り、麻帆良学園の郊外まで来た。そこから歩きで森の奥に進む。
1時間ちょっとも歩くと周囲に人の気配はまったくなく、木々が奏でる音だけがこだまする丘の広場についた。
丘の上からはかすかに、学園都市が見える。

「ここかな?」

そう呟くとその場に座り、まずは瞑想をする。

この世界に来てから今まで、2度戦闘を行った。
その時に気づいたのが、ほんの少し体の反応が遅くなっていることだ。
遠坂が言うには、この体は限りなく人に近い人形だと。人としての機能はすべてあり、成長もするそうだ。
しかしそれは、向こうの世界での俺の肉体ではないと言う事。
だからこの体は反応が遅れるのだ。俺の精神とこの体にずれがあるから。
そのずれを修正するために、人気がないところを学園長に教えてもらい、鍛錬をするためにここに来たのだ。
剣の鍛錬は家でも出来るが、俺の遠距離攻撃の弓は鍛錬できない。
体の反応が遅れると言うことは、弓での精密射撃が難しくなるからだ

瞑想をやめ、立ち上がると詠唱する。

「――――投影、開始」

弓を投影する。
黒い漆黒の弓。戦闘用に握りの部分には手甲がついている。
和弓の特性を取り入れた洋弓に近いフォルムを持つ。
戦いの中で改良して出来た、オリジナルの弓だ。

軽く体をほぐすと、2,3回弦をひき感覚を思い出す。
普通の矢を投影し弓につがえた。
狙いは30M先の木だ。

心を無にして八節通りに弓を引く。

カツンと矢が狙い通りに木にあたった。

「よし」

そのまま6回ぐらい引くと、今度は連射していく。
それもすべて狙い通りにあたったことを確認すると、今度は遠距離を狙う。
弓で遠くの物を狙うのはかなり難しい。ほんの少し狙いがずれたら、それこそ3mmでもずれたら当たらないのだ。
視力を強化し、丘の上から100mぐらい先の木に狙いをつける。

スッと矢を放つと、残心のまま矢の行方を見る。
狙い通りに矢が進み、狙いの木にあたった。
次に200m、250mと距離を開けていく。

「くそっ!ずれ始めたか」

600mまで距離を開けた所でずれが生じ始めた。目標には当たっているのだが、自分の狙いからは外れている。
本来なら俺は、1kmまでなら林檎にだってあてれるのだ。それが600mでずれが出てきた。

「こりゃ結構大変だな」

はぁ・・・とため息をつくと、気合を入れなおして弓の鍛錬を続けた。





衛宮家

「むっ・・・・・・」

なんとなく目が覚めた。
時計を見るとすでに昼の十二時を過ぎていた。
私は体を起こすとふらふらとリビングに向かう。

「しろう~・・・・・・しろう・・・・・・」

士郎の名を呼ぶが返事がない。
テーブルの上にメモがおいてあるのに気がつき、目を通す。
内容は「少し鍛錬してくる。昼食は冷蔵庫に入ってるから、温めなおして食べてくれ」と書いてあった。

「・・・・・・鍛錬ってどこに行ってるんだろ?」

首を傾げつつもキッチンに行き、冷蔵庫から昼食を取り出すとレンジに放り込み、顔を洗いに洗面所へ行く。
顔を洗った後、冷蔵庫から牛乳を取り出すとそのまま飲んだ。

「プハッー、やっぱり寝起きは牛乳よね」

ちょうどレンジでチンしていた昼食が出来たようなので、取り出してリビングに行きテレビを見ながら食べる。
ニュースではこの世界の政治家の汚職について報道していた。

「どこの世界も人がやることは変わらないか・・・・・・」

この世界と向こうの世界、根本的には表の世界の違いはほとんどない。
人々の生活も、お金も、政治もかわらない。
変わっているのは裏の世界だけだ。
魔術師はいない。いるのは魔法使い。
すべてが違う裏の世界。これからはそこで生きていかなくてはいけないのだ。

「はぁ~あ、今日はどうするかな」






郊外の森

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ~」

息を吐き出す。鍛錬を始めてすでに2時間が経過していた。
何とか遠距離の目標に当てれるようにはなった。
しかし、ずっと弓の鍛錬をしていたら、握力がなくなってきた。

「あ~休憩~」

ドサッと仰向けになる。雲ひとつない青空を眺めながら、昔のことを思い出していた。




―――――戦場。

周りに散らばるのは人だった物達。

手足は折れ曲がった者、首がない者、黒焦げの者。

助けれなかった人々。

飛び交う叫び声。

銃撃音。

何かが潰れる音。

一瞬の死。

気がつけばその場に立っていたのは、俺と遠坂の二人だけ。

二人は無表情。感情は心の奥深くに閉じ込めた。

何も考えず、何も思わず、ただ機械のように・・・・・・


いつの間にか背中合わせにその場に座り込み、遠坂に問う。

「結局は俺も100を救い10を切る。それが答えだったんだな」

「・・・・・・」

「切嗣の言うとおりだった。大人になると正義の味方にはなれない」

「それがあなたの答え?」

「そうだ。結局は俺もアーチャーと同じ存在だったんだな・・・・・・」

「っ!」

パァンと静寂を破る音が辺りに響き渡る。

「痛い・・・・・・」

いつの間にか立ち上がった遠坂が俺の前に立ち、平手打ちをした。

「士郎がそんなことを言うなんて思ってなかったわ。
 救えなかったから諦める?ハッ馬鹿らしい。だったこの次もその次も、救えないからって割り切ってしまうわけ?」

「ちがう!そんなわけ・・・・・・」

「違わないわ!アーチャーと同じ存在?つまりあなたは救えないから、しょうがないからって考えることをやめて、逃げようとしているだけよ
 答えなんてほかにもあるのに」

「どこにそんな答えがある?結局は10を切り捨てているのにか?」

「だったら探しなさいよ。いつまでも探しなさい。探し続ければ、いつかはその答えを見つけることが出来るわ。
 でも、探すことを諦めたらそこで終わりよ。アーチャーは答えを探すことを諦めたらから、あんな物になったのよ。
 だから・・・・・・あなたに問うわ、衛宮士郎はここで本当に答えを探すこと諦めるの?」

じっと涙を滲ませてにらめつけてくる遠坂に俺の答えを言った。

「俺は・・・・・・」





ガサガサと森の奥から何かが来る音にハッと我に返った。
ゆっくりと起き上がると身構える。
この感じは人の気配だ。

「誰だ!」

「こんにちは」

ガサガサと森の奥から現れたのは、うちのクラスの龍宮真名だった。





私服に着替えた私は学園長室に向かった。

コンコン

「失礼します」

扉を開けて中に入ると明日菜と木乃香が学園長と何か話していた。

「あれ?遠坂さんじゃん。どうしたの?」

「ちょっと学園長にね」

「ふ~ん、じゃ私達はこれで。行こ木乃香」

「ほなバイバイ遠坂さん」

二人が出て行ったことを確認して、学園長に振り返る。

「さて、用件はなんじゃろ?衛宮君なら山の中じゃが」

「や、山の中?あいつ何の鍛錬してるのよ・・・・・・。 
 えと、そのことじゃなくてですね。学園長にお願いがあってきたんですけど」

「ふむ。お願いと言うのは?」

「宝石屋を紹介してくれませんか?」

「は?」





「どうぞ」

「どうも」

持参してきた缶コーヒーを龍宮に渡す。
そのまま2人でコーヒーを一口飲む。

「で、何でここに龍宮がいるんだ?」

龍宮真名、出席番号は18番。褐色の肌とストレートロングの黒髪が特徴的な大人びた雰囲気の生徒。
というか普通に中学生に見えない。高校生と言われても俺は信じる。

「散歩していたら衛宮先生が見えたからちょっと挨拶に」

「散歩していたらって・・・・・・」

ここは町から5~6キロは離れている。
そんな森の中を女の子が1人で普通は散歩などしない。

「それで、用件は?」

「別に。なんとなく前から興味がありましたから。・・・・・・あなたは戦場のにおいがするから」

「物騒なことをいうな、どうしてそう思う?」

「私も戦場にいましたから」

あっけらかんと龍宮が言った。
確かに彼女からは、何と言うか雰囲気が戦場にいる兵士と似ている。
時々鋭い目つきをしてこちらを見ることもあった。

「そっか・・・・・・。だからいつも銃を持っているのか?」

「!  気づいていたんですか」

気づくも何もうちのクラスには、平気で刃物を持ち込んでる奴はいる。ロボットもいるし。
俺の経験からすれば武器を持っていれば大体分かってしまう物だ。

「まったく、うちのクラスはとんでもないな。平気で刃物を持つ奴がいれば銃を持つ奴までいるのか。銃刀法違反だぞ?」

「これはモデルガンです」

平然と銃をちらつかせながら龍宮が言う。どう見ても本物。それもIMI社のデザートイーグルだ。

「・・・・・・まぁそう言うことにしておこう」

はぁとため息をつく。まったくとんでもない世界だ。

「聞かないんですか?私が戦場にいた理由は」

「聞いてどうするんだ?戦場に子供が銃を持っていてもおかしくはない。もっとも戦場ではないここで持っているのはおかしいがな」

「そうですね」

戦場に子供がいてもおかしくはない。銃を持てて扱えるのなら戦争に駆り出されていた。
そんな子供達が1番最初に死んでいくのを俺はまじかで見てきた。

「だが・・・・・・俺はそんな子供達を助けたかったよ。だから戦っていたのかな」

ポツリと呟く。

「え?」

「いや、なんでもない。
 さてとそろそろ帰らないと日が暮れるぞ」

立ち上がり軽く伸びをすると龍宮に言った。
時刻はすでに5時を過ぎている。そろそろ帰って夕飯の支度をしなくては。
歩き出した俺の後ろから龍宮もついてきた。




衛宮家

時刻はすでに6時になっている。
そろそろいつもなら士郎が夕飯の支度を始める時間だ。

「士郎さんどこに行ったんでしょうね?」

「さぁ、学園長は山に行ったって話してたからね」

「山ですか、何でまた」

「そこに山があるからよ」

「?」

意味が分からずう~んと唸るネギ君の横で、私は今日の出費を家計簿に記入していた。
学園長に融通が利く宝石屋を教えてもらい(先日のことを耳元で囁きながら)早速必要な宝石を、この間手に入れたお金で(激安で)購入した。
いつまでも丸腰でいるわけにはいかないからだ。もちろん何に使うかは学園長には言っていない。こちらの手の内は見せる必要はないから。
しかし今度はその宝石に魔力を込めていかなくてはいけない。これには結構時間がかかる。それに少ない宝石をどう使うかが問題である。(もうお金はないし)

「あ~憂鬱だわ」

「何がですか?」

「・・・・・・なんでもないわ。そうだ!今日は中華にしましょうか。なんか士郎も遅いみたいだしね。私が作るわ」

「わ~それは楽しみです。この間みたいに美味しいの期待してます」

「任せなさい!中華の達人の私が最高級の中華を食べさせてあげるわ」

わーいと喜ぶネギ君の歓声を聞きながら私は台所へ向かった。






「じゃあな!」

そう言って衛宮先生は私と別れた。彼は寮の敷地内にある用のログハウスに戻っていった。そういえば遠坂もあそこに住んでいるだったな。
ふむ、と頷く。そしてそのまま私も寮の中に入る、とロビーに刹那がいた。

「刹那、何をしてるんだ」

こちらに気づいてぱっと振り向いた。

「何だ龍宮か。どこに行っていたんだ?」

「刹那が話していた衛宮先生のところさ。まぁ、君が熱を上げる理由が少し分かったかな。
 中々面白い人・・・・・・いや、私と似たような人だったかな。失うことを知っている人だ。
 もっとも根本的な思いは違うようだが」

私の演説を呆然と聞いていた刹那が我に返ると聞いてきた。

「なっ、何処であってたんだ!それに熱を上げるとは何だ!」

「密林の中さ。2人きりでだ」

「なにー!」

顔を赤くして叫ぶ刹那。可愛いなと思う私はダメだろうか。

「ふふっ、悪いな刹那。私もあの人に興味が出てきた。遠坂にも悪いがな」

「なっなっな、何で私にそんなことを言うんだ!」

「刹那、もう少し大人になることだな。いつまでも意固地になっていると獲物を逃すぞ。
 じゃ、私は部屋に戻って少し寝る」

先ほどよりさらに顔を赤くして固まる刹那を残して私は自分の部屋に戻っていった。






衛宮家

「ただいま~。おっ今日は遠坂が作ったのか」

靴を脱ぐとそのままリビングに向かう。家の中に入った時から漂ってくる美味しそうな香りがだんだん近づいてくる。

「ただいま」

「おかえり士郎」

「お帰りなさい士郎さん」

あぁ本当に今の時間はいいな。昔に戻ったみたいだ。桜がいて藤姉がいて遠坂がいて、そして黄金の髪の彼女がいたあの家のように、暖かくて活気があって何よりも楽しい。

「どうしたの?早く食べましょう。今日は私が腕によりをかけて作った中華よ!」

「本当に美味しそうですよ。早く食べましょう」

俺は思う。この時間をこの人たちを何よりも大切に守ろう。誰からも今だけは。

「そうだな。食べようか」

正義の味方の答えはまだ見つかっていない。けど近くにあるような気はした。





はい、第12話の終了です。微妙にシリアス?ラブ?ほのぼの?見たいな感じでした。
結構独自設定と言うか士郎の性格とかが変わっているような感じでしたがお許しを。
ではでは第13話をお楽しみに。

嘘予告
ついに登場、あの変態小動物!なんとなく意気投合する○○!でもお金がらみ限定?
微妙なフラグも成立し、押しに来るか刹那!そこに現るは金髪のあの人! 喜怒怒楽お楽しみに!(哀はありません)




[ 2013年10月16日 14:57 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 11

まき絵の体を掴んだのは、あのゴーレムだった。






赤い丘より新たな世界へ11






「どうしたんですか!てっ、あ~!」

騒ぎを聞きつけたのか、ネギと夕映、木乃香がやって来た。
3人ともゴーレムに驚いている。

「ネギ君助けて~!」

まき絵の叫びにネギは即座にゴーレムに攻撃しようとした。

「ラス・テル マ・スキル マギステル 光の精霊11柱 集い来たりて敵を射て。『魔法の射手』!
 くらえ、魔法の矢!!」

詠唱してゴーレムを指差すネギ。しかし

し~ん

「「ま・・・・・・まほうのや?」」

何も起こらなかった。ホッと胸を撫で下ろす明日菜と遠坂。ゴーレムもなぜかホッとしている。

『ふぉふぉふぉふぉ、ここからは出られんぞ。もう観念するんじゃ』

仕切りなおしにふぉふぉふぉと笑って言うゴーレム。

「大丈夫です皆さん!僕のまほ・・・・・ふがっ」

「ちょっと待った!先から何モロに言ってのよ、この馬鹿ネギ!」

また魔法が~とか言いそうになったネギの口を、あわててふさぐ明日菜。

「まほ何アルか?」

「なんでもないわよ。とにかく、テストまでにはここから脱出するわよ!」

「そうね。急いで出口を探しましょう」

「どうでもいいから、早く助けてよ~」

ゴーレムの腕に掴まれたままのまき絵を目にとめた時、夕映はゴーレムの首筋に、あの本があることに気がついた。

「みんな、ゴーレムの首筋にあの本があるです!」

すかさずクーフェイと楓が行動を起こす。

「中国武術研究会部長の力、見るアルよ」

まずクーフェイがゴーレムの足に一撃を食らわせて、ゴーレムの重心を崩すと、すかさずまき絵を握る腕にも一撃をくわえた。
ゴーレムの手から離れたまき絵を楓がキャッチする。さらにまき絵がリボンで首筋の本を巻き取った。

「撤収です」

夕映の指示に皆一斉に駆け出した。

「見事な連携ね~。それに長瀬さん達の動きは半端じゃないわね」

「バカレンジャーは私以外、体力馬鹿ですから」

遠坂の言葉に夕映が答える。

「そんなことはどうでもいいから、出口探して~!」

のんきな二人に明日菜が叫ぶ。
後ろからはバルタン笑いのゴーレムが追いかけてくる。かなり不気味だ。
すると木乃香が何かに気づいたのか皆を呼んだ。

「みんな~こっちに非常口があるえ~!」

木乃香の方に集まると、滝の裏に非常口と書かれた人の絵がついている緑の看板があった。
それを見てずこっとこける遠坂。

「一体学園長は何を考えてるのよ・・・・・・」

『待つのじゃ~』

すぐ後ろにはゴーレムが近づいてくる。

「早く入って!」

遠坂の叫びに、明日菜は扉を開けようとして気づいた。

「何よこれ~!」

扉には【問一 英語問題 Readの過去分詞の発音は?】と書かれていた。

「つまり、これに答えないと扉は開かないということですか」

「ええ~何よそれ!」

あたふたとするバカレンジャーに遠坂が喝を入れた。

「そんなの簡単じゃない!昨日やった事を忘れたの!」

ハッとするバカレンジャー達。昨日やったこと・・・・・・遠坂先生のスパルタ授業とネギの授業。

「そうよ。昨日アレだけやったんだからわかるはず」

むむむっと問題をにらむバカレンジャー。

「分かたアル、答えは『red』アルね」

クーフェイが答えると扉が開いた。

『しまった~。待つんじゃ~』

「よし、この調子で行くわよ!」

遠坂の号令にみんな一気に扉に駆け込んでいった。





「いいわよ。みんな、その調子!」

バカレンジャー達は非常口に入った後、奥のほうにあった螺旋階段を上りながら、扉に書いてある問題を次々と答えていった。

「凄いです皆さん!いつの間にこれだけ勉強したんですか?」

大喜びのネギの質問に誰も答えない。
全員、顔色を変えて滝の様に汗を流しながらうつむく。

「み、みなさん~どうしたんですか?」

「・・・・・・ネギ、おこちゃまのあんたは知らなくていいのよ」

妙に達観してささやく明日菜。

「?」

よっぽど遠坂の授業を思い出したくないのか、誰もネギの質問には、はっきりとは答えなかった。

「何があったんですか遠坂さん?」

「いいのよ。そっとしておきなさい。彼女達は大人の階段を登ったのよ」

一体どんな授業をしたらそんな言葉が出るのか、恐るべし遠坂先生。
こんな会話をしている間も、後ろからはふぉふぉふぉふぉと笑いながらゴーレムが追ってくる。
しかしなぜかゴーレムのスピードが落ちてきている。なんか笑いと笑いの間に、ごほっごほっと咳してるし。

「・・・・・・じじぃの癖にハッスルするからよ。いい気味だわ」




「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・いつまで登るですか?」

「あかん、もう疲れてもうた~」

すでに階段を登り始めて1時間、夕映と木乃香は疲れきっていた。
他のメンバーは体力馬鹿なのでまだいけそうである。
ヘロヘロ~と歩く2人、もはや限界だった。
ゴーレムは追ってきているが問題を順調に解いた事と、ゴーレム自体のスピードが遅くなったことで、少し差が開いている。

「2人ともがんばってください」

ネギが励ましの言葉をかけるが、もうダメ~と2人は座り込む。

「先に行ってくださいネギ先生」

「私達のことはええから、みんな早よ行き」

完全に座り込んでしまった二人にネギは近づくと

「だめですよ。みんなで行きましょう。僕が背負って行きますから」

「ネギ先生・・・・・・」

「うちは?」

「木乃香は私が背負うから。ネギ大丈夫?」

夕映を背中に背負うと立ち上がるネギ。
しかし身長がほとんど変わらない夕映を、魔法で体を強化していないネギが背負うのは無理があった。
すぐにペチャッと倒れるネギ。

「拙者に任せるでござる」

見かねた楓が夕映をヒョイと抱き上げた。

「すみません、長瀬さん」

「いやいや。それよりもそろそろ追いついてきたでござるよ」

後ろからゴーレムが「ふぉふぉ・・・ごふぉ・・・ふぉふぉ・・・」と笑いながら追いついてきた。

「急ぎましょう」

遠坂を先頭にまた登り始めた。


地上

「遅いな~」

もうすぐ夕日が沈む時間だ。
俺は学園長から連絡を貰い、早乙女たちと一緒にネギ君たちを迎えに来たのだが

「ホント遅いね~。あ、そう言えば士郎先生さぁ桜咲さんと何かあった?」

「いや、別に何もないぞ。そうだな、しいて言えば、仕事を少し手伝ってもらったぐらいかな?なんでだ?」

「なんか、刹那ちゃんが『士郎さん・・・・・・』とか呟きながら顔赤くして歩いていたの見たんだよねぇ~。ラブ臭をプンプンだしてさ」

ニタ~と笑いながら俺に顔を近づける早乙女。

「ラブ臭って何だよ・・・・・・。というか知らないぞ俺は」

「んふ~本当かにゃ~。実は~手を出したりして」

「ばっ、馬鹿いうな!」

その後ニヤニヤ笑う早乙女に俺は苛められた。
地下から何かが上ってくる音を聞き逃して・・・・・・



数分前

「あっ!携帯の電波が入りました。地上は近いです」

「よっしゃーこのまま行くわよ!」

その時、前を走っていたネギが叫んだ。

「あ!地上への直通エレベーターですよ!」

「やったーこれで帰れる~」

「こんな物まで作って・・・まったく学園長は!」

そこには1階直通作業用と扉にかかれたエレベーターがあった。
いかにも「使ってください」な感じで、場違いさにさすがの遠坂も怒りを忘れ、学園長の考えに呆れた。

「みんな早く乗って乗って!」

ドカドカと駆け込んでエレベーターに駆け込む。
少し下にはゴーレムが近づいてきている。
しかし全員が乗るとブブーと警告がなり

《――――重量OVERデス》

合成音声のアナウンスがなった。

「くっ!みんな着ているものとか、持っている物を捨てて。少しでも軽くすれば行けるかも!」

すぐさま服を脱ぐバカレンジャー達。しかし遠坂は躊躇していた。

「遠坂さんも早く!」

「え~と人前で裸になるのはちょっと~」

「大丈夫よ。女の子しかいないんだから。ネギはまだ子供でしょ」

明日菜の言葉に渋々と服を脱いで捨てる。
しかしそれでも警告音は鳴り止まない。

「きゃーゴーレムが来たー!」

すぐ側までゴーレムが来ていた。
するとネギがエレベーターを降りてゴーレムと対峙する。

「僕が降ります!皆さんは先に行って明日の期末試験を受けてください」

ゴーレムはもう目の前。立ちふさがるネギの足は震えていた。

「行ってくだっぐえ!」

後ろから明日菜がネギの襟首を掴むとエレベーターに引きずり込んだ。

「あんたが残んなくても・・・・・・本を置いていけばいいのよ!」

そう言うとゴーレムにメルキセデクの書を力いっぱい投げつける。
カコーンとゴーレムに本があたると同時にエレベーターのドアが閉まった。

上昇中のエレベーターの中

「よかったんですか、あの本がなくて?」

「いいのよ。散々勉強したし、それにアレに頼らなくても何とかなるわよ。ねっみんな!」

明日菜の言葉にみんなが頷く。

「みなさん・・・・・・」

「よかったわね。ネギ君」

「はい!」

そして一行を乗せたエレベーターは地上へと向かっていった。


地上

「だから違うって言って・・・・・・ん?」

「どうしたの先生?」

扉から何かが登ってくる音が聞こえた。

「帰ってきたみたいだぞ」

チンと音が鳴りエレベーターの扉が開いた。

「よーお帰り。どうだっ・・・・・・た」

俺の目が点になる。
扉の中には、なぜか下着姿の遠坂たちがいたからだ。
向こうも俺に気がついたのか固まっていた。

「え~と・・・・・・なんで裸?」

「見るなこの変態!」

ボグッと神楽坂のストレートが俺のこめかみにヒットした。

「な、なんで?」

崩れ落ちる俺。
そんな俺を無視してハルナ達と再会を喜ぶ生徒達。ついでに服を借りてる。
すると遠坂が近づいてきた。
俺はコートを脱ぐと遠坂に渡す。

「お疲れ。どうだった?」

「散々だったわ。・・・・・・でも楽しかったかな」

「そうか。それはよかった」

そうして俺達も再会を喜んだ。



「あーテストまであと15時間しかない!」

突然まき絵が叫ぶ。

「大丈夫よ佐々木さん。みんな、今夜も寝かせないわよ」

「「「「えー」」」」

ニタリと笑う遠坂にバカレンジャー達は涙目だ。

こうして遠坂先生とネギ先生の地獄の一夜漬けにより、2-Aは無事に最下位脱出を果たした。
5人組の屍を残して・・・・・・。



第十一話終了!図書館島編終了です。オチが弱いですね。
こう改めてみるとタモの小説は会話が多いですね。これは改良しなくては。
次回はほのぼのを挟んでエヴァ編に入っていく予定です。



おまけ


学園長室


「と、遠坂君。す、すこし落ち着いたらどうじゃろ」

「大丈夫ですよ学園長。私は落ち着いてます。ちっとも怒ってなんかいませんから」

「そ、それじゃその手にもっとるバットはなんじゃろか?」

遠坂の手には所々血がついた年季があるバットを持っていた。

「うふふ、少し野球がしたくて、うふふ」

コツコツとゆっくりと学園長に近づいていく。

「た、たのむ。わしが悪かった。許してくれ」

必死に頭を下げる学園長。
そんな学園長の目の前に立つとバットを振りかぶる。

「ま、まって。頼む。許してくれ」

「死ね」

ぎゃ――――――

その日、学園長室から凄まじい叫びが聞こえたそうだ。
さらに後日、学園長から大金をせしめた遠坂さんはホクホク笑顔だったそうな。

終われ


[ 2013年10月16日 14:56 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 10

「キャ――――――」





赤い丘より新たな世界へ10







「ちっ!底が見えないじゃない。まったく、何考えてるの学園長は。
 このままじゃペシャンコじゃない」

「あわわーたすけてー」

ばたばたと手を振りながら騒ぐネギ。魔法が使えないから混乱しているようだ。
それに気づいた明日菜が何とか体勢を変えて近づく。

「ネギ!」

明日菜がネギをぎゅと抱きしめる。

「明日菜さん・・・・・・」

(がさつで乱暴な人で怖いと持っていたけどやさしい人なんだ。
 それにどこかお姉ちゃんの匂いに似てる)

ネギもぎゅっと明日菜に抱きつく。
その光景を見た遠坂は覚悟を決める。

「出来るかどうか分からないけど、やってみるか・・・・・・・ネギ君、衝撃に備えて止めるわ!」

「あっ、はい!」

楓とクーフェイは意味が分からんという顔をしているが、ネギと明日菜は理解したのか体を丸めて衝撃に備える。夕映とまき絵は気絶中。
息を整えると遠坂は詠唱した。

「Es ist gros,(軽量)Es ist klein(重圧)!」

「vox Gott(戒律引用)Es Atlas(重葬は地に還る)――――!」

ふわりとスピードが落ちるが、それでも以前として落下し続ける。

「くっ・・・・・・やっぱり人数が多い」

どんどん落下して行くとちらりと底に明かりが見えた。

「やばい!」

ずぼっと何かを突き抜けると、どっぼーんと水の中に落ちた所で遠坂は気を失った。


衛宮家

宮崎のどかと早乙女ハルナから事情を聞いた俺は渋る二人を寮に帰すと学園長に連絡を入れた。

「もしもし、学園長ですか?ネギ君たちが行方不明になった見たいなんですが・・・・・・」

「おおっ、衛宮君か。そのことなら大丈夫じゃよ。こっちでちゃんと確認しておる」

「え?」

その後、学園長から事情を聞かされ、今回の事件はネギ君の修行の一環だという事が分かった。
そして、テストまで帰さないからネギ君の授業を代わりにするようにと言って学園長は電話を切った。

「はぁ、ネギ君たちは大丈夫なようだな。まぁ、遠坂は怒っているだろうけど」

何の説明もされずに連れて行かれた遠坂が、事情を知ったら怒るだろうなぁなどと考えながら、俺はネギ君の代わりに明日の授業の準備を始めた。

翌朝 

図書館島最深部

「うっ・・・・・・ここは?」

目を覚ました遠坂は辺りを見渡した。
周りは大きな湖?と沢山の本と枝の様なもの広がっている。
地底なのになぜか天井からは光が注いでいる。そのおかげなのか寒くもない。
近くに皆が倒れていることに気づき近づく。
さっとだが誰も怪我をしていないことを確認してほっと息を吐いた。

「とにかくここから出ないと」

とりあえず近くにいた明日菜から起こそうと手を伸ばした。

「起きたでござるか遠坂殿」

突然後ろから声をかけられる。
あわてて振り向くと長瀬楓が立っていた。

「長瀬さん、気がついていたのね」

「さっき気がついたてござるよ。今はその辺を見てきたでござる」

数日も一緒にクラスメートをやっていると、ござる言葉で喋る長瀬にもなれた遠坂。
とりあえず楓に尋ねた。

「どこか出口はあった?」

「ざっとしか見ておらんから、今のところは見つけてないでござるよ」

「そう・・・・・・。とりあえず皆を起こしましょ」

そう言って二人で寝ている人たちを起こした。



数分後

「ここは間違いなく幻の地底図書室です!」

目を覚ました夕映が、目をキラキラさせ、興奮しながら言う。
集まった全員が夕映に注目した。

「地底図書室?」

「はい、地底なのに暖かい光に満ちて、数々の貴重な本に溢れた、まさに本好きにとっては楽園という幻の図書館です」

うふふ~と笑いながら説明する夕映は、どこか近寄りがたく、全員一歩引く。

「ただし、この図書室を見て生きて帰った者はいないとか・・・・・・」

「じゃ、何で夕映が知ってるアルか?」

クーフェイの疑問に、うんうんと皆頷く。

「・・・・・・とにかく脱出困難であることは確かです」

ごまかしたなと遠坂は思った。

「ど、どうするアルか。明後日の期末テストまでに帰れないアルよ」

「それどころか私達、このまま帰れないんじゃ・・・?それにまたあの石像が出てくるかもだし」

バカレンジャーがギャーギャーと騒ぐ。
するとその辺をうろうろしていた木乃香が、何かを見つけたのか皆を呼ぶ。

「ねぇねぇ、皆~こっちに参考書とかあるよ」

木乃香が持ち上げて見せた本は、確かに英語の参考書だった。
そのほかに数学などの参考書もあり、なぜかとりあえずは勉強できるようになっていた。

「こっちには食べ物があるよ~」

コテージから顔を覗かせたまき絵が言う。

「はぁ・・・・・・つまり学園長はこうなる事を見越してたわけね」

だんだん殺意があの爺さんに湧いてくる。帰ったら問い詰めて殴っ血KILL!!

「? なんか言った、遠坂さん?」

「いえ、なんでもないわ。とりあえず皆は勉強していて。私は出口がないか探してくるから」

「なら私達も一緒に・・・・・・」

「却下よ。あなた達は期末試験があるでしょう。私はテストは大丈夫だから」

明日菜の提案をあっさり却下する。

「そういえば遠坂さん頭がよかったよね」

まき絵の言葉に皆うんうんと頷く。

「と、とりあえずは勉強をしましょうか。皆さん座ってください」

そう言って奥にあったホワイトボードをネギは引っ張ってくる。
皆も勉強道具を持つと机に座った。

「とりあえず私は何か作るわ。みんなお腹すいたでしょ?」

「ありがとう遠坂さん」

「よろしくでござる」

全員の言葉を聴きながら遠坂は調理場にたった。



学園 2-A

「なっ何ですって!最下位から脱出できないと小学生からやり直し!?」

「昨日お風呂で皆が話してたもん。いつまでも最下位だから学園長が怒ったって」

桜子の話に騒然となるクラス。なんせ学園長は、そんなことを平気でやりそうな人だからだ。

「落ち着きなさい皆さん!とにかく期末試験までちゃんと勉強して最下位脱出しますわよ。
 その辺の普段真面目にやってない方々も」

皆を落ち着かせて指示を出す委員長。

「でもさ~委員長。バカレンジャーはどうするの?まだ来てない見たいだけど」

「あれ~ほんとだ。いないね」

ちょうどその時、教室のドアが開き早乙女ハルナと宮崎のどかが駆け込んできた。

「みんなー大変だよ!ネギ先生とバカレンジャーたちが行方不明に!」

「「「「えぇぇぇーーーーーーー!」」」」

驚く2-Aのメンバー達。

「じゃ、じゃあ私達はもしかして小学生になるの!?」

阿鼻叫喚の渦に教室が包まれる。委員長なんかすでに真っ白に燃え尽きていた。

ガラリ

ドアが開く音が響き、一斉にそちらに注目する。

「ど、どうしたんだよ」

教室に入ってきた士郎は、いきなり注目されて焦った。
大体、士郎はこんな大勢の前に出たことがあまりなかったので、緊張していたのだ。

「衛宮先生!ネギ先生達が行方不明って本当ですか?」

報道部の朝倉和美が尋ねた。

「あ・・・・・・え~と、ネギ君たちは、べっ勉強合宿に行ってるんだ。ほら明日菜たち成績が悪いだろ?学園長の指示でね。テスト前までには戻ってくるから」

微妙に嘘っぽい言い訳をした。ついでにそれとなく学園長に罪を擦り付ける。

「という訳でテストまでは、俺がネギ君の代わりをするから、よろしく」

すると燃え尽きていた雪広あやかが復活して叫んだ。

「つまり明日菜さんたちは、ネギ先生とラブラブな合宿を楽しんでいると言うわけですか!」

士郎、冷めた目で雪広に言った。

「とりあえず雪広、おまえは保健室に行って来いな。それじゃ授業を始めるぞ」




さらに翌日 地底図書最深部

テストまであと1日となった。
その頃の明日菜たちは必死に勉強していた。そう必死に・・・・・・

「コラ!そこ寝ないで聞きなさい!」

ネギと木乃香が寝ている間に遠坂はバカレンジャーに勉強を教えている。もちろんスパルタで・・・・・・






食後は休憩時間としてゆっくりすることにした。不眠不休で勉強していたバカレンジャー五人組はかなり疲れていた。
すると木陰で休んでいたまき絵が立ち上がると、どこかに行こうとする。

「マキエ、何処に行くアルか?」

「えへへ~ちょっとね」

もているタオルをクーフェイに見せる。

「あ、わかた。私も付き合うネ」

「では拙者も」

「私も行くわ」

「私も」
近くにいた遠坂も一緒に行くことにした。
明日菜は木乃香たちも誘うとしたが

「木乃香達は・・・・・・行かないわよね」

夕映と木乃香は恍惚とした表情で本を読んでいた。
その近くてネギも何語で書かれているのかも分からない本を読んでいた。




水辺

明日菜たちは言葉を失っていた。
服を脱いだ遠坂の美しさに見惚れていたのだ。

日本人離れしたきめ細かな白い肌、それを艶やかな長い黒髪が強調している。
瞳はまるで澄み切った青空のようなブルーアイで綺麗だった。

「どうしたの?」

「いやー遠坂さん綺麗だなーって」

「ふふふっありがとう。でもみんなも綺麗じゃない」

遠坂が皆を見ながら言う。

「え~遠坂さんの方が綺麗だよ。私なんか子供っぽいし胸ないし。あぁ~せめて楓さんみたいな胸が欲しいな~」

まき絵の言葉に遠坂の視線が楓の胸に移った。

(た、確かに大きい。はぁ小さくならなかったら、私もあの位はあったのになぁ。
 やっぱり士郎も大きいほうが良いのかな?)

じろーと楓の胸を見た後、自分の胸に手をやり深いため息を吐く。

「それにしても学園長も本気でござるかな、学年最下位だったら小学生に戻すなどと」

「はっちゃけた爺さんだからね。やる時はやるわよ」

何気に酷いことを言う明日菜。

「それ何の話?」

話についていけない遠坂が尋ねる。

「うちのクラス万年最下位なのよ。それで今度の期末試験が悪かったら、みんな小学生に戻されるのよ」

「はぁ・・・・・・だからあの本が欲しかったのね。でも、その話は嘘よ。デマ」

「えっ」

「士郎から聞いたんだけど、最下位脱出できないとネギ君が先生を辞めないとといけないらしいわよ」

遠坂の発言に明日菜が

「なーんだもう、そんなんだったこんな所に来なかったのに!」

苦労してここまで来たのにーと叫びながら、ジタバタと悔しがる。
それに非難の言葉が投げかけられる

「明日菜、それはネギ坊主が可哀そうアルね」

「そうでござる。ネギ坊主はまだ子供でござるよ」

「そうだよー可・・・・・・何これ?」

まき絵は自分の体に何か巻きついているのに気がついた。
4人もそれを見る。

「「「「手?」」」」

その瞬間、ドバーンと水の中からあのゴーレムが現れた。



第十話終了しました。次回で図書館島編終了です。
ノロに耐えながら何とかアップできました。きつかった・・・・・・。


おまけ

「いいか、このときに卵をさっと入れてだな、15秒ぐらいで器に移せば衛宮印の簡単半熟親子丼の完成だ。」

士郎、いつの間にか英語の授業が家庭科の授業に・・・・・・

クラスからは、意外に好評でした。

おわれ

[ 2013年10月16日 14:54 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 09

「大変や大変や、みんな大変やでー」






赤い丘より新たな世界へ9






そう叫びながら大浴場に駆け込んできたのは近衛木乃香たちだ。

「何よ~どうしたの~」

湯船に浸かりながら、ふにゃけた明日菜が聞く。

「実はな、噂なんやけど次の期末で最下位を取ったクラスは解散なんやて!」

シーン

「・・・・・・ぷっ、そんなのあるわけ無いじゃない!」

そんな馬鹿なと、あっははははと笑う明日菜だったが、木乃香がさらに続けて言う。

「ホラ、うちのクラスずっと最下位やんか。それになんかうちのおじ・・・学園長が本気で怒っとるらしいんや」

木乃香の後ろから顔を出した、早乙女ハルナもそれに続く。

「その上、特に悪かった人は留年!どころか小学生からやり直しとか・・・」

「ちょ、ちょっとまってよー!それ本当なの?」

「ほらネギ君も大変なことになるって言ってたじゃんか。結構本当なのかも」

騒ぎを聞きつけて、風呂にいたほかの生徒達も集まってくる。

「いまクラス、うちは結構面白いし解散するのはイヤやわ~」

「そうね。でも今の時点で最下位脱出するのは、無理があるわね」

ハルナの発言に注目が集まる。

「どっ・・・どうしてですか?」

控えめに尋ねるのは宮崎のどかである。

「なんてったて、うちのクラスにはバカレンジャーがいるからね」

「「「・・・・・・」」」

バカレンジャーとは綾瀬夕映、神楽坂明日菜、古菲、佐々木まき絵、長瀬楓の五人で構成されている戦隊?なのだ。
集まっていたクラスの中からバカレンジャーが集まる。

「どっどうしよ。このままじゃ私達のせいで・・・・・・」

「う~む。どうすればいいでござるかな」

「これで解散したら絶対私達のせいだよ」

「今から必死に勉強しても、月曜には間に合わないアル」

そうだ!ネギなら頭がよくなる魔法を知ってるかもと思った明日菜だったが、ネギの魔法が成功した所を見たことが無いことに気づき断念。
そのときバカブラックこと綾瀬夕映が抹茶コーラを飲みながら話し出した。

「ここはやはり、アレを探すしかないかもです」

「アレ?」

「アレってなに?」

「ちょっと夕映アレは・・・・・・」

皆が夕映の周りに集まる。

「皆さんは『図書館島』は知っていますよね?」

「一応ね。あの湖にあるでっかい建物でしょ?私は行った事ないけど」

活字嫌いな明日菜が答える。

「そうです。実はそこの最深部には、読めば頭が良くなるという魔法の本があるらしいのです。
 まぁ、実際は出来の良い参考書の類とは思いますが、それでも手に入れれば強力な武器になります」

シーンと一同は沈黙する。皆、魔法の本が信じられなかったのだ。
その沈黙を破ったのはハルナだった。

「も~夕映てば、アレは単なる都市伝説だって!」

「さすがに魔法はね~」

「あー明日菜は、こーゆーのは全然信じないんやったな~」

明日菜は考えた。実物の魔法使いがいるんだし(それも3人)、もしかしたら本当に魔法の本があってもおかしくないわ・・・・・・。明日菜の小さな脳が30秒でそんな答えをはじき出した。

「明日菜~どうするん~?」

黙り込んだ明日菜に木乃香が尋ねる。
すると、くるりと皆の方を明日菜は振り向くと満面の笑顔で力強く宣言した!

「行こう!図書館島へ!」




麻帆良学園図書館島

「この裏手が、私達図書館探検部しか知らない秘密の入り口があるです。
 それと、この図書館には盗難防止のために、数多くのトラップも仕掛けてあるです。
 ですからむやみに本に触れないように」」

「「「おおー」」」

皆が夕映の解説に驚いていると、集団の後ろにいた人物が声を上げる。

「で、私達は何で呼ばれたのかしら。今からお風呂に入ろうと思っていたのに」

「そうですよ。皆さんどこに行くんですか~?」

すばやく明日菜がその二人に近づくと耳打ちする。

「ごめんなさい、遠坂さん。夕映が言うにはここ結構危ないらしいのよ。だから私達を魔法の力で守って欲しいのよ」

「だから、なんでこんな所に用があるの?」

「そっそれは・・・・・・その、この図書館には頭が良くなる本があるのよ。それを使って今度の期末を・・・・・・」

それに少し考えてから遠坂が言った。

「まったく呆れた考えね。・・・・・・本来なら勉強という物は自分でする物だけど。でも私も魔術師の端くれだしね。
 その本には興味があるわ。
 ネギ君どうする?」

「だっダメですよ!遠坂さんも言ってたじゃないですか。魔法ばかりに頼るなって」

ネギが遠坂に反論する。

「ネギ君、それは時と場合によるわ」

「そうよ!今回だけだからお願い」

明日菜に懇願されしぶしぶと頷くネギ。

「でっでも、魔法は僕封印しちゃって・・・・・・」

「え!」

「あ、そうそう私も今はほとんど使えないわよ?」

「うそ!」

ネギと遠坂の言葉に驚く明日菜。

「早く来るですよ~!」

すでに話し込んでいる3人以外は扉から図書館内部に入って行っていた。




図書館内部

ヒュン、パシッ!

「ねえ、ここ人が来るんでしょ?」

本を手に取ったネギ目掛けて飛んできた矢を掴みながら、一応魔術で体を強化している遠坂が夕映に尋ねた。ネギは飛んできた矢に、腰が抜けたのか呆然としている。

「今ここは地下三階です。ここまでは私達中学生は入って良いのです」

「中学生はって・・・・・・、このトラップは?」

「先ほども言った様に、ここの図書館には貴重な本がたくさんあります。
 それを盗まれないようにするためのトラップです。
 気をつけてくださいね、むやみにそこらを触ると発動しますから」

様は盗掘者用のトラップということだ。
注意深く見ればそこら中にトラップが仕掛けられているのがわかる。
伊達に戦場に行ってはいない。

「わかったネギ君。それには触れないようにね」

遠坂に注意されあわてて手を引っ込める懲りないネギだった。

「すっすいません。珍しかった物で遂・・・・・・」

がさごそと夕映がリュックから地図を取り出すと、それをみんなの前に広げた。

「私達がいるのはここです。ここから地下11階まで降り、地下道を進んだ先に目的の本があるようです」

「ねぇ、明日までには帰れるの?」

バカピンクこと佐々木まき絵が尋ねる。

「往復でおよそ4時間、今はまだ夜の7時ですから、少なくとも11時ぐらいには帰れるはずです」

それを聞いた明日菜が気合を入れる。

「よしっ!明日は試験でバイト休みだし、絶対手に入れるわよ『魔法の本』!」

「「「おー!」」」



その後は本棚の上を歩き、湖を越えて、変な物に追いかけられてようやく地下11階に辿り着いた。
11階では地下道を探してそこから『魔法の本』が安置されている部屋目掛けて突き進んだ。
そして遂に

「おめでとうございます皆さん。この上が目的の本がある部屋です」

少し勝ち誇った顔で夕映が言った。 いつも無表情な顔には少し笑みが浮かんでいる。
すぐに皆で石蓋をどかす。
するとそこには大きな部屋があった。

「すっすごすぎるー!」

「私こーゆーの見たことある。弟のPSで」

「ラスボスの間アル!」

はしゃぎまわるバカレンジャー。
遠坂は隣にいる疲れた表情のネギに尋ねた。

「ねぇネギ君、ここなんか魔力が集まってない?」

「はい、僕もさっきからそう思ってたんですよ」

二人で辺りを観察する。
家一軒が丸ごと入りそうな広間には所々に風化しているが装飾がほどこされている。
奥には巨大な石像が二体。まるで何かを守るように鎮座していた。
その石像の間の足元に目を留めたネギは驚く。

「あ、あれは!」

「ど、どうしたのネギ?」

驚くネギに明日菜が尋ねる。

「あれは伝説の『メルキセデクの書』ですよ!信じられない、どうしてこんな極東に」

「確かにアレからは強い魔力を感じるわね」

2人の発言に皆が驚く。

「つまりアレは本物なの?」

「これで最下位脱出?」

ギラリと一斉に目の色を変える。

「私が一番乗りアル~」

そう言って駆け出すクー・フェイ。

「やったーこれで最下位脱出よ!」

すると皆も我先に駆け出した。

「あっ待て!あんな貴重な魔法書、絶対に罠があります!」

時すでに遅し、本目掛けて走るバカレンジャーの足元の橋が突然ガコッと中央から割れ、追いかけていたネギと木乃香と遠坂もを巻き込んで皆落下した。
長瀬楓と遠坂以外は着地に失敗して折り重なる。

「あいたたたっ。もう何よこれ」

そういって立ち上がった明日菜が見た物は奇妙な図形だった。
正方形の足場の上に丸い円があり、円の中にはローマ字で“あ”から“ん”まである。

「これってツイスターゲーム?」

すると突然石像が動き出した。それに気づいた遠坂がさっと身構える。

「ふぉふぉふぉこの本が欲しくば、わしの質問に答えるのじゃー!」

「石像が動いたー!」

皆が驚く。そんな中、冷静に遠坂はこの声は学園長だわと思た。

「何をしてるんですか学園ちょ『さぁ始めるぞい!』・・・・・・」

「学園ちょ『第一問』・・・・・・いい加減に」

言葉を遮られシカトされたことに怒りを覚える。

「”DIFFICULT”の日本語訳は?」

しかしそれを無視してさっさと先に進める石像だった。
少し冷静になり遠坂は皆に指示を出す。

「みんな落ち着いて。たぶんこれはあいつの質問の答えを踏んでいけば良いのよ」

「ツイスターゲームと一緒ってこと?」

「ツイスターゲームはしらないけど、たぶんそうよ」

幼いころはほとんど遊んだことが無い遠坂は、ツイスターゲームを知らない。

「『でぃふぃころと』ってなんだっけ?」

「それは『そこの3人は答えたらダメだぞい』・・・・」

そう言ってネギと遠坂と木乃香を指差す石像。

「えっとあれですよ!簡単の反対です」

「わかった!」

皆はツイスターゲームの盤にのると文字を押した。

「む」

「ず」

「い」

『難い・・・・・・まぁ正解じゃ。続いて第2問』

そうしていくつかの質問に答えていく。
答えるたびにどんどんバカレンジャーの体は複雑に絡み合っていく。

『最後の質問じゃ、『DISH』の日本語訳は?』

「何アルか?」

「ほら料理を載せる奴よ」

「メインディッシュとかゆーやろー」

「わかった!お皿ね」

明日菜が答え皆が文字を押していく。

「お」

「さ」

「ら!」

「・・・・・・あれ」

しかしまき絵と明日菜が押したのは『ら』ではなく『る』であった。

「「「「・・・・・・」」」」

『はずれじゃな!』

すると石像は持っていたハンマーを振り上げて床を壊す。
床下は真っ暗な暗黒が広がる穴だった。

「明日菜のおさる~」

「なんでわたしまで~」

「いやああああああ~」

口々に文句と悲鳴を上げながら8人はその穴に落ちていった。






はい第9話でした。どうでしたか?
図書館島編第三話です。ちなみに図書館島編はあと二話か三話まであります。お楽しみに。
[ 2013年10月16日 14:54 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 08

広場には人影が1つあった。






赤い丘より新たな世界へ8






広場に近づいていくと、こちらに気づいたのか人影が振り向く。
月明かりが照らし出した、その人影は生徒の桜咲刹那だった。

「何やってんだ桜咲、下校の時刻は過ぎたぞ。早く寮に戻らないと」

困惑しながらも桜咲が言う。

「私はここで少し待ち合わせをしているんです。衛宮先生こそどうなされたのですか?」

「いや、俺もここで待ち合わせ何だけど・・・・・・」

その場に沈黙が下りる。先に沈黙を破ったのは桜咲だった。

「・・・・・・衛宮先生が学園長の依頼を受けた今回のパートナーでしょうか?」

「依頼を受けたって・・・じゃあ桜咲も警備員なのか?」

「そうですね。私も学園長からの依頼で受けていますから」

「そうか。なんというかまさか桜咲がいるとは思わなかったな」

驚きながら俺が言った。

「私もですよ。まさか衛宮先生がこちら側の人間だったとは思いませんでした。
 身のこなしから、何か武術はしているとは思っていましたが」

「しかし何でまた学園長はこんな危ない仕事を女の子にやらせるんだ」

すると俺の発言にむっときたのか桜咲が少し大きな声で言った。

「それはどう言う意味ですか。これでも私は京都神鳴流を会得しています。
 そこらの妖魔には簡単に負けません。
 衛宮先生こそどうなのですか?
 身に着けている装具は立派なようですが、あなた自身はどうなのです?」

「そんなに怒らなくてもいいだろう。別に馬鹿にしているわけじゃないんだからさ。
 まぁ、俺もそこそこはやれると思うけど、なんてったて今回が初めてだからな」

「素人ですか、では今回は私の援護に回ってください」

そう言ってさっさと歩き出した桜咲を追いながら俺は言う。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。いくらなんでも女の子を前線にはやれない。俺が前に出るから桜咲が援護をしてくれ」

またむっときたのか今度は怒鳴る。

「いい加減にしてください!貴方は今回が初めてなんでしょう。
 貴方がどんな力を持っていようと、足手まといになりますから後方に下がってください」

「足手まとい・・・・・・今回は援護するけど、その言葉きっと後悔させてやる」

さすがの俺も桜咲の言葉にむっときてつい言い返してしまった。
それを聞いた桜咲はプイッと顔をそむけると、早足になって先に行ってしまった。




麻帆良学園 郊外の森

学園から少し離れた湖のさらに先の森まで来た。

「ここからが結界の境界線です」

桜咲が指した方向には一本の魔術加工がされた杭が立っていた。

「あの杭から向こう側が学園、そしてこちら側が結界外になります」

そう言って結界外に出た。
後ろを振り向くと来た道とは違う道筋になっている。

「なるほど。認識障害の魔術か。それにこれは内に何かを封じ込める結界でもあるな」

少し解析しながら言う。

「外からの一般人が入らない様にです。封じ込めている方は知りませんが・・・・・・。しかしよく分かりましたね、そんな事」

驚いた表情で俺の顔を桜咲が見た。

「まぁ、解析とかは得意なんでな。少し調べれば大体はわかる。それより先を急ごう」



さらに奥に進んでいく。すると

「来るぞ」

「わかっています!下がって援護を!」

開けた広場には大量の魔物がいた。鬼などの化け物である。
こちらに気づいたのか一斉に振り返る。
すぐさま桜咲が攻撃に出た。

「斬空閃!」

桜咲の剣から放たれた不可視の剣圧が敵の最前を吹き飛ばす。
そして敵が怯んだ間に桜咲は一気に突っ込んでいった。

「――――投影、開始(トレース・オン)」

続いて俺も親しんだ干将・莫耶を投影するとその後に続く。






しばらく2人とも無言で戦い続けたが、敵の数はなかなか減らない。

「なかなかやりますね」

「おまえもな」

「しかしこう敵が多くては、このままじゃこちらが危ないです」

その言葉に俺は笑みを浮かべて言う。

「フッ桜咲、さっき言ったろう後悔させてやるってな」

「え?」

桜咲の近くまで移動すると俺は詠唱する。

「――――投影、開始(トレース・オン)」

「――――憑依経験、共感終了」

「――――工程完了。全投影、待機(ロールアウト バレット クリア)」

空に浮かぶのは20にも及ぶ剣群。宝具と言うほどではないが、それなりに優れた剣だ
その切っ先を一斉に敵に向ける。

「――――停止解凍、全投影連続層写!(フリーズアウト ソードバレルフルオープン)」

瞬間その剣群は轟音をたてて敵に突き刺った。
足を吹き飛ばし、手を吹き飛ばし、頭を吹き飛ばし、胴体を貫く。すべての剣は正確に相手の戦闘力を奪った。

「なっ!どこから剣が・・・・・・」

刹那は突然現れた大量の剣に驚く。それにその剣群がどれも名剣の様に見えた。
それが一斉に敵を襲ったのだ。呆然とする私に衛宮先生が言った。

「伏せていろ」

「え?」

そして開放される。破壊の嵐が。

「《壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)》」

前回とは違い俺は本気で魔力を開放した。その衝撃は凄まじく辺り一体を蹂躙した。

煙が晴れると、そこには巨大な穴ができ、周囲一体の木々は根こそぎ吹き飛ばされていた。
剣の近くにいた敵は消滅。離れた所にいた敵も大きなダメージを負っている。

「さてと、後は残りの殲滅だ。いくぞ」

そう言って俺は残りの敵を倒しに行く。




私は呆然としていた。
衛宮士郎、最近やってきた2-Aの副担任。
その彼がやった事が私には信じられなかった。
突然現れた無数の剣、それが敵に突き刺さり衛宮先生が「伏せてろ」と言った後、爆発したのだ。
爆発は凄まじく、周囲一体を荒野に変えていた。そしてあれだけの数の敵が一瞬にして半分以下になっていたのだ。
今も彼は白と黒の剣で舞うように残った敵を倒している。
私にはその光景がどこか幻想的に見え、私の心は彼の舞に釘付けになっていた。

「桜咲!」

その声に、はっと気づいた時には生き残りが背後にいた。

「しまった!」

あわてて切り捨てようとするが敵の攻撃の方が早い。

「くっ・・・・・」

どん!

敵の攻撃が私に届こうとした瞬間、目の前を銀の閃光がよぎり敵を吹き飛ばす。

「何をしている!敵はまだいるぞ。ぼーとするな」

視線の先には黒い弓をかまえた衛宮先生が立っていた。

「すっすいません」

あわてて夕凪を構えなおすと私も残った敵を倒しにかかった。





30分後、敵はすべて殲滅した。
さすがにあれだけの敵を大量に相手にするのは疲れた。魔力も結構使ってしまった。
ふと気づくと目の前に桜咲が立っていた。

「どうした?」

すると沈痛な顔で喋り始めた。

「すみませんでした。貴方のことを足手まといだなんて言って。
 逆に私の方が足手まといになっていました」

「・・・・・・」

「貴方がこれほどの力を持っているなんて思いませんでした。私は貴方を侮っていたようですね」

悔しいのか泣きそうになりながら桜咲が話す。
そんな桜咲に俺はやさしく語る。

「いや、お前もよくやってるさ。お前ぐらいの年の時には、俺なんてヘッポコだったからな。
 気にすることはないさ」

「でも・・・・・・」

まだ何かを言おうとする桜咲の頭に手を置くと優しくなでながら言った。

「大丈夫だよ。君はまだまだ強くなれるんだから、このことを気にすることはないさ。
 これから一生懸命にやればいい」

桜咲は顔を真っ赤に染めるとうつむきながら返事をした。

「はい・・・・・・」

「よし、それじゃ帰ろう」

そして俺は遠坂たちが待つ家に帰りだす。
後ろからなぜか顔を赤らめた桜咲が着いて来る。




衛宮家  

「ただいま~」

家に着いたのは8時30分ちょっと過ぎだった。
寝るのにはまだ早いのに家の中には電気がついていない。

「遠坂~ネギ君~」

呼んでみるが返事がない。

「おかしいな」

部屋にも行って見たが2人ともいなかった。
リビングを覗くとテーブルの上に一通の手紙が置いてあった。

『ネギ君と少し出かけてきます。すぐに戻ると思うから、心配しないでね。 By遠坂』

「どこに行ったんだ?」

買い物かな?と思いリビングで夕食を食べながらテレビを眺める。
9時ごろになるとさすがに遅いと思い、心配しているとピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

「おっ、帰ってきたのかな」

玄関に向かいドアを開ける。

「お帰り~どこに行ってきた・・・・・・てあれ?」

しかしそこにいたのは遠坂たちではなかった。

「たっ大変です。ネギ先生たちが行方不明に~!」

「衛宮先生助けて!遠坂さんもいっしょなんだよ」

そこにいたのは宮崎のどかと早乙女ハルナだった。





はい、第八話終了です。遂に立ちました、刹那フラグ。士郎このままじゃ本当にロリコンになるぞ!
今回の士郎は本気戦闘モードです。まぁ私の中ではこれぐらいは出来る士郎なのです。
さて次回はネギと遠坂が主役です。お楽しみに。


[ 2013年10月16日 14:51 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 07

この世界に来て数日がたった。






赤い丘より新たな世界へ7






教師の仕事にもなれてきた。とはいっても担任はネギ君だから、俺は特に何もしてないけど。
そういえば「恐怖の豪速球ドッジボール事件」なんてのがあったな。高校生と喧嘩してドッジボール大会で決着つけようとしたのだが、主に遠坂が・・・・・・思い出すのは止めとこう。あれは2-A全員のトラウマになっているだろう。
まぁ、色々と事件もあったが今のところこの世界での生活は順調だった。




「そろそろあったかくなってきましたね」

「そうだな。春になったらお花見とか行きたいな」

「そうね。みんなで行きたいわね」

話しながらも足を動かして学園に向かう。
ネギ君も俺達との生活に慣れてきたようで士郎さん士郎さんと懐いてくる。
俺としては弟ができた様で結構うれしい。
クラスの奴らからも衛宮先生はネギ君のお兄さんみたいと言われているしな。


朝の職員会議終了後、俺は源先生に呼び止められた。

「衛宮先生、学園長がお呼びですよ」

「学園長がですか。分かりました。すぐに行きます。
 ネギ君先に行って授業始めといて」

「分かりました。先に行ってますね」

ネギ君を先に教室に行かせ、俺は学園長室へ向かった。



学園長室

「失礼します」

ドアを開け学園長室に入る。
執務用の机に座って書類を書いている学園長。
う~むやはりあの頭の形は気になるな。脳みそはどんな形なんだろ?

「わざわざ呼び出したりしてすまんな」

学園長の奇怪な頭を眺めていた俺はあわてて答える。

「いえ、でどのような用件ですか?」

「うむ、最近のネギ君はどうじゃ」

最近のネギ君か、授業は真面目だし生徒とも打ち解けてるから結構いいんじゃないかなと思い言った。

「そうですね、授業は真面目ですし、生徒にも慕われてがんばってると思いますよ」

「ふぉふぉふぉ、そうかそれは結構じゃな。それなら4月から正式に教師に採用できそうじゃ」

「そうですか。それはよかった」

「じゃがもうひとつ課題が必要じゃな。立派な魔法使いとしての。ふぉふぉふぉ」

やはりこの爺さん何を考えてるのか分からんな。そう思っていると学園長がなにやら書き始めた。
書き終わるとそれを封筒にいれ俺に差し出す。

「これをネギ君に渡しておくれ。最後の課題が書いてある」

「分かりました渡しておきます。で、用件はこれだけですか?」

そう聞くと学園長が引き出しからなにやら紙を一枚取り出した。

「いやもうひとつあるんじゃ。警備員の仕事じゃ」

そしてその紙を俺に渡す。紙に記載されていたのは、警備員についてと給料についてだ。

「いつからですか」

「うむ、今日の夜からじゃ。この学園には色々あってな、魔物が集まってくるんじゃよ。
 結界があるから一般人に危害は及ばんが、たまに結界の綻びから侵入してくる奴がおるんじゃ。そうなる前に今回の仕事は結界外に集まっている魔物の掃討じゃ。
 1名別に警備員をつけるから、詳しい事はその者に聞きなさい」

「わかりました。寮の警護はどうするんですか?」

俺と遠坂がいなくなれば寮の警護はいなくなる。

「そうじゃの、今回の仕事はそれほど大変じゃないからの。2人の内どちらかが行ってくれればよいさ」

学園長に言われて俺は考える。今のところ遠坂は基本魔術とガンドしか使えない。あと中国拳法?
宝石が無いからあまり大きな魔術は出来ないはず。
ということは、今のところ戦えるのは俺ということになる。

「俺が行きますよ。遠坂にはネギ君と留守番してもらいます」

「そうかそれじゃ頼んだぞ。集合場所は世界樹前の広場じゃ」

簡単な打ち合わせをした後に、俺は学園長室から退室した。




放課後

HR前にネギ君に手紙を渡す。

「ネギ君、学園長から最終課題だってさ」

「え!」

驚いたネギ君は封筒を受け取ると、そっと開けて中の手紙を読む。

「な・・・なーんだ。簡単そうじゃないですか。てっきり、もっと大変なことかと思いましたよ」

読み終わってほっとしたような顔で言った。

「課題はなんだったんだ?」

「これですよ」

そう言って、俺に最終課題が書かれた手紙を渡す。そこに書かれていることを読んでみる。

「ネギ君へ 次の期末試験で2-Aが最下位脱出できたら、正式な先生にしてあげる。
 P,S 衛宮先生に協力してもらったらダメだぞ。     麻帆良学園 学園長 近衛近右衛門 」

読み終えた俺はゆっくりと無言で手紙を封筒に戻すと、ネギ君の肩に手を置いた。

「ネギ君、君はうちのクラスの成績を知ってるかい?」

「どっ、どうしたんですか?いきなりそんな真剣な声を出して」

俺は無言で俺の名簿に挟んでいるクラス全員の成績表を渡す。

「何ですかこれ?・・・・・・・そっそんな」

成績表に目を通したネギは愕然とした。

「ネギ君、現実はいつだって厳しいんだよ。負けるな!」

すでにネギ君は真っ白になっていた。





2-A

「えーと皆さん聞いてください!今日のHRは大勉強会にしたいと思います。
次の期末テストはもう、すぐそこに迫ってきていますから」

「え~いいよネギ君、うちはエスカレーター式なんだから勉強しなくてもさぁ」

ぶーぶークラスの面々が文句を言う。
それを後ろから眺めていた俺は、君達は間違ってる高等部に行けば赤点取ったら留年なんだぞと思ってみる。

「あのっそのっ・・・実はうちのクラスが最下位脱出できないと大変なことになるんです。
 ですから皆さんがんばって猛勉強していきましょう!」

「ネギ先生! それはすばらしいご提案ですわ。皆さんもがんばりましょう」

ネギ君の意見に賛成なのは学級委員長の雪広あやかだけだった。
この委員長はショタコンである。ネギ君大好き少女なのだ。

「ありがとうございます、委員長。では英語を始めますね」
 
ネギ君も自分の未来がかかっているので真剣である。
すると椎名桜子が言った。

「先生~ただの授業はつまんないから英単語野球拳がいいと思いま~す」

「ダメーダメダメ絶対ダメ!」

「いいですね。面白い方が頭に入ると思います」

神楽坂が必死に止めようとする。
自分が成績悪いから一番最初に餌食になることがわかっているのだ。
しかしネギ君は野球拳の意味を知らないのかあっさり肯定してしまう。
それをギロッと殺気の篭った視線で睨む神楽坂。
俺はあわててネギ君に言う。

「まてまて、面白いからって羽目の外し過ぎじゃないのか」

「いいじゃないですか。生徒が自主的ににやるっていってるのなら」

「・・・・・・ネギ君、野球拳の意味知ってる?」

俺は野球拳を知らないネギ君にレクチャーする。すると頭にパサッと何かが降ってきた。

「なんだ?」

頭に手をやり乗っている物を掴みとる。
・・・・・・ブラジャーである。フムこのサイズはCカップだな。なんとなくビョ~ンと引っ張ってみた。
ふと何か嫌な予感がする。

「しっしっ士郎先生」

俺の前にいたネギ君が突然怯えだす。

「どうしたんだいネギ君」

「うっうっ・・・うし・・・後ろ」

「えっ」

ゆっくりと後ろを振り向くとあかいあくまが炎を背景に立っていました。

「あら衛宮くん、面白い物をもっていらっしゃるのね」

視線の先には握り締めた誰かのブラジャー。

「とっ遠坂さん、こっこれはですね」

「やっぱり胸が大きい方が好みなのね」

めらめらと怒りの炎を上げながら腕を振り上げる。
すでに周囲のクラスメイト達は教室の隅に撤退している。というか怯えている。
ネギ君なんて半泣き状態だ。

「ちっ違うぞ。俺は胸が小さくてもだな・・・」

「問答無用!」

遠坂の身体強化したパンチが俺を襲う。

「ごべらっ!」

机をなぎ倒して吹き飛ぶ。
強烈な一撃に朦朧とする意識の中、クラスの連中の話し声を聞いた。

「聞いた? 衛宮先生いま小さい方が好きて言ったわよ」

「やっぱりロリコンなのね」

「鳴滝姉妹は狙われそうだな」

「怖いです~」

ゴッドああ神よ。私が何をしましたか・・・・・・



放課後

何とか遠坂の機嫌を取りネギ君と一緒に三人で家に帰る。

「ああ~どうしよう。このままじゃ立派な魔法使いにはなれないよう」

さっきの出来事から不安を覚えているようだ。

「大丈夫。なんとかなるさ」

「でも・・・・・・そうだ!いっそうのこと頭がよくなる魔法を・・・副作用で1ヵ月パーになるけど仕方がない!」

なにげに問題発言である。1ヵ月もパーになると結構大変だと思うが。
すると遠坂が真剣な声でネギ君に言った。

「ネギ君、何でも魔法に頼るのはよしなさい。
 魔法は便利みたいだけど、そればかりに頼っているといつか自分にしっぺ返しが来るわよ」

遠坂の発言にハッとするネギ君。

「それに魔法を使うのは、生徒の気持ちを考えない自分勝手な行動よ」

とどめの一言にシュンと頭をたれる。

「すみません。遠坂さんの言うとおりですね。僕はダメな教師ですね」

「気にしなくていいわ。いまそれはダメだってわかったんなら、別の方法を探せばいいのよ。
 そうやって人は成長していくんだからね」

その言葉に勇気付けられたのか

「はいっ!ありがとうございます。僕は期末試験まで魔法を使わないで1教師として生身で生徒にぶつかってみます」

「その調子だネギ君」

「そうと決まればさっそく ラス・テル マ・スキル マギステル 誓約の黒い三本の糸よ 我に三日間の制約を」

いきなり魔法を唱えだす。するとネギ君の右腕に三本の黒い線が現れる。

「ネギ君なにをしたのかな?」

「三日間魔法を使えなくしました。これで僕はただの人です。
 よ~しこれで正々堂々とがんばれるぞ~。とりあえず明日のカリキュラム組まなくちゃ!
 先に家に戻ってますね」

そう言うとあっという間に走って帰っていった。

「なぁいいのかあれで?」

「いいんじゃないの。本人はやる気出してるみたいだし」

「それもそうだな」





衛宮家

夕食の準備を済ますと俺は遠坂の部屋に向かった。

コンコン

「遠坂はいるぞ」

「どうぞ」

部屋に入ると遠坂は机の上でなにやら本を読んでいた。机の周りにはたくさんの本が積まれている。
すべて外国語で書かれているようだ。俺が知らない文字ばかりだ。

「何読んでんだ?」

「この世界の魔法についてよ。学園長から借りてきたのよ」

本を閉じるとこちらに向き直った。

「でどうしたの?夕食がもうできた?」

「いや、俺はいまから出かけてくるから先にネギ君と食べていてくれ。
 準備は出来てるから、食べる前に温めればいいようにしてある。
 それと遅くなるかもしれないから先に寝ててかまわない」

そう言って部屋から出ようとする。

「ちょちょっと待ちなさいよ。どこに行くのよ?」

「仕事だよ」

ポケットから学園長に渡された書類を出して渡す。遠坂がそれをひったくる様に奪うと読む。

「何よこれ!もう勝手に決めないでよね。まったくあんたは・・・・・・でどこにいくの?私も行くわよ」

「お前は留守番だ。寮の警備があるからな。それに今お前は宝石がないだろ。
 大丈夫だよ。そんなにたいした事じゃないから」

「・・・・・・仕方ないわね。でも絶対無理はしないように。なんかあったら殴り殺すわよ!」

ぷりぷり怒る遠坂だったが最終的にはお許しが出る。

「わかってる。お前には心配をかけるような事はしないよ。
 じゃ行って来るから」

そう言って遠坂の部屋から出る。
そのままいつもの戦闘服である黒いボディーアーマーとあかい聖骸布のコートを身に着けると、俺は世界樹の下へ向かった。


はい、第7話の終了です。皆さんどうでしたか?
次回をご期待ください。

[ 2013年10月16日 14:50 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 06

まだ空が薄暗い朝。いつも通りの時間に目を覚ます。






赤い丘より新たな世界へ6






隣で寝ているネギ君を起こさないように、俺はそっと部屋から抜け出した。
そのまま洗面所に向かい顔を洗って軽く寝癖を整える。
次に冷蔵庫の中が空なので、外に行き食料を買いに大通りのコンビニに向かう。
外はまだ薄暗く息が真白になるほど気温は低い。
コンビニに着くと昨日学園長から渡された通帳からATMでお金を降ろした。通帳の中に表示された残金は結構大金だ。
放課後に一辺に買い物するためにお金を少し多く降ろした俺は、とりあえず朝食の材料と牛乳を買う。ついでにこの世界のことを知るために新聞も買った。
俺はコンビニから出ると肌寒い空気の中、早足で家に向かう。
大通りには人の姿は見えない。この学園は学園都市だ。こんな早くから生徒は外出していないだろうと思っていると

「あれ? 衛宮先生じゃん」

後ろから声をかけられた。
振り向くとうちのクラスの神楽坂明日菜が立っていた。

「おはよう神楽坂。朝早いんだな」

「おはようございます。今バイト中なんですよ」

「バイト?」

麻帆良学園ではバイトは理由があれば禁止されていないそうだ。

「新聞の配達ですよ」

そう言って肩からさげているバックの中の新聞を見せる。

「ふ~ん。大変そうだな」

「そうでもないですよ。自分のためにやっているんですから。
 あっと、いけないもうこんな時間だ。それじゃ失礼しますね」

「ああ、怪我しないようにがんばれよ」

俺が声をかけると「はい」と言って神楽坂は駆けて行った。




家に着くと食料をキッチンに置き、リビングに行く。
ちらっと時計を見ると時刻は6時になった所だった。
いつもはこの時間は朝の鍛錬をしているのだが、替えの服がないので今日は断念する。
とりあえず軽くシャワーを浴びる。風呂から上がるとリビングに戻り、買ってきた新聞を隅から隅まで読む。
昨日学園長にこの世界の事を聞いたとき、表のことはあまり向こうの世界とは変わらないことが分かった。通貨も一緒だし。
これといったニュースも無かった新聞をきれいに畳んでテーブルの隅に置いておく。
後で遠坂も読むだろう。

ちょうど7時になった頃にネギ君が起きてきた。

「ふぁ~、あっおはようございます。士郎さんは朝早いんですね」

「おはよう。まぁ習慣だからね。
 朝ご飯食べるだろ。今から作るから顔を洗っておいで」

「すみません。朝ご飯まで作って貰って」

「いんだよ。ネギ君まだ子供なんだから。
 それにこの家で一緒に生活するんだから遠慮しなくていいよ」

ネギ君が顔を洗って身支度を整えてる間に、朝買って来た食材で朝食を作る。
さっとサンドイッチを作るとテーブルの上に置く。
とそこへ顔をネギ君が戻ってきた。

「うわー、美味しそうですね。士郎さんは料理が上手なんですね」

「親父がズボラだったから自然と覚えたのさ。
 ちょっと待っててね。遠坂を起こしてくるから」

そう言って俺は遠坂の部屋へ向かう。


コンコン

「遠坂~起きてるか。朝だぞ」

とりあえず声をかけた。
返事がないことを確認して俺はゆっくりと扉を開る。
ベッドに視線をやると朝に弱い遠坂はまだお休みの様だ。

「遠坂。起きろ」

ベッドに近づき遠坂をユサユサとやさしく揺り起こす。

「う~ん。もう少しだけ・・・・・・」

「ダメだ。学校に遅れるぞ。早く起きろ」

「学校?」

そう言うとゆっくりと体を起こし寝ぼけ眼で俺を見つめる。

「おはよう士郎」

「ああ、あはよう。早く支度しろよ。学校に遅れるぞ」

ボーとしている遠坂の低血圧気味の頭が動き出すまで少々時が経つのを待った。

「・・・・・・そうだったわね。私は中学生になったんだっけ」

そして自分の体を撫で回し最後に胸を揉む。

「ああ~あんなに大きくなったのに何で小さくなるかな。せめて胸だけでもそのままにして欲しかったわ」

高校を卒業し時計塔に入学するためにロンドンに住み始めると、俺は身長が遠坂は胸が嘘のように大きくなった。よほど向こうの土地が体にあったのだろう。
しかし今では遠坂の胸は昔に戻っていた。

「ふざけてないで早く支度しろよ。ネギ君が待ってるぞ」

「ふぁ~い」

俺は遠坂が覚醒したことを確認してから部屋を出た。二度寝は許さん!



リビングに戻るとネギ君が食卓についてテレビを眺めていた。 子供なのにニュースを見ている。
真剣にニュースを見ているネギ君を見ると大人だなぁと感心してしまう。
伊達に10歳で教師はやっていないな。

「ネギ君、遠坂は今準備してるから先に食べてていいよ」

「いえ待ってますよ」

「そうか? あ、ネギ君は牛乳温める?」

「そうですね。今日は寒いですからお願いします」

朝一番に牛乳を飲む遠坂のために、今朝は寒いのでホットミルクを作る。そのついでにネギ君の分も温めた。

「はい。熱いから気をつけてね」

「ありがとうございます」

ホットミルクが入ったカップを渡すと、受け取ったネギ君は熱いのでカップに口を近づけフーフーと息をかけた。
そんな様子を見ると、こんなところはまだまだ子供だなと思い少し笑ってしまう。
支度が出来た遠坂がリビングに入ってきた。

「おはようネギ君」

「おはようございます遠坂さん」

全員がそろった所で朝食を食べることにする。

「「「いただきます」」」




午前8時15分
通学路の途中で思わぬハプニングがあったが学園に着いた。
玄関で俺とネギ君は職員室へ遠坂は教室に向かうために別れる。

「じゃ、後でな」

「ええ、また後で」

遠坂と別れたネギ君と俺はそのまま職員室に歩いていく。
麻帆良学園はとても大きく、初等部から大学部までのエスカレーター方式のマンモス校である。
もちろん生徒の数はとても多く、それにともない学園の中は広い。
そのため移動するのは結構めんどくさい。

職員室に着くと、さっそく昨日紹介されていない先生がいないか確認する。
生徒が多いと必然的に先生の数も多い。挨拶回りも大変だ。
一応、昨日の金髪の女性も探したがおらず、先生達に尋ねたが知らないそうだ。
そうこうしている内に朝の会議が始まった。

「今日の所はそれほど連絡することはありません。きょうもがんばって行きましょう」

源先生の連絡事項も終わり朝の会議は終了した。
俺とネギ君は授業の準備をして教室へ向かう。

「そういえば僕の担当は英語ですけど、士郎さんは英語大丈夫ですか?」

「おいおい、これでも君の補佐なんだから英語は喋れるよ。世界中を旅してたからね」

「へ~すごいですね。僕の父さんも世界中を旅していたそうです」

「そういえば昨日お父さんがどうとか言ってたよね」

「サウザントマスターていわれて千の魔法使う立派な魔法使いだったそうです。でも・・・・・・父さんは僕が生まれた頃に死んだって。
 だけどぼくは一度だけ父さんに会ったことがあるんですよ。
 だから僕は父さんみたいに立派な魔法使いになって、父さんを探しに行きたいんです」

ネギ君の話によると、お父さんはNGO団体《悠久の風(Austro-Africus Arternalis 通称AAA)と言う組織の《赤き翼(アラルブラ)》というパーティーのリーダーをしていて、世界中を旅して多くの不幸な人たちを救っていたそうだ。
その功績によって、魔法世界では英雄と称えられて有名人らしい。まさにこの世界での《正義の味方》だ。

「そっか、ネギ君のお父さんは正義の味方なんだな」

《正義の味方》俺が向こうの世界でなろうとした存在。また切嗣がなれなかった存在。
ふとおれはこちらの世界の《正義の味方》に会ってみたくなった。

「いつか俺もネギ君のお父さんに会ってみたいな」

「はい。見つかったら士郎さんにも会ってくれますよ」

そうして二人で話していると2-Aに着いた。



俺はネギ君の上に落ちてきた黒板消しトラップを掴み教室に入る。

「起立ーーー気をつけーーー礼ーーー」

「「「「おはよーございます!」」」」

「おっ、おはようございます」

朝の挨拶をしてネギ君は出席の確認をする。その間に俺は教室の後ろに行き用意してあった椅子に座った。
一応俺は副担任であるが授業中にほとんどする事はない。
そのため授業中は後ろからネギ君の授業を眺める。
教師の仕事は結構大変なのだ。子供のネギ君1人でするのは結構きつい。
だから書類などの記入はほとんど俺がする事になっている。



授業終了後は2人で職員室で書類を書いたり整理したりした。昼は学食で済ませた。
遠坂は俺たちとは別に神楽坂たちと昼食を共にしていた。
転校生の遠坂は結構クラスでは人気だ。話はうまいし口調も丁寧だからだろう。
しかし、俺は知っている遠坂が巨大な猫の皮をかぶっていることに・・・・・・


放課後 学園長室

学園長に昨日の事を報告した。

「そうか。襲われたか」

何か知っている様な口調で学園長が話す。

「知っているんですか? 同僚て言われたんですけど・・・・・・」

「まぁ同僚と言えば同僚じゃな。警備員をしておるからの」

「警備員ですか。なら俺は知らないはずですね」

警備員の仕事内容や同僚の紹介は、まだ聞いていないので俺は知らない。

「ですがなぜ襲ってきたんですか。力を試すみたいなことを言ってましたけど?」

「その辺のことはおいおい説明するからの。いまは気にしなさんな」

「はぁ・・・・・」

学園長は重要な所は結構はぐらかすのだ。食えない爺さんである。
今後のこと少し学園長と話をして部屋を出た。今日は買い物に行かなくてはいけないのだ。明日着る服が無いからな。



校門でネギ君と遠坂と合流すると、町に出て洋服や日用雑貨を手早く購入した。
家に到着後は買った物を手早く整理する。後は各自部屋に戻り服などの整理をする。

いち早く整理を終えた俺はキッチンに戻り夕食の準備をした。今日はオムライスだ。
チキンライスを作り、その上に半熟の卵をのせて、みじん切りにしたパセリを散らして完成だ。
部屋の整理が終わったのかネギ君と遠坂が戻ってきた。

「うわ~美味しそうですね」

「今日はオムライスなのね」

すぐに席に着くと2人は早く食べたくてうずうずしている。最後の三つ目を持って俺も席につく。

「それじゃ食べるか」

「「「いただきます。」」」





食後に俺は今朝出来なかった鍛錬をする。
すでにネギ君は部屋に戻っていた。遠坂は風呂だ。

「――――投影、開始(トレース・オン)」

干将・莫耶を投影して仮想の敵と対峙する。
一歩二歩で相手に迫り干将で切りつける。さっと避けた敵がこちらに向かって剣を振るう。
それを莫耶で受け止め、俺は干将で反撃する。それを反復し続ける。
時間を忘れひゅんひゅんと庭に空気を裂く澄んだ音が響く中、俺は無心に剣を振り続けた。
あのとてつもなく遠く広い赤い背中に少しでも追いつくように。一心不乱に剣を振る。
だから気づかなかったのかもしれない。
剣を振る俺の後姿を悲しそうな顔をした遠坂が、じっと見ていた事を。


[ 2013年10月16日 14:49 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 05

「ふふふ。お前たちが爺が雇った護衛者か。面白い。少しお手合わせ願おうか」






赤い丘より新たな世界へ5






「誰だお前は」

俺はおぶっていたネギ君をそっと木の下に降ろした。 そして街灯の上からこちらを見下ろす人影に言った。
すると月明かりに照らされ、影から幻想的な大人の色香を漂わせる金髪の美女が現れた。

「まぁ一言で言えば、お前たちの同僚だな」

「同僚?」

教師の中にこんな金髪の先生いたか?とお思い遠坂にたずねる。

「知ってるか遠坂?」

「さぁ? わたしは見てないわよ」

「そうか、う~ん」

「知らなくて当然さ。初めて会うんだからな」

「そうなんだ。で用件は?」

「言っただろう。お前の力を試したいのさ。私の計画の邪魔になるかどうかな!」

そう言うと相手が試験管のような物を投げてきた。

「氷爆(ニウィス・カースス)!!」

試験管のような物が爆発し、瞬時に空気中に大量の水が出現して凍気と爆風が辺り一帯に広がる。

「なっなんですか!」

爆音にあわてて飛び起きるネギ君。状況が分かっていないのかおろおろする。
俺は近くにいるネギ君に危害が及ばないようにその場を離れる。

「ネギ君はそこを動くな! 遠坂! 援護を!」

「分かったわ!」

「えっ!? 一体何なんですか!」

そう言うと二手に分かれた。

「――――投影、開始」

即座に干将・莫耶を投影して相手に迫る。
しかし相手も戦闘経験があるのかなかなか間合いに入らないようにしているようだ。

「ほぉアーティファクトか。なかなかの代物だな。だが!」

そう言うと一気に相手は俺との距離を離す。

「くそっ! 早い」

「剣は間合いに入らなければ意味がないぞ! 魔法の射手 氷の17矢!!」

相手は遠距離から攻撃を仕掛けてくる。
俺は相手の攻撃を回避し近距離から遠距離に変えるため弓を投影しようとすると

「任せて士郎! 飛び道具には飛び道具よ!」

すかさず遠坂のガンドの一斉掃射が距離を取った相手に向かう。
《フィンの一撃》とも言われる遠坂お得意の魔術だ。
並みの魔術師なら一撃で昏倒する威力を持っているし、あたれば絶対骨折はする。

「無詠唱か!? そんな物! 氷盾(レフレクシオ)!!」

しかし遠坂のガンドは相手の防御結界に意図も簡単に防がれた。

「うそ! くっ、だったら!・・・てあれ?」

「どうした! 遠坂」

突然動きが止まった遠坂が、自分の体をまさぐりながら言った。

「しまったわ!宝石は向こうで全部使い切ってた!」

「なにー!」

遠坂の魔術は宝石魔術だ。
もともと戦闘者ではない遠坂は宝石という媒体がないとほとんど攻撃魔術は使えない。
そのため宝石がないとほとんど攻撃できないのだ。
だから俺と行動している時も後方支援担当だった。

「何だかよく分からんが、チャンスだな。リク・ラク ラ・ラック ライラック 光の精霊 17頭 集い来りて 敵を切り裂け 魔法の射手 連弾・氷の17矢!! 」

「危ない、遠坂さん! 風楯(デフレクシオ)!!」

すかさずネギ君が遠坂の前に魔法障壁を展開して防御をする。

「ありがと。ネギ君」

「いえ。でも何が起きてるんですか?」

ネギ君が魔法を止めたのを見て女はニヤリと笑う。

「さすがはサウザントマスターの息子だな。その年で私の魔法を受け止めるとは」

「えっ! 父さんを知ってるんですか」

驚くネギ君。

「・・・・・・おしゃべりが過ぎたな。リク・ラク ラ・ラック ライラック・・・」

相手が呪文唱えだす。俺は干将・莫耶を相手に投擲して牽制した。

「おっと! 武器を投げてもあたらなければ」

相手が回避をしようとするのを見計らって、俺は魔力を開放する。

「―――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」

ごおん!

あたりが爆音と光に包まれる。

「ぐっ!」

相手が怯んでいる間に体を強化して遠坂と混乱しているネギ君を拾い、相手から一気に距離をとる。
「くそ! やってくれるじゃないか衛宮士郎。これだけの攻撃力に判断力そして冷静さ。
 ずいぶん貴様戦い慣れしているな。ちっ、やはり爺に警戒されているようだな」

「何のことか分からんが、こっちはこれ以上の戦闘は望まない。引いてくれないか」

「ふん、まぁいい。今日はただお前たちの力を知りたかっただけだからな。
 歓迎の挨拶はこれくらいにして、今日は引こう」

そう言うと金髪の女は闇の中に消えていった。

その直後に爆発音を聞いたのかこっちに人が来る気配がしたので、俺たちすぐさまその場を離れた。




「ここまでくれば大丈夫だろう」

戦闘の現場から少し離れた森の中に隠れて、あたりに人影がないことを確認する。

「それにしても何だったんですか? あの人」

「俺にもよく分からん。いきなり襲い掛かってきたからな。
 けれど同僚と言っていたから、この学園の関係者だと思うけどな」

「そんなことどうでもいいわ。士郎、あの女は結構強いわよ。
 魔力はそんなになかったみたいだけど、触媒を使って補ってたから油断できないわ。それに戦いなれしてるわね」

「ああ、そうだな。それに向こうは全然本気じゃなかったからな。
 力だめしって言ってたから、次は本気で来るぞ」

さっきの相手の攻撃は威力をかなり抑えている様子だった。
それに相手は戦い慣れしている感じがした。かなりの戦闘をこなしていることが分かる。
俺たちも相当な場数を踏んでいるのに、相手は冷静で的確な判断力で攻撃をかわしていた。
それに俺の攻撃《壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)》も結界によって防いだのだ。
あれは威力は落としていたが、並みの魔術師が防げるはずがない。防いだとしても、ある程度はダメージを受けるはずだ。
それなのに見ためではあの女はダメージを受けている様子はなかった。それだけの力を持っているということだ。

そんなことを頭の中で考えているとネギ君が興奮して言う。

「それにしても士郎さんと遠坂さんはすごいですね! 
 士郎さんは強力なアーティファクト使うし、遠坂さんなんて無詠唱であんな強い魔法を使えるんだから」

「ふふふっ、実力よ。ネギ君もがんばればそのうちあのくらい出来るようになるわよ」

そんなことを話しながら俺たちは指定された家に向かった。





衛宮家

「今日からここに住むのか」

寮の敷地内にある管理人の小屋。というより、もはやこれは家だ。

「結構大きいわね。もっと小さい所と思ってたのに」

「でも三人で使うんですよ。これくらいあったほうがいいんじゃないですか?」

「そうだな。とりあえず中に入ろう」

ログハウス調の家の中はきれいに掃除してあった。昼間に掃除していてくれたのだろう。

間取りはトイレ・風呂・キッチン・リビングがあり、それに部屋が2部屋。
もちろん家具・家電付である。
二階はなく平屋だ。地下には倉庫がある様だ。
驚いたことに薪ストーブがあり、まるで別荘みたいだった。

「いい所じゃない。お風呂が少し小さいけど」

「文句言うなよ。貸してもらってるんだからさ」

と言いながらも俺はキッチンを探索。料理人の俺からすればキッチンの造りは大切だ。
料理は時間との勝負。一々、食器を探して手間を取りたくはない。
ついでに包丁をいくつか投影しておく。慣れ親しんだマイ包丁で料理をするためだ。
その後もフライパンなどの位置や食器の位置を確認しておく。

「調理器具は大体あるな。冷蔵庫にはまだ何も入ってないけど」

全員で一通り家中を探索した後、リビングに集まり今後のことを話す。

「とりあえず足りないものは明日買うとしてだな、今日は部屋をどうする?2部屋しかないけど」

部屋は玄関から入って廊下の奥にある。もちろん一人部屋だ。
その途中にリビングがありその扉の前に脱衣所がある。

「もちろん士郎と私。ネギ君は一人で部屋使っていいわよ」

「えっ、そっそれはダメですよ! 
 士郎さんと遠坂さんがおんなじ部屋なんてダメです。
 教師と生徒なんですから。その、付き合っていてもです」

「そうだぞ遠坂。いくらなんでもそこまではダメだ。
 俺がネギ君と一緒の部屋になる」

ネギ君と俺から即座に却下された遠坂は

「前は一緒だったじゃない。士郎は、私とおんなじ部屋は嫌?」

突然、潤んだ瞳で見上げて言った。はっきり言ってめちゃめちゃ可愛い。
だがそんなことでだまされる俺ではない。

「そんな顔してもダメだからな。
 おまえなぁ、唯でさえロリコン疑惑を駆けられてるのに俺を犯罪者にするきか」

「いいじゃない、けち~。これぐらい」

「ダメだ! ネギ君は俺と同じ部屋でいいよな。すこしせまくなるけど」

「僕は構いませんよ」

その後もギャーギャー遠坂が言ったが、最終的にはネギ君と俺が同室ということになった。
遠坂がいつまでもブツブツと文句を言っていたが。

こうして俺たちのこの世界での波乱万丈な一日目が終了したのだ。





は~いこんにちは!管理人のタモです!
第5話如何でしたか?今回はエヴァとの戦闘でした。今回エヴァは大人バージョンと言うことで士郎達に正体はばれていません。
同僚と言うのは麻帆良学園の警備員としてということです。
エヴァとの戦闘は派手に書くといったのにショボクてすみません。
戦闘シーンを書くのは大変です。魔法の呪文を資料サイトで漁ったり、漫画を読み直して探したりしました。
そんなこんなで大変な時間がかかりました。何回も訂正しましたしね。
さて、作中で出てきたエヴァの計画とは?分かる人にはわかると思いますがまだ内緒です。
第7話か第8話あたりで出して行こうかなと思っています。それまでお楽しみに!

次回
とりあえず学園長に報告した士郎。そして始まる学園生活!第6話をお楽しみに!


おまけ

次の日の朝

ガヤガヤ ガヤガヤ

「どうしたんだ?」

「さぁなんかあったんじゃない」

「行って見ましょう」

登校中、道端に人が集まっているのを発見する。とりあえず3人で様子を見てみる。

「あっネギ君に士郎先生に遠坂さん。おはよー」

「おはようございます。えっと近衛木乃香さん。これは何の騒ぎですか?」

「うちもよう分からんけどな。なんか昨日爆発があったらしいんよ」

「あ!」

そういえば昨日の夜、俺の魔術[壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)]をつかったのだ。
チラッと現場を見ると道に大きな穴が・・・

「何があったんやろな?」

「そっそうだな。何があったんだろな!あはっあはははは・・・」


その後、俺は学園長の命により道路の修復を言い渡されたのだった。


[ 2013年10月16日 14:48 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 04

学園長に指定された家に着いた時は、とっくに日が落ちていた。




赤い丘より新たな世界へ4




放課後になったので、とりあえず遠坂と一緒に学園長室へ向かう。
住居のことはもちろん、お金などの今後のことについて話さなければいけないからだ。


コンコン

「失礼します」

「どうぞ」

机で書類に何か書いている学園長。

「まぁ、座りなさい」

学園長の言葉に従い、俺たちは応接用のソファーに座る。その対面に学園長が座った。

「さて、今ここには誰もおらんし聞いてもいないから、何でも聞きなさい。
 住居などの件については後ほどな」

その言葉に遠坂が反応した。

「そうですね。小さいことは後にします。今は、現状の把握が先なので」

遠坂の言葉に、俺は気を引き締めた。ここは異世界だ。いまがどのような状況なのか把握しなければならない。

「まず、此方の魔術体系はどのようなものかお聞きかせください。
 それと魔術協会と聖堂教会についても」

「っ!」

 遠坂の言葉に俺は衝撃を感じた。そう、俺たちは一級指名手配として魔術協会と聖堂教会に追われていたのだ。
 もしこちらの世界の奴等に俺たちの存在が嗅ぎ付けられれば、最悪この学園は戦場になる。俺の心に嫌な思いが溢れる。
 すると学園長が不思議そうに言った。

「魔術? 魔術協会に聖堂教会? おぬしら何を言っとるんだ?」

「「えっ!」」

 俺たちはその言葉に驚いた。
 出会った時から学園長が強力な魔術師であるとは分かっていたが。
もしかしてあまり裏にかかわりがないのか?と思っていると、

「この世界にはそんな組織は存在せんぞ。あるのは魔法協会じゃな。日本には関東魔法協会と関西呪術協会がある。
 ちなみにわしは、関東魔法協会の理事をしておる」

「「魔法!?」」

「むっ、おぬしたちは魔法使いじゃないのか?」

学園長の発言に俺も遠坂も驚いた。

「待ってください!俺たちは魔法使いじゃなくてですね」

「待って士郎。私たちは別の世界から来たのよ。ここは平行世界、私たちの世界とは根幹から違うのかもしれないわ」

なるほど、遠坂の言葉は分かる。しかし、だからといって油断は出来ない。

「学園長。此方での[魔術師]、いえ魔法使いはどのようなことをするのですか?」
                             マギステル・マギ
「魔法学校で魔法を習い修行をし、最終的には立派な魔法使いになり困っている人のために働くのじゃ」

その言葉に驚愕した俺は学園長にたずねた。

「つまりそれは、この世界の[正義の味方]見たいなものということですか?」

「まぁ、そんなもんじゃな。公にはなっておらんがな」

それを聴いた瞬間、笑いが起こる。

「ふっ・・・ふふふ。あっははははは」

「? 何がおかしいんじゃ、士郎君」

「士郎・・・・・・」


[正義の味方]それは俺が目指した憧れの的。
切嗣から受け継いだまがい物の理想。
俺はそれを目指して戦ってきた。大切な人をも巻き込んでまでも。
困っている人の味方をして戦い、そして裏切られた。
それでも俺は救い続けた。
いつでも、どこでも困っている人のために。
だが、いつしか自分のその行動は世間には悪とされた。
そして世界を敵に回したのだ。世界は俺を危険と判断し、処分しようとしたのだ。
それでも助け続けた俺は、あの赤い丘にたどり着いたのだ。最後と思っていた終着点に・・・・・・


笑った後、黙り込む俺に遠坂が言った。

「大丈夫よ士郎。貴方は間違っていなかったわ。昔も今も。少なくと私はそう思っている。貴方が目指した・・・・・・」

遠坂の言葉を遮り俺は言う。

「遠坂。俺は自分の理想のために戦ってきた。それもお前を巻き込んでだ」

「・・・・・・」

「だけど、後悔はない。あの世界で正義の味方としてやってきたことに、俺は絶対に後悔しない。
 だから俺は、あの丘で死んでもかまわなかったんだ」

「士郎・・・・・・」

「それに俺は、お前がいてくれたからアーチャーになることはなかったからな」

「っ!」

「今、俺たちは新しい世界で生きている。
 そしてこの世界には俺たちと同じ考えの人たちがたくさんいることが分かった。
 俺にはそれがうれしいよ、遠坂。
 だから俺はこの世界で精一杯、また正義の味方を目指すよ」

「そうね。貴方の言うとおりだわ。私も後悔してない。だから貴方とこの世界でも生きるわ」

「ありがとう。遠坂」

見つめ合う遠坂と俺。

うっおほん!

「あ~悪いんじゃが、らぶし~んは後回しにしてくれんかの」

ぼんっ!遠坂の顔が真っ赤に染まる。

「すっすいません!あのっそのっ」

「まぁまぁ、よいよい。若いんじゃから」

ふぉふぉふぉと笑う学園長。意地が悪い。


その後、一通りこの世界について聞いた。裏社会はあっちの世界と大分変わるが、表社会はそんなに変化はないみたいだ。

「さて、質問はこれぐらいでいいかの?」

「はい。ありがとうございました。後はこちらで調べます」

「そうか。分からないことがあったら、裏社会については高畑君に聞けばよい」

「分かりました。そうします」

この世界については大体のことが分かった。遠坂もそれに納得したようだ。

「それでの、お金についてだがすでに振り込んである。給料の前払いじゃ。これで必要なものを買いなさい」

そう言うと学園長がカードを二枚渡してきた。

「仕事についてだが、朝も行ったとおり衛宮君には先生として、遠坂くんは生徒としてネギ君らの補佐及び警護を頼みたい。
 理由は分かるじゃろ?」

学園長の問いにうなずく。ネギ君の体から感じる、あの異常なほどまでの魔力の事だろう。

しかしもう一人魔力が高い生徒がいたようだが、

「それともう一人、わしの孫の木乃香の護衛もじゃ。
 あの子も膨大な魔力を秘めておる。 それが悪用されることだけは避けたい」

やっぱり。

「分かりました。
 こちらも助けていただいてる身ですから、出来るだけのことはやります」

「うむ。ありがとう。それと警備員の仕事については後ほど教えよう。 
 実際に行ったほうが分かるじゃろうからな。その時になったら、こちらから連絡する」

「分かりました。いろいろとありがとうございます」

俺は学園長に礼を言った。この世界で、いろいろ便宜を図ってくれる学園長の気持ちが有難かった。

「いやいや、いいんじゃよ。こちらも警備員が欲しかったからの。それにゼルレッチのお願いとあれば、聞かんわけにもいかんじゃろ」

「いえ、それでも感謝しています。見ず知らずの俺たちを助けて頂いたのですから」

俺の言葉にさすがに学園長は何も言えず、次の話に移った。

「それでじゃの。遠坂さんには女子寮に入ってもらうとして、衛宮君は寮の敷地内にある管理人の小屋でネギ君と一緒に住んでくれ」

「えっ。ネギ君とですか?」

「そうじゃ。あの子はまだ子供だからの。何かと保護者がいるじゃろて」

「はぁ、まあそう言うことなら」

学園長の言うことはもっともだったので、俺は特に反論しなかった。しかし

「意義あり!」

「何じゃろ?遠坂君は反対かの?」

「反対です!士郎は恋人の私と一緒に住むんです!
 それに、子供には父親役と母親役が必要です!」

どっか~ん!遠坂さんの爆弾発言炸裂!

「うっう~む。しかし、木乃香の護衛のために寮に入ってくれないと困るんじゃが」

「だめ!却下!」

猛烈に反発する遠坂に、俺は言った。

「しょうがないだろ遠坂。こっちは助けて貰ってるんだから。わがまま言うなよ」

「何! 士郎は私と一緒に暮らしたくないの?」

「いや、そう言うことじゃないだろ! これも仕事なんだから。
 それに生徒と教師が同居ってだめだろ」

「別にいいじゃない! 向こうでは一緒に住んでたんだから」

ギャーギャー言い争う俺たちに学園長が言った。

「しかしネギ君が女の子と一緒というのは、さすがに嫌がると思うんじゃが」

それを聞いた遠坂は、

「だったら、ネギ君の了承を得たらいいですね。学園長?」

「うっうむ、それならばかまわんが」

「ちょっと待ってください! いくらなんでも恋人だからといって、生徒と教師が一緒に住んで
 へブっ!」

「分かりました。学園長、ネギ君から了解を取ってきます」

そう言うと光のごとく遠坂は学園長室から出て行った。俺の屍を残して。


しばらくして戻ってきた遠坂の腕の中には、真っ白になったネギ君と神楽坂がぶら下がっていた。

「学園長!ネギ君から了承取りましたので、衛宮君との同居認めてくれますね」にっこり

悪魔の笑顔で学園長に迫る。

「か、かまわんが木乃香の護衛はどうするんじゃ?」

「ご安心ください。衛宮君と私の生活のために女子寮にはネコ一匹通しませんから」

「「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」」

学園長と遠坂の交渉を他所に、遠坂の一撃から目を覚ました俺は部屋の隅で白くなったネギ君となぜかいる神楽坂に同情していた。


学園長の説明も終わり、何とか復活したネギ君と神楽坂と一緒に部屋を出る。

「ネギ君これから一緒に住むことになったからよろしくね」

「はいっ!衛宮さんもよろしくお願いします」

「士郎でいいよ。おれもネギ君て呼ぶからね」

「はい。士郎さんも遠坂さんもよろしくお願いします」

「ごめんねネギ君。さっきはちょっと怖い思いをさせたみたいだから」

思い出したのか震えだすネギ君。おいおい何をした遠坂。

「いえ、大丈夫です・・・・・・」

そんなネギ君と俺たちのやり取りをじっと見ている神楽坂。

「ん?どうした神楽坂?」

「あの、衛宮先生と遠坂さんも魔法使いなんですか?」

何ですと!

「どっどうしてかな?」

「さっきネギが魔法使ったの見ちゃて、その時にネギが衛宮さんたちからすごい魔力を感じるって言っていたから」

おいおいネギ君や初日からばれてどうするんだ。
ちろっとネギ君を見るとすまなそうな顔して言った。

「ごめんなさい。宮崎さんが階段から落ちそうになったのを見て、つい魔法を使ったら明日菜さんに見られてしまいました」

「そっか。それじゃあしょうがないな。
 神楽坂に言っておくけどこの事は内密にな。大変なことになるから」

「分かりました。
 でも、もう大変なことになってます!まったくパンツを消され・・・・・・」

「まぁ分かってくれてるならそれでいいよ。でもパン」

その時、地獄からの声で遠坂が言った。

「士郎」

「はい!」

「忘れてあげなさい」

「イエッサァー!」

いろいろ話している時に神楽坂から歓迎会があるからといわれ、教室で2-Aのみんなから歓迎会をしてもらった。


帰り道
 
疲れてしまったのか寝てしまったネギ君をおんぶした俺と遠坂は、家に向かっていた。

「ふふっ。そうしてると士郎、お父さんみたいね」

「何だよいまさら。お前が自分で言ってただろ。父親役と母親役が必要だって」

「あっ!あれは・・・・・・」

学園長室でのことを思い出して顔を赤くする遠坂。結構、問題発言していたことを思い出したみたいだ。

「しかし、そうだな。いつか俺たちもこんな子供が出来たらいいな」

ネギ君の顔を見ながら言う。

「しっ士郎! そっそれって。 っ!」

その時だった。俺たちに向かって強力な殺気を放ってくるやつが現れたのは。

「誰だ!」

「ふふふ。お前たちが爺が雇った護衛者か。少しお手合わせ願おう」

振り向くと街灯の上にマントをまとった人影がいた。





はい、第4話でした。どうでしたか?
原作のネギまではネギは明日菜と一緒に住んでいましたが、この小説では士郎たちと一緒に住むことになりました。

[ 2013年10月16日 14:47 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)

赤い丘より新たな世界へ 03

「なぁ、遠坂」

「何よ・・・・・・」

「ここって学園なのか?」

「そうなんじゃない」

「いや、ありえないだろ・・・・・・」

俺たちの目の前には、西洋風の景色が広がっていた。






赤い丘より新たな世界へ3






周りを見渡してみると普通に登校している生徒たちが・・・・・・
いや訂正しよう。普通じゃない!ローラーブレイド・スケボー・路面電車・ありとあらゆるところに、
人、人、人、数えきらないぐらいの人であふれかえっている。

「これ全部生徒か?」

とつぶやくと抱いている遠坂がどうでもいいみたいに言う。

「そう見たいねぇ」

「?」

なにやら遠坂はさっきの手紙を見てから、ずっと何か考えているようだった。
考える邪魔をすると怒るので、俺は俺で軽く偵察してみる。
周りの生徒たちは一目散に学校と思われる建物の方に駆けて行っている。
なるほどあちらが学校になるのか。

学園長室

「学園長先生! 一体どーゆーことですか!? こんなガキが先生なんて」

「よくきたの~ネギ君。修行のために日本で学校の先生か、こりゃまた大変な課題だの~」

「はっはい。よろしくお願いします」

怒鳴る明日菜をスルーしながら会話を進めるネギと学園長。

「しかし、まずは教育実習とゆーことになるのぅ。今日から3月まで精一杯やりなさい。
 それと、この修行がダメだったら故郷に帰らねばならん。二度とチャンスはないが、その覚悟はあるのじゃな?」

「は はいっ。やります! やらせてくださいっ」

「うむ。よろしい。ではがんばりなさい」

「はいっ!」

ネギと学園長の話が終わったのを見計らって明日菜が

「納得できません学園長!」

また吼えた。

「まぁまぁ、それよりアスナちゃん、このか。このままでは始業のベルに遅れるぞ。
 先に教室に行ってなさい」

プンスカ怒る明日菜に諭すように学園長が言うと、さすがに明日菜もそれ以上何も言えない。
しぶしぶと言う感じで木乃香と一緒に学園長室を出て行く。

「ネギ君は話があるから残りたまえ」

「あっ、はい」

学園長室から明日菜と木乃香が出て行くのを見届けると

「まぁ、ネギ君。そこに座りなさい。もうすぐ紹介したい人が来るから」

「えっ? どなたですか?」

「君の味方じゃよ」

数分前

「さてどうする?」

いつまでもここにいてもしょうがないので、遠坂にたずねる。

「そうね。とりあえずは、あっちが学校みたいだから行って見ましょう。
 学園長だから学校にいるはずよ。判らなければ誰かに聞けばいいしね」

「なるほど。了解した」

そう言って俺は学園に足を向けた。


校舎の近くまで行くとひげ面の人が学園長室まで案内してくれるそうだ。途中で自己紹介をした。

「学園長から話は聞いてるよ。学園長の所まで案内するから」

「あっはい!ありがとうございます」

「僕の名前は、高畑・T・タカミチだ。よろしく」

「衛宮士郎です。よろしくお願いします。で、こっちが」

「遠坂凛です。よろしくお願いします」

「よろしく」

俺と高畑さんが握手を交わす。

「遠坂さんはどうかしたのかな?怪我でもしているなら保健室に連れて行くけど?」

「いっいえ、これは・・・・・・その」

そういえば、森を抜けてからずっと抱きっぱなしだった。それもお姫様抱っこ。
恥ずかしくて顔を赤くする俺たち。
何かを言おうとする俺より先に、遠坂が話す。

「いえ。あの、こちらの手違いで服がなくなってしまったので、何か着る物を貸していただけませんか?」

「生徒の制服でよければあるが」

訝しがる高畑さん。

「それでかまいません」

遠坂も恥ずかしかったのだろう。制服でも何でもいいから服を着たかったようだ。
そんな遠坂を見て高畑さんは

「ちょっと待っててくれ」

と言うと駆けて行き、少し先のほうのドアを開けて

「しずな先生!学制服ありますか?お借りしたいのですが・・・・・・」

なにやら話しているみたいだ。
すると制服を一着持って戻ってきた。

「そこの教員用更衣室で着替えてくるといい」

少し先の扉を指す。

「すみません。どうもありがとうございます」

お礼を言い、ずり下がる服を何とかしながら遠坂は更衣室の中に入っていった。


コンコン

「入りなさい」

「「失礼します」」

麻帆良学園の制服を着た遠坂といつまでも赤い聖骸布とボディーアーマーを着ているわけには行かないので脱ぎ、黒い長袖のシャツと黒いズボンになった俺は学園長室に入っていった。
学園長室には小学生ぐらいの男の子と妖怪みたいな頭の老人がいた。

「ふぉふぉふぉ。よくきたな、わしの名前は近衛近右衛門じゃ。
 衛宮士郎君・遠坂凛くん。ゼルレッチからは聞いておる。
 あなた方を我々は向かい入れよう」

その言葉に遠坂が、

「ありがとうございます学園長。すこしお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか」

ちらっと遠坂は男の子の方を見る。

「あぁ、かまわんよ。その子はこちら側じゃ」

「そうですか。ではお聞きします。大師父・・いえ宝石翁は私たちをあちら側からこちら側へ送ったのですか?」

「そうじゃろな。あやつからは、「警備員を送るから面倒を見てくれ。」と頼まれたのでな。
 あまり詳しいことは聞いておらぬが」

さっぱり二人の会話についていけない俺は、遠坂にたずねた。

「どう言う意味だ?」

「さっきからおかしいと思ってたのよ。たぶん、ここは私たちの世界じ ゃなくて平行世界よ」

「なっ!それじゃあ俺たちは」

「ええ。宝石翁によってこちらに送られたみたいね。それにあれだけの修復不可能な傷が無いこと、それにわたしの体が縮んだことから考えると、たぶん私たち向こうで人形に魂を移されたと考えるべきでしょうね」

「ということは俺たち」

「この体は人形よ。大方、封印指定の魔術師の人形を使ったんでしょ。ここまで精巧だと蒼崎だと思うけど。心配しなくていいわ。人間と変わりはないから」

「なるほど。でもなんで遠坂は小さくなったんだ?」

「そこまでは分からないわよ。私は専門じゃないんだから!」

ひそひそと言い合う俺たちに学園長が言った。

「事情は分からんが君たちには、そうじゃの・・・・君たちには、そこにいるネギ先生の
 補佐をして貰おうかの」

「「ええっ!」」

突然の話に驚く遠坂と俺

「働かないもの食うべからずじゃ。お金に住居が必要じゃろ。
それと補佐とは別に、この学園の警備員もしてもらうからよろしくの」

この世界ではコネも何もない遠坂と俺はただ頷くしかなかった。
すると黙って話を聞いていた男の子が立ち上がり、自己紹介をした。

「よっよろしくお願いします。ネギ・スプリングフィールドです」

「あっよろしく衛宮士郎です」

「遠坂凛よ」

握手を交わす・・・・・ん?

「あの学園長この子が先生ですか?」

「そうじゃよ。大丈夫じゃ大学卒業レベルの語学力はあるからの」

「「はぁ・・・・・・」」

間抜けな返事をする俺と遠坂。

「とりあえず、衛宮君は副担任として、遠坂さんは生徒としてネギ君の補佐を頼むぞ」

「ちょっと待ってください学園長!遠坂はいいとして、俺は教員免許持ってませんよ?それに、この子は労働基準法違反じゃないんですか?」

「ふぉふぉふぉ。衛宮君、そんなのばれなきゃいいんじゃよ。ばれなきゃ」

((いいのかよっ!))

心の中で突っ込む遠坂と俺。


キーンコーンカーンコーン

「おおっもうこんな時間じゃ!いまはHRが始まってしまう。とりあえず後のことは放課後にまた来なさい。そのときに今後のことを話そう」

微妙な表情の俺たちに学園長が言った。

「えっ今日からですか!準備とかは」

「大丈夫じゃよ。ネギ君もがんばりなさい」

「はいっ!がんばります」

結局勝手に話を進められ、生徒と副担任になった俺たちは教室に向かった。

「ねぇ、士郎」

「何だよ」

「なんだか楽しくなりそうね」

「・・・・・・そうだな。俺もそんな感じがする」

昔とは違う新しい空気を感じながら、俺と遠坂とネギ君は俺たちの教室2-Aへ向かった。


2-A

教室に入るなりいきなりネギ君が魔術使ったり、トラップに引っかかったりしたが
一応順調な滑り出しだった。そして教壇の前に三人で並んで自己紹介をした。

「担任のネギ・スプリングフィールドです」

「副担任の衛宮士郎です」

「転校生の遠坂凛です」

黙り込む生徒たち。

「「「「・・・・・・」」」」

そして、

「「「「きゃーーーかわいいーーーー!(かっこいいーーーー! きれいーーーーー!)」」」」

悲鳴が上がる。
自己紹介の後、そのまま質問タイムに移った。


質問タイム

ネギ君の場合

「「何歳なの~~!!」」

「えっえと10歳で・・・・・・」

「「どっから来たの~~!!」」

「ウェ、ウェールズの山奥から」

「「頭いいの~~!!」」

「一応大学卒業程度の語学力は」

「「も~かわいい~!」

もみくちゃになるネギ


衛宮士郎の場合

「「いくつですか~~?」」

「今年で26歳だよ」

「「彼女はいますか~~?」」

「えっえ~とそれは・・・・・・ごにょごにょ」

「「特技は~~?」」

「家事全般かな」

生徒たちのパワーに焦る士郎。


遠坂凛の場合

「肌きれいよね~遠坂さん。秘訣は何?」

「恋をすることかしら?とびっきりの恋をね」

「「きゃーーーーーーー!」」

遠坂の大人な発言に、女の子たちから悲鳴があがる。

「じゃあさ遠坂さんは、彼氏はいるの?」

「私の隣にいるわよ」

「「「「え~~~~~~っ!!!」」」」

遠坂の突然な爆弾宣言に、かなり焦る士郎。


「おっおい、遠坂!」

「あら何?事実でしょう。衛宮君は何か文句あるの?」

「いや文句はないけど」


ひそひそ

「衛宮先生てロリコン?」

「そうだったんだ」

「顔はいいのに~なんかショック~」


ああっ俺の評価がロリペド野郎になっていく。


「ちなみにどこまで行きましたか~~?」

「ふふっひ・み・つ!」

「おおっ、大人だ。大人がいるぞ」

きゃーきゃー騒ぐ乙女たち。

その時、

「えっえ衛宮先生!」

ネギ君が俺のズボンを掴み、俺の顔を見上げて力強く言った。

「生徒に手を出したらいけませんよ!」

ぐさぁ!なぜか俺の胸に響くその言葉。くっ本当は遠坂も26なのになんだろこの敗北感と寂寥感、あれ涙が・・・・・・。
そんなこんながあったが、これが遠坂と俺の麻帆良学園での生活の始まりだった。






はい第三話でした。皆さんどうでしたか?
なんか急激に話が進んでるような、と言うか場面から場面への移り変わりがおかしいような感じがします。自分で言うのは変ですけどね。その辺はご勘弁を。

この小説は、皆様からのご意見・ご感想で成り立っています。

[ 2013年10月16日 14:44 ] カテゴリ:赤い丘より新たな世界へ | TB(0) | CM(0)
プロフィール

地球外生命体タモちゃん

Author:地球外生命体タモちゃん
惑星タモタモから来た調査員

趣味 読書、昼寝、料理
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